雫と誠
いつものように、雫と誠は誠の部屋にいた。もはや、雫は自分の部屋のようにくつろいでいる。誠の部屋の漫画を出して、ベッドの上に寝転がって読んでいた。
くるっと身体を捻って、誠のいる方に向いた。
「誠!」
「ん?」
誠も別の漫画を読んでいて、視線は漫画に向けられたままだ。
「ま〜こ〜と〜」
「ふはっ、なにっ?」
「これこれ!」
雫は、手招きをしてページを誠に見せた。手にしていた漫画をテーブルに置いて、ベッドに登ってきた。
お腹を下にして漫画に顔を戻した雫の、背後からそのページを覗き込んだ。
「あ〜。今、ここを読んでんの?」
雫を背後から抱きしめるようにして、手を伸ばしてページを誠はめくった。耳元で聞こえてくる誠の声に、雫はドキドキとさせる。
自分が手招きをしておいてだが、この状況に爆発寸前になっていた。
「こっちのも……って、雫?」
雫は、誠のベッドに顔をつけて表情を隠す。それを誠は、不思議そうに見つめた。
背中で誠の温度を感じ、ベッドから誠の香りがする。
「〜〜っ!」
顔をあげて、雫は大きく息を吸った。
「な、なにしてるの?」
「近いのっ」
『緊張するから、離れて』という言葉は、スッと飲み込んだ。話を変えてみようと、雫は思考を巡らせる。
そういえばと、巡らせた思考の先にあの話題を見つけた。声のボリュームを少しあげてみた。
「あ、あのね!」
「ん?」
少し呼吸をおく。スウッと吸って肺に酸素を入れ込んで、芯の通った声を出す。
「今度2人で、どこかにいかない?」
「おぉ」
絶対に、雫の心は届いていないであろう返事だ。誠は、ただ出かけると捉えてるに違いない。
雫は、背後にある誠の表情を見なくとも分かっていた。
「違う……」
「何が違うの?」
「2人ってことは……その、デートってことで……」
意を決して口を開いたはずなのに、モゴモゴと最後の言葉を濁しながらになってしまった。耳まで赤くなり、恥ずかしさでいっぱいになる。
誠は、返事もせず無言を貫く。それが、嫌だと拒否をされているように感じさせた。
「嫌なら……」
「嫌じゃない!」
背後から抱きしめられて、雫の言葉に被せてきた。雫の背中に、おでこをぐりぐりと当てている。
「はぁ〜……好き」
くぐもった声で、誠はため息混じりにつぶやいた。静かな部屋に、その誠の声が聞こえてくる。
「……え? え??」
(えぇ? 好き……スキ? 私の言って欲しい言葉を念じすぎて、幻聴かな?)
雫は、固まりそうになる頭をぐるぐると回転させてみた。しかし、なんと言ったらいいかわからない。
「……あっ」
雫のその反応に、ようやく自分の口に出た言葉を理解したようだ。そして、くっついた身体を離してベッドの上で正座をした。
それに合わせて、頬を染めたまま雫も目の前で正座をする。視線の雨に打たれながら、雫は目線を落とす。
「雫」
「……な、なに?」
「ずっと隠しておこうかと思ったけど、やっぱり無理。雫のことが好き。そのデートは……その。彼女として一緒に……行けたら嬉しい」
雫の心臓は破裂寸前まで、バクバクとさせる。ぎゅと目を瞑って、恥ずかしさを飛ばすように大きな声をだす。
「わ! ……ったしも、誠のことがっ……すきぃ!」
そして、おそるおそる目を開けて一瞬ちらっと誠を見た。ショートヘアから覗く、栗色の瞳が柔らかい雰囲気を醸し出す。
「俺も」
そうして腕を引っ張られて、誠の腕に抱かれる。ぎゅっと抱きしめられた。
「彼女になってください」
「はいっ」




