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Wデートってなにするの?

 胡桃は、雫の文面を見て自分の頭浮かんだ言葉を打ち込んだ。指先が打ち込む言葉が、上手く伝わるようにと祈って。


「……送信!」

「ん? えっ、めっちゃ良い」


 

 その雫の反応を見て、胡桃はふふんっと上機嫌になる。返事については、心臓が暴れ出しそうなほどドキドキをしている。それに、言いたいことをまとめただけ。ただそれだけ。


 ――私の友達が、(はる)くんのお友達と幼馴染なの。良かったら、一緒にお茶でもどうかなって!



 ****



 片付けをしつつ、スマホが鳴るのをソワソワとした気分で待つ。それは、雫も同様なようだ。

 ブーッと震えるたび、肩を振るわせてすぐに画面をタップして確認する。


 これを毎回繰り返しつつも、ちゃんと手は片付けを進めていく。そして、何度目かの通知音で待ちに待った返事がきたようだ。



「胡桃!」



 明るい顔と声で雫は、胡桃のことを呼んだ。少し離れたところにいた胡桃を、ものすごいスピードで手招きする。

 その顔と声で、なんとなくを察する。胡桃は、パタパタと雫の方に駆け寄った。



「返事、なんて?」

「いいよって」



 ほわほわと赤くした頬をして、雫は自分のスマホ画面を見つめる。胡桃は、その雫の顔をみて微笑んだ。その小さな笑い声に、雫は少しムッとさせる。



「幸せだぁ」

「えっ? 胡桃が?」

「うん。雫が幸せなのは、私も幸せ」


 雫は、そんな胡桃のことをギュッと抱きしめた。そして、嬉しそうな声を上げる。


「〜〜! 私もだよ!」


 そんなことをしてるうちに、胡桃のスマホが音を鳴らす。ふたりは、その音にパッと離れて胡桃のスマホ画面を覗く。



「見せてっ」



 ドキドキとした胡桃よりも、雫の方が声が弾んで楽しそうだ。震える指で、パスコードを解除して開く。

 


 ――もちろん! 今日? どこにしよう?

 


 短文が並んでいて、男の子のメッセージらしい。胡桃は、スマホを持ったまま固まっている。

 雫は、胡桃の肩をトントンと叩いた。その衝撃に、ハッとさせて瞬きをした。



「今日……?」

「善は急げだよ!」


 ゆっくりとした動きで、胡桃の顔が雫に向いた。そして口をぱくぱくと動かして声にならない言葉を話す。


「ん?」

「今日??」



 徐々に、白い胡桃の頬が染まっていく。先ほどまで現実味がなかったものが、一気に手の中に落ちたようだ。何度かそのやり取りをして、胡桃が再度スマホに視線を落とす。



「ど、どうしよう? ……心の準備がぁ」

 


 胡桃はスマホを胸に当てて、目を瞑って上を向いた。上を向いたまま、赤い顔を緩く振った。

 そして、大きく肩で息を吸った。


 

「はっ! 善は急げ、だね!」

「うんうん!」



 そのひと動作で、切り替えたようだ。胡桃は、文字打ちをし始める。向こうは休憩時間なようで、胡桃と悠とのやりとりが続く。



 ――私たちも、今日だいじょうぶ! 

 ――了解! じゃあ、迎えに行くね!



 ぽんぽんとやりとりをして、迎えにきてもらう事になった。もちろん、そのやり取りを雫も見守っていた。

 どこか雫は、他人事のようにしている。


「良かったね!」

「いや、雫もだよ?」



 胡桃は、そんな雫に釘を刺した。雫は、コクコクと頷いた。

 


 ****



 放課後、さっと胡桃と雫はメイク直しをしていた。優しい色味のリップを塗り直し、パウダーをふる。

 ティッシュで、油分をオフした。

 ばっちりとはいかなくとも、今できる最善策だ。

 


「よし!」

 


 ドキドキとしながら、胡桃と雫は外に出た。すうっと大きく深呼吸をとって、ふたりを待つ。ふたりから、少しピリッとした空気感を感じる。



「……胡桃」

「うん、なぁに」


 雫は隣に並ぶ胡桃にしか聞こえない声で、こそっと伝える。こちらに向かって、手を振ってくる(はる)と誠の姿が見えた。

 雫がごくりと喉を鳴らす。


「……緊張がっ」

「それは、私もっ」



 そう言いつつ、雫も胡桃も柔らかな笑みを浮かべている。そして、ふわふわと手を振り返した。

 誠の明るい声が聞こえてきた。



「ごめんね、待った?」

「ううん! あのいつものところにする?」

「あ、それがいいね」


 誠と雫は、こそあど言葉だけで伝わっているようだ。2人で意気投合をして、歩き始めてしまう。

 私の目の前に悠が、立った。ふわりと香るフローラル系のかおりを感じる。



「連絡、ありがとう。……ふたり行っちゃうから、行こうか」

「うん! 放課後が、楽しみだった!」


 



 

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