女勇者の幸せ
ヒ…リ
…ヨリ…
夢の中で誰かがヒヨリを呼んでいる
誰だろうか…
「ヒヨリ!朝だよ!おはよー!」
「っつ…眩しい」
「朝だもん!」
カーテンを開けながらハナがそう言い放った。
ヒヨリはベットから起き出し、じっとハナを見る
なぜか無性に苦しい気持ちになった
「どうしたの?」
そんなヒヨリの様子に気がつきハナはヒヨリの元によっていく。
「いや…変な夢でも見たのだろう…おはようハナ」
「…元気ないヒヨリ見てると私悲しいよ…大丈夫?」
そういうとハナはヒヨリの頭をらゆっくりと撫でる
「んっ…大丈夫…元気でた」
手のひらの感触が気持ちよくてハナに微笑む
「ふふふ、ヒヨリは甘えただ!」
そんなヒヨリを見てハナは笑った
ヒヨリとハナは家の庭に花の種を植えていく
「種を蒔いて蒔いて〜♪水をたーくさん!そしたら綺麗なお花のできあがり♪」
ご機嫌に歌を歌うハナ
「知らない歌だな」
「今作った!」
そんなたわいのない話をして過ごす
ヒヨリ…ヒヨリ…
夢で誰かが呼んでいる
「みて!ヒヨリ!新芽が出てきたよ!」
「本当だ…」
「何色の花が咲くかな?」
楽しそうにしてるハナの横顔を見つめた
「あんたたち暇ならちょっと宿の手伝いにこないかい?おやつにお手製のパンケーキ作るからさ」
宿屋の女将さんが2人を誘う
「パンケーキ!!」
ハナが目を輝かせて女将さんのもとにかう
「全くハナは…」
呆れながら一緒に向かうヒヨリ
ヒヨリ……うか…
ヒヨリ………
あいつの声が私を呼んでいる
「ハナが咲いたよ!記念すべき一輪め!」
「やったな」
「うん!」
キラキラとしたハナの瞳がヒヨリを見つめてる。
「ヒヨリよ!たまには父さん孝行をしてくれ」
「…仕事サボってきたな?秘書さんに連絡するからな」
町長である父が半泣きで家にやってくるのを呆れながら迎えるヒヨリ
「まぁまぁ、町長さんこれどうぞ」
町長にお茶を出すハナ
「ハナちゃん優しいなぁ…」
嬉しそうにお茶を飲む町長
ヒヨリ…どうか
ヒヨリ…目を…
あいつ…イツキが私を呼んでいる
「一面花畑になったね!素敵!」
「ハナ…」
「んー?」
一面に咲く花畑の中でハナがこちらを振り向く
色とりどりの花畑その中で大好きなハナがヒヨリだけを見てる
「私は戻らなきゃ…」
そう言って花々が咲き乱れる庭から後ずさる
美しい花畑と懐かしい故郷そして、大好きなハナを置いて…
ここが…現実ではないのだと薄々気がついていた
だって現実は…
「どこ行くの…?私を嫌になったの…?」
寂しげな声でハナがいう
その声に立ち止まる
「そんなわけない!私は!」
ハナを真っ直ぐ見つめた
桃色のその目がハナそのものだからこそ
「…世界で1番ハナが好き、愛していたんだ…」
ずっと伝えたかった気持ちを言葉にした。
そう言うと少し目を丸くしてハナが私をみる。
そしてすぐに柔らかく笑うとヒヨリに向かい
「私も!私もヒヨリが世界で1番好きだよー!」
そういって飛びつくようにヒヨリに抱きついてきた。
甘い優しい匂いがヒヨリを包む
あぁ幸せだな…
いつまででもここにいたい…
だけど…
「ヒヨリ…?」
ヒヨリはハナの肩を押して体を離す
そして、腰の剣をすぐに抜き
ハナに向かって剣を向け切った
「ぎゃぁああ」
断末魔を響かせハナであった何かは黒い霧になり消え失せる
そして世界が真っ暗になっていった…