女勇者と共同戦線
とあるまちのギルドに寄った時
ギルドの受付で大量発生した炎狐の討伐依頼をお願いされた。
ランクA以上のギルド所属の冒険者はみんな声をかけられるとのこと。
「でも炎狐は白魔道士の補佐がないと討伐大変では?」
イツキは受付の人にそう聞いた。
炎狐は炎を半径3mに広がらせる
その炎は人のみを焼く悪魔の炎で水で消すことはできない。
唯一白魔道士の清き水魔法のみがこの炎を打ち消すことができるのだ。
「そうです、ですので数名のパーティで白魔道士を共有し討伐を進める手筈です。
お二人が参加される場合白魔道士のいるパーティと共同戦線できるようにこちらで調整いたします」
「なるほど…」
そういうとイツキはヒヨリの方を向く
どうする?と目で伝えられる。
炎狐は繁殖力が高い魔物なのにそれなりに強いため相当の手だれでないと対処ができない。
だけどヒヨリたち勇者パーティは何度か炎狐の討伐を行い慣れているのもあった。
だけどそれには白魔道士の実力が必須である。
「…報酬もいいし、受けても構わないが…依頼をする前に一度他の依頼でその白魔道士がいるパーティと共戦して確認したいのだがそれでは遅いか?」
「大丈夫です。白魔道士のいるパーティに連絡してみます」
その数日後、受付は白魔道士がいるパーティを紹介してくれた。
リーダーである男戦士と女性魔法使い2人、そして男の白魔道士
お互い自己紹介をし、魔物のいる森にある貴重な薬草をとる依頼を一緒に受けることにした。
リーダーの男戦士カケルとヒヨリは話し合い
戦闘スタイルの違いがあると言うことで
戦闘中はお互いパーティごとで進めることになった。
今回一緒に行動するカケルたちは
敵の隙をつき確実に仕留めるスタイル
白魔道士が支援魔法を行い戦士を強化し、もう1人の魔法使いは広範囲魔法で錯乱、戦士またはもう1人の魔法使いが隙を見て仕留める
一方ヒヨリとイツキは特攻型、速攻強力な攻撃を仕掛けるスタイルであった。
これはヒヨリの勇者の加護スキルのなせる技である。
そのスキルは致命傷を受けなければ痛みを感じなくなるもので、魔法使いの支援魔法と合わさるとヒヨリは恐れず敵に突っ込んでいくことができるのだ。
だけどこの形になったのはあくまでイツキと2人で旅をするようになってからで
その前は違った。
ユウマとヒヨリが連携し先頭で戦いながら、ハナが支援魔法を行い、イツキはハナとともに支援魔法を行いながら強力な魔法を放ち敵を倒す
方法で長い間魔物の相手ができるような長期戦闘法を取っていた。
カケルたちとヒヨリたちはお互いの戦闘スタイルで邪魔な魔物を刈りながら森の奥へ向かう。
「ヒヨリさん」
何度かの戦闘をし、一息つこうかとなった時
白魔道士のサクがヒヨリに話しかけてきた。
黒い髪に男性ではあるがクリクリとした桃色の瞳を持ち幼い顔立ちは可愛らしい印象がある。
「怪我治療しますよ」
「….魔力は大丈夫か?」
いつもなら大丈夫という軽症ではあったが、炎狐討伐では白魔道士のサクの助けが必要でもあったし、実力や対応が気になりそう聞いた。
「そうですね…まだ2割消費といったところですかね」
サクは目を瞑り自分の魔力状況を確認し、答えた。
「そうか、なら頼む」
「はい!では…癒しを…」
ヒヨリに両手をむけてサクは魔法をかける。
ヒヨリは光に一瞬包まれたかと思うと小さな擦り傷や切り傷が塞がれた。
「どうですか?」
「大丈夫だ、ありがとう」
一瞬での回復、魔力もまだ2割程度ということもあり、見た目に反して相当実力者なのだろうと感じた。
「いえいえ」
サクはにっこりと笑うと今度はイツキの方に向かっていった。
サクは自分たちのパーティにも声をかけてその輪に自然とヒヨリやイツキが入れるようにし、
全体のコミニケーションをあげる。
だけど何か方針や行動についてはリーダーであるカケルにゆだね、ヒヨリたちとのすり合わせにに徹していた。
可愛らしい見た目に弟のようなポジションでメンバーから好かれてはいるが外から見るとサクの行動は侮れないと感じた。
その後無事薬草を収穫し、何の問題もなく依頼を達成度した。
相性も悪くわなかったので炎狐討伐には参加することをヒヨリとリーダーのカケルは受付に伝え手続きを行なった。
「カケル!」
ヒヨリとカケルがギルドから出ると
サクがギルドのすぐ外のベンチにいてこちらに手を振っていた。
そこにいたのはイツキとサクだけ
「ナツとユキは?」
「2人は汗かいたからって先に帰った!」
同じパーティの魔法使い2人はどうやら先に帰ったらしい。
「そうか……ヒヨリ、イツキ良ければこの後ご飯とか…どうだ?」
カケルはヒヨリたちを誘う。
「.いいね!」
サクも賛成する。
「私は…」「俺たちこの後寄るところあるので」
一緒に依頼するとは言っても、そこまで人と関わることはいやだったので断りの言葉を口にしようと思ったら被せるようにイツキがいった。
「…あぁそれなら仕方がないな、サク2人で行こう」
「残念です。また機会あれば!」
「ではまた!」
イツキはにっこりと微笑みながらヒヨリの腕を引いてカケルとサクとは逆の道をあるきはじめた。
「…イツキ?」
「あっ!ごめん!」
2人が見えなくなってからヒヨリが声をかけるとイツキは慌てて腕を離した。
「別に構わない、それにありがとうな」
「えっ?」
「ご飯の誘い、そこまで慣れていない人間と共にするのは耐えられないからな」
普通に断るつもりではいたが、イツキが言い訳を作ってくれたおかげで揉めることなくあの場から去ることができたのだ感謝しかない。
「そっ…そうなの?」
「…?イツキはわかってて先にいってくれたのではないのか?」
「……そっそうだよ!ヒヨリとは長い間いるからね、人とご飯いくのはあまり好まないでしょう?俺が間に入ることで今後の討伐パーティで気まずくならないようにできるからね。」
イツキは一瞬固まったがすぐさまいつも通りヘラヘラと笑いながら言う
「あぁ、助かったよ、私は人と会話するときついと言われがちだからな」
そんな会話をしながらヒヨリとイツキは真っ直ぐ宿に戻って行った。