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女勇者の憂鬱




軽快な音楽が流れる会場で白魔道士のハナと戦士ユウマが楽しげに会場の中心で手を取り合い踊ってた。


ハナはピンク色の華やかなドレス姿をしており妖精かと思うほど可愛らしいかった。

いつもは二つに結んでいる黒髪を解いておりステップを踏むたびにその豊かな髪をなびいていた。


そんなハナを愛おしそう見つめながらユウマはハナに合わせて踊っている

服装は凛々しい紺色のタキシード姿でユウマによく似合っていた。


「はぁ、」

勇者ヒヨリはそんな2人をみて一つため息をつくと飲み物を飲んだ


ヒヨリは女勇者である。

いやだったが正しいだろう。


魔王討伐を成功させたことでその役目も終わり

このパーティもそのお祝い。


だがそんなヒヨリの周りには誰もいなかった。


銀色の長い髪に薄青色の瞳それと同じ色のドレス姿、顔、スタイル全てが整っており、その姿はまさに絶世の美女

少し離れた席でちらほらヒヨリをみて頬を染める男性やうっとりとこちらをみる女性がいるほどだ。


最初はそんなヒヨリにも話しかけていた人は何人かいたが辛辣で冷たい目線を向けるため、次第に人が寄ってこなくなった。

今では遠目から目の保養としてみられるている。


「はやく、宿に戻りたいなぁ…」

人混みも人からの目線も鬱陶しくて嫌な気分になるがその場にとどまりハナとユウマのダンスをヒヨリは見続ける。


その時突然会場の電気が消えた。

今日は剣を装備していないのにいつもの癖で腰に手をかざし臨戦体制になるヒヨリ


だが会場は全ての電気が消えたわけではなかった。

一箇所だけスポットライトが照らされている…

これは…演出だ。

ほとんどの人が楽しげな、または興奮したようにそのライト先を見ていたがヒヨリはそのライトの下にいる2人を見て顔を強張らせた。


ライトの下には先ほどまで楽しそうに踊っていたハナとユウマがいた。

いきなり真っ暗になった会場に戸惑うハナ

そんなハナにユウマはにっこりと微笑むとその場でひざまついた

「初めて会った時から、ハナが好きでした。僕と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」

シーンと静まり返った会場にユウマの声が響く


ヒヨリはその言葉を聞き頭が真っ白になりその場で硬直した。


会場の中心ではその言葉にハナは口元に手をあて顔を真っ赤にさせる。

そして小さく頷いた


「やった!あぁハナ!!」

「ひゃあっ!」

ユウマは満面の笑みを浮かべ立ち上がるとハナを抱きしめる。


「っつ…!」

「おぉ!!」

会場中が盛り上がる

魔王を倒した勇者パーティに最高のカップルが誕生したのだ。


歓声が響く会場でヒヨリは目の奥から込み上げてくるものを感じて慌ててその場から離れた。

落ち着ける場所、人がいない場所を探し歩き続け、会場から少し離れたバルコニーを見つけた。


バルコニーの手すりに手をつき心を落ち着かせようとするが落ち着けない。

体が震え、とうとう涙まで流れた。

嬉しそうに笑うハナ、真っ赤な顔で頷くハナ

それを思い出し涙をどうすることもできなかった。

「ハナ…」


ヒヨリは

ハナが好きである。


幼馴染で常に隣にいることが多く、それが当たり前

笑顔が可愛いくて、正義感があり、だれにでも優しく、素直でハナ自身が傷つくというのにいろんなことを真正面から受け止めてくれるほどの包容力もある、ヒヨリのことをいつも褒めてくれ、自分自身を真っ直ぐ見つめてくれる瞳

全部が愛おしいのだ。


気がついたら誰にも渡したくなくなっていっていつだってハナを目で追っていた。

それが特別な思いであることは何年も前から気がついていた。


ユウマと出会ってからずっと不安感はあった。

いままで出会った男性の中で最も顔立ちが整っているのもあるし、剣術はヒヨリより上で旅をしながら稽古をつけてくれていた師匠でもある

討伐作戦などで状況が悪くなれば瞬時に応用もできるので頭の回転もはやいだろう。

性格は少し頑固でユウマが納得しないことはやらないところがあるが正義感があり、基本的におおらかである。


初めて2人が出会った時、

多分お互い一目惚れだったのではないかと思う。

だからあの時、一緒に旅をしなければもしかしたら2人が結ばれることは無かったのかも知れない。


ハナと2人で旅していた時と変わらず、こんなに苦しい思いをしなかったのではないか


だけど

過去に戻ってユウマたちとパーティを組まないという選択は多分しないだろう。

ユウマの戦士としての能力はずば抜けており、それを学びたいとヒヨリは思っていたのだから

そう、あの時ユウマたちと出会わなければ魔王討伐は不可能だった。


だから、だけど…


混乱したまま泣いていると

「…ヒヨリ」

突然後ろからヒヨリを呼ぶ声が聞こえた。






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