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拝啓、高木様  作者: dede
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イントロ・クイズ


これがビィ・ミヨリアという女か。


「初めまして、とまずは言っておこうか?歓迎するよ」

「バイバイの間違いだろ?」

私の屋敷に訪れた彼女は挨拶もそこそこに、私に黒い靄を差し向けてきた。ふむ、遠慮がない。

いいね、無礼講。親しい仲のようで悪い気はしないな。

「大胆だ」

「……お前も効かないのか?」

「ハハ、待望の私がすぐに討たれては落胆だったろ?」

犠牲は払ったが、無事開発できたこの漆黒の衣は、彼女の謎の吸収を阻害する。もっとも、原因は結局解明できなかったが。

「私は打ち上げがしたいだけなんだ、すぐに片付いてくれないか?そっちの方が助かる」

彼女は冷淡な表情で言った。

「フフ、打ち上げは公演の後と決まっている。もう少し私に時間を割いてくれても罰は当たらんだろ?」

「罰当たりはお前だろ、ウェイブ?」

黒い靄が効かないと判断すると、すぐにビィは私にウクレレで殴りかかっていた。

それを私は手持ちの槍で受け止める。

「罪深さでは大差なかろうに?」

「っ!お前が大人しくしてれば私はもっと殺めずに済んだんだ!!」

槍とウクレレで押し合っている中、彼女が吠えた。

いいね、その表情。ゾクゾクするよ?

っと、残念だが彼女との距離を取る。私がいた空間をレイピアが通り過ぎた。

そのレイピアを持った男は、ビィを私から隠すように間に割って入った。

「ビィ、会話をするな。相手のペースに巻き込まれているぞ?」

「……ムリだ、私はこの男に山ほど言いたいことがあるんだ」

「それで負けては本末転倒だろう?」

ビィはレイピアの彼をジロリと睨む。

「ケイン、お前はティーリスか?」

「おい、ビィ!『お前は俺のかーちゃんか』みたいな感じで俺の名前を使うの、マジ止めろ!」

少し距離を置いた場所で、ティーリスと呼ばれた男と、他2名がうちのエリート兵達と攻防を繰り広げていた。

彼らエリート兵も猛者揃いだ。研鑽を重ね続けてきた。更にあの化け物から生まれたモンスターの体組織を組み込んでいる。

あの靄は効かないし、身体能力も向上している。彼らでも手こずると思っていたが、そこを抜けてきたか。

見ると、彼の足元には血が滴っている。涼しい顔をしているが少々無理はしてきたらしい。

いいね、若いというのは。こちらが気恥ずかしくなってくるよ?

しかし、もう少し私は彼女と二人きりで遊びたかったんだ。君は……邪魔だ。

私は両の手に装着しているグローブ型の魔道具に魔力を込める。

「お姉さんと話しているんだ、邪魔はしないで欲しいな弟君?」

私は左手を彼にかざすと魔力を解放する。

「!ケインっ!」

私の左手から魔力を含んだ雷撃が放たれ、けれどもそれは間に入ったビィにぶつかり彼には届かない。

「ビィ!」「私は大丈夫だ!」「どうかな?」

私は更に右手をかざすと、圧縮された空気の弾を彼女にぶつける。

「くっ!?」

『純潔の護り手』だったか。アレも厄介だな。だが、彼女にダメージこそないものの、勢いを殺せるわけでもない。吹っ飛ばすことはできる。

案の定、軽い彼女は呆気なく壁にまで吹き飛ばされて、あまつさえめり込んでいた。

「グッ!?」「しばらくはご令嬢、壁の花よろしく、そこで大人しくいてくれ。その間に……弟君にはご退場願うから」

目の前の彼は、スチャッとレイピアを構えた。

「そう簡単にはいかないさ?」

「ハハ、君は本当に可愛いな?」

私も持っている槍を彼に構える。

「こんな出会いでなければ、仲良くなれていたかもしれんな?」

私は駆け込み、槍を薙ぐ。

「んな訳、ッあるかっ!」

その私の槍を最小限の跳躍で上に躱すとそのまま刺突する。

「あるさ」

頭部を狙ったその動きを私は首を捻って避ける。今のは頭ではなく首の方が確実だった。まあ、それでも避けたがね。

私は薙いだ勢いを殺さず、体を一捻りして逆袈裟よろしく下から上に振り上げた。

「私と君は趣味が似ている。特に異性のな」「!?」

まだ地に足が着いていなかった彼は槍をレイピアで受けると、受けた瞬間折れるのを嫌ったのだろう、回転して力を素早く逃がすと勢いを利用して距離を取った。

「身軽なものだな?だが無理は良くない」

今の激しい動きに、益々傷口が開いたのだろう、周囲に血が飛び散っていた。

肩で息をしている彼が言う。

「あんた、俺より年上だろ?好きな子に意地悪するような幼いマネ、するなよ?」

そこで私は初めて弱気を見せて、苦笑いを浮かべる。

「自覚した時には苛め過ぎててな、仲良くできる見込みがなかったんだ」

「あんた、……格好悪いな?」

「ああ。俺みたいになるなよ?生き残ったらな」

私は両足の魔道具に魔力を込める。

「ならないさ」

傷なんてないかのように彼は私にレイピアを再度構えた。

「返事だけはいい」

左足の魔道具から炎が噴き出し、先ほどよりも更に早く彼の懐に入る。

右足を蹴り出すと、魔道具から水の刃が噴き出す。

「くっ!?」

バックステップで距離を取り、レイピアで受けようとするが不十分だ。水と切り結ぶ事は出来ないのだから。

レイピアをすり抜けた水の刃は彼の腹部を深く抉る。

「さぁ、あと何分で退場だろうか?」

「ザンネン、居残りだよ『ヒール』」

いつの間にか壁から這い出てきたビィが彼の後ろに立っていた。

「我が家と思ってゆっくりしてくれて良いのだよ?」

「生憎、巻いてけってカンペが出てんだよ。大丈夫か、ケイン?」

「……ああ、助かった」

「私よりよっぽど盛り上がってたみたいじゃんか?」

「……面目ない」

「まだいけるよな?」

「もちろんだ」

羨ましく思う。彼女に頼って貰えることもそうだが、仲間がいることが羨ましい。皆私を信じて、ついてきてくれている、後押ししてくれているが終ぞ肩を並べてくれるものは現れなかった。

欲を言えばキリがないと、分かってはいるのだがな。

「……では続きといくか?」

「なーに、すぐ終わるよ」

「だ、そうだ」

「二人とも、ツレないな?」

私は槍に魔力を込めると床を突いた。途端に二人の足元から石柱が勢いよくせり出す。

二人はバックステップで躱す。それを私は再度左足から炎を吐いて距離を詰める。

ビィはウクレレを構えて迎撃の姿勢を示し、彼は逆に向かってきた。

心意気や良し、だが、甘い。私は自分に向けて電撃を放つ。漆黒の衣に弾かれた電撃を私は一時的に身にまとう。

バチンッ!「!?」

電撃で痺れて無防備な彼の首目がけて槍を薙ぐ。即死であれば回復なんて意味があるまい、今度こそ退『アンチパラライズ』っ!?

彼の背後で魔法を掛け終わったビィがニヤリと笑った。

痺れから回復した彼は私の槍を躱すと、今度は私の首を目がけてレイピアを振り下ろした。

頭より狙いは良いが、やはり甘い。私は軽く体を捻ってそれを躱 ズルッ「!?」

私は慌てて大きく跳躍して距離を取る。

「……お前の血か」

さっきまで私がいた場所には彼の血が広がっていた。あれで足元が滑ったらしい。

「何が左右するか分からないものだな」

「そうだな?」

私は首を押さえている左手を離すことができない。指の隙間から私の熱い血が止まらなかった。どうやら大きい血管を傷つけたらしい。

回復系の魔道具を持ってくればと思いかけたが、回復する猶予をくれてたとも思えない。私は電撃の魔道具の熱で傷口を焼いた。

「……続けるぞ?」

「まだやるのか?」

「逆に聞く。終われると思うか?」

視線を横に移動すると、私の兵の最後の一人が床に倒れるところだった。

「おい、ケイン。バカな事聞いてないでさっさと終わらせるぞ?」

「……そうだな」

「いざ、参るっ!!」



「頼みがある……」

「聞くわけないだろう?」

ビィはツレなく答えた。

「言うぐらい良いだろう?……最後にお前のウクレレが聴きたいんだ。一度も聞いた事がなくてな、一曲頼む」

「だからお前の頼みを私が聞く訳がないだろう」

「……」

そろそろ限界か、意識が朦朧としてきた。血を流し過ぎたな。

持っていた魔道具は全て破壊された。今は体中傷だらけで床に仰向けに寝転がっている。

始めは床が冷たいと思っていたが、今じゃ自分の血で背中が熱い。もっとも、逆に体は冷たくて仕方がない。寒い。

霞んだ目で私を見下ろしている彼女の見上げる。あまり嬉しそうではなかった。

「もっと喜んだらどうだ?」

「……うるさい」

「ああ、この後打ち上げをするのだったな。なら屋敷にある酒を持っていけ。私の地元の酒だ、うまいぞ?」

「……ありがとう」

「……言っても仕方ないが、お前と飲んでみたかったなぁ」

「……黙れ」

彼女はウクレレを手に持つと、唐突に弾き始めた。そして唐突に弾くのを止めた。

「それだけか?」

「ああ、イントロだけだ。お前はフルバージョンが聴きたかったと、あの世で後悔するのさ」

私はクスリと笑う。

「甘いやつだ」

しかもこの曲は、どこで知ったのか、魔族に伝わる曲で、しかも……

その時、屋敷が揺れた。そろそろ、私の拘束が緩み始めたか。

「ビィ。後始末を頼む」

「死に際に頼みが多いな?……後始末?アンコール抜きで閉幕したいんだが?欲しいのはアルコールだ」

「ザンネンだったな、前座が終わったばかりだよ。本編はこれから、……だ。悪いが、私は、退場させて、もら、う……」

視界がより霞んでいく。そんな中、彼女を見つめる。

彼女が私の体を揺する。もう耳もよく聞こえないが、何かを話しかけている。

まったく。甘い女だ。私はお前に多くの人殺しをさせた張本人だぞ?憎らしい、相手のハズだろう?それなのに、お前ときたら……。

彼女には悪いが、私は気分がよくなった。そんな表情を向けて貰えたなら、死ぬのも悪くないと思えた。彼女はきっと怒るだろうのだろうがね。

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