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拝啓、高木様  作者: dede
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功労者は誰だ?ババを引くのは誰だ?


森の中は木々に遮られて月の光も届かず。アカリがずっと照らし続けてくれたおかげでなんとか走り続けることが出来た。

そうして森の中を進んでいくと、洞窟を見つけた。

「ここ、なの?」

ミドリとアカリはこくりと頷いた。

「なら、急ぎましょうか。きっと待ってるハズでしょ?」

私はその言葉に苦笑いを浮かべる。

「そんな事ないさ。だから迎えに来たんだよ」

「いいえ、待ってるはずよ。その子も友達なのでしょ?なら、意識はなくとも待ってるハズよ。急ぎましょう?」

……。

足元に触れるものを感じて下を見ると、黒い犬が私の足元で尻尾を振っていた。

「アン?」

不思議そうに私の顔を見上げている。ふくらはぎに感じる生き物の体温。

うん、もうさぁ。弱ってる時に欲しいものくれちゃうんだからさぁ。ヤになっちゃうなぁ。

「……そうだね。急ごう」

少し元気が出てきた私は、皆と一緒に洞窟の中に入っていく。私は私の大切なものを取り戻しにきたんだ。しっかりしないと。

「ミドリやアカリ達と同じ存在なのでしょ?なら間違いなく可愛いのでしょうね。楽しみだわ」

「うん、いい子だよ。全部済んだら紹介させてね?」

森に引続き、洞窟内もアカリが照らしてくれた。濡れた岩肌が光を反射しており、森の中より明るく見えた。

幸い、洞窟内の魔物は全て『魔操のオルゴール』に呼び出されていたようで、道中会う事はなかった。

あっという間に最奥までたどり着いた。


「……ミィ」


最奥にある広い空間にミィが佇んでいた。相変わらず私たちを睨んでいる。

「かわいいコね?すごく、睨まれてはいるけれど」

「普段はね、もっと可愛いんだよ?アカリ、入り口を念入りに光で照らし続けて。また逃げ出されると困る」

アカリはこくりと頷くと、言われた通りに入り口を光のカーテンで覆った。

「ミドリ、黒い靄を使うから」

ミドリもコクリと頷くと力を抜いた。

「ビィ、どうするつもり?」

「屋敷では、ディスペルで隠し部屋の結界は解除できたけどミィは元に戻らなかった。

きっと別の、もっと強い力が作用しているみたい。だからミィにまとわりついてる力をとにかく引っぺがす。まずはそれから。

うまくいけばそれだけでおかしくしてる何かも取れるはず。ダメならその後考えるよ」

「私、何が出来るかしら?蹴とばすぐらいしか、できないのだけど」

「ともかく蹴って。今はとにかく弱らせて欲しい。明るいこの場なら蹴れるから」

「分かったわ、それならできる。では、行って良いかしら?」

「そうだね。行こうか?」

私とモヨコはミィに向かって駆け出した。


ミィはモヨコに向けて闇の帯を伸ばす。

けれどそれはモヨコに届く前に霧散した。

「それは私に通じないわ!」

モヨコは跳び上がり、空中で体を捻ると回し蹴りでミィを蹴り落とす。

ミィは闇を散らしながら地面に叩き落とされた。


フラフラとミィが立ち上がると、今度は目の前の私に向かって闇の帯を伸ばした。

それは今度は私の靄に阻まれて私に通らない。

「その程度ならまだ私に足らない」

私はそのまま、ミィを抱きしめる。

ミィは私の腕の中でもがいていたけれど、私の黒い靄により徐々に闇を散らしていく。

「ねぇ、苦しそうだけど大丈夫なの?」

「ミドリやアカリ達を見てれば分かると思うけど、精霊には私の靄って効かないんだよ。

だから、ミィも大丈夫……なんだけど、この苦しみっぷりは、さすがにちょっと心配になってきたなぁ」

私のハグから逃れようと必死でもがいている。

やがて首を垂れてぐったりとなった。

「ねぇ、これ、本当に大丈夫っ!?」

「たぶん」

「ちょっとさすがにマズいんじゃ?彼女を私に預けてくれない?」

私からぐったりしてるミィを受け取ると

『ヒール』

「魔法も効かな、あ、ちょっと待って?生み出す能力も併用できる?」

「こう?」

魔法の発光色が変わる。するとミィの顔に徐々に生気が戻ってきた。マジかー。私の力は効かないのにー。効いたら一緒にいれないけどさ?なんか不公平に思う。

もうミィが暴れなくなったので来たがっていた他の精霊ズも呼んだ。すぐにみんな、心配そうに現れた。

やがてモヨコの腕の中でミィが目をパチリと開ける。

「ミィ、私だよ?分かる?」

すると、ミィは何度か瞬きをするとコクリと頷き、私に抱きついてきた。

「よかった」

私もミィを抱きしめ返す。その上から、ミドリやアカリ達も抱きついた。

ミィは少し苦しそう身悶えしたけど、今度はどこか照れ臭そうだった。

「案外、簡単に終わったわね?」

モヨコがそう感想を漏らす。

「相性だよ。モヨコ、助かった」

そもそもミィの吸収が二人とも効かない時点で負けないこと確定だし。

ミィが宙を浮いてるのでもっとチマチマ削るつもりだったのに、モヨコが蹴落としてくれたので一気に片が付いた。

「どう致しまして。ミィの事を紹介してくれれば充分よ?」

すると、その言葉を聞いてミィは私の腕からするりと抜けると、今度はモヨコに抱きついた。そのまま頬ずりしている。

「あら?」

「へぇ?随分懐かれたもんだね、モヨコ?」

「そうなのかしら?」

「そうだよ」

「そう。よろしくね、ミィ?」

ミィはモヨコの腕の中でコクリと頷いてみせた。

「私の紹介なんて要らなかったみたいね」

すると、その言葉を受けてミィは私を見ながら首を横に振り、モヨコを指差した。

「ああ、はいはい」

「ミィは何て?」

「モヨコと仲良くしたいんだってさ。ねえ、モヨコ。モヨコもミィと仲良くなりたい?」

「決まってるわ。もちろんよ」

「はい、決まり。じゃ、いくね。……『ホアコクア』」

私が魔力を込めて呪文を唱えると、抱きついていたミィがモヨコの胸の中に飲み込まれていき、やがてすっぽり入ってしまった。

「え?え?何?ミィ、大丈夫なの!?」

モヨコが慌てると、すぐにモヨコの胸の辺りから顔だけを覗かせて腕を振った。

「……大丈夫そうね。今の魔法、何かしら?知らない魔法ね?」

「『友達を助け支えになる。精霊を分け与える』って意味の言葉らしいよ?内容もその通り、かな?精霊のコ達が気に入った人に紹介する魔法だよ。

成立すると、そのコの属性に関する能力が上がったりとか能力が付与されるのよ」

「……そうなの?」

モヨコの胸から生えたミィの首がコクコクと頷く。

「あと、ずっと一緒にいられる」

「それは重要ね!これから、よろしくね」

ミィはコクコクとしきりに頷く。

「……そういえば、ビィとミィって名前似てるわよね?能力も似てるし、見た目も似ている気がするわ」

「あー、名前と能力は確かに。でも見た目はそうでもないと思うよ?」

「もぅ、ミィったら本当に可愛いわね?あら、ちょっとくすっぐたいわ、ミィ?ミィったら、本当に甘えん坊さんね?」

モヨコがミィとイチャイチャし出した。

「今の発言の後に止めて!?せめて私のいないところでやってよ!」

「それじゃ、つまらないわ?」

と、クスクス二人して笑い出した。

「むー」

早速二人が仲良くシンクロしてる。

「さ、じゃ、全部終わったわね。おうちに帰って、ご飯よ!」

「ちょい待ち」

「どうしたの、ビィ?」

「帰る前に一つだけ。クーデターの件だけど……」

その言葉にモヨコが苦い顔を示した。

「……今のところ、首謀者って誰になりそうかな?……いなかったよね、その場で偉そうにしてた人なんて?」

そりゃそうだ。誰の指図だか知らないが、ミィの洗脳が原因なんだもの。

モヨコが悔しそうに言う。

「そうね。……順当にいけば、私の義兄よ。先導している姿が目撃されている、から」

つまり嫡男、次期当主か。その結果はあまり芳しくありませんなぁ。下手したら即処刑となりかねない。犯人捜しをするにも、まずは時間が欲しい。

「それは困りましたな?」

「……これは我が家の問題よ。ビィが気を揉む必要はないわ?」

それに私はニヤニヤしながら答える。

「でも私たちは運がいい」

「え?」

「ちょうど犯人役にうってつけの人物がいるんだよ。その人に時間稼ぎをして貰えばいい」

モヨコは怪訝そうに眉を上げる。

「……そんな都合のいい人物、いたかしら?あの変質者のことかしら?別にあの変質者を犯罪者に仕立て上げるのに、私としては異論ないのだけれど」

モヨコの歴史家の呼び方が変質者で一貫してるけど一体あいつ何やらかしたんだ?

「ねえ、モヨコ?もう少し歴史家のこと労ってやってよ?あの人、マジで今回歴史変えるレベルでファインプレーしてるんだからさ?私としても褒美いっぱい出してあげて欲しいんだわ?」

「あの変質者が今回何をしたというの?騎士達全員を強化して貰ったけれど、それだけの事でしょう?ビィの方がよっぽど」

「え、モヨコが一番実感してると思ってたのに。私なんかよりよっぽど今回功労者だよ?」

「……何をしたかしら?」

「今朝出発するハズだったモヨコを一日足止めさせたの、誰さ?」

「あ」

「それにこれは話してなかったけど、私と歴史家がワンの街を出発したのって6日前なんだよ?」

「え!?トゥルブとワンの間って10日掛かるのよね?」

「歴史家が私を3日でトゥルブに連れてきたんだよ」

ちなみに普通にトゥルブに向かってたとしたら、モヨコとすれ違いはしてただろうけど、会話はしてたか怪しいところ。

「……ぶっちぎりね、認めたくないけど」

「分かったなら少しは優しくしてあげてよね?」

「……検討だけは、するわ?」

ホントに何をやったんだ歴史家?

「じゃあ、本当に誰かしら?その、今回の実行犯に都合のいい人物って。もうそんな人物、いないわよね?」

「もー分かってる癖に~?じらしてる?じらしちゃってる?」

「知らないわ。もう、諦めて父や兄さま達と一緒に考えましょう?きっといいアイディアも出ると思うの。ねえ、だから、一旦帰りましょう?美味しいご飯が、待っているのよ」

「分かってるよね?」

「分からないわ!」


「私だよ」


そう、そういう時に都合のいい女、それが私。

モヨコは涙目で首を、イヤイヤと駄々っ子の様に振った。

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