花咲く(ただしドライフラワーとあだ花)
「あーもうっ!突っ込む前に一つだけ教えて!ロールは?」
「武闘家」
「は!?アサシンとかローグとかじゃないの!?」
「……アサシン?」
「ナ、ナイフ使ったりとかは?」
「蹴とばすだけ、よ?え?ナイフ?何のイメージ?私、ビィからどう見られてた?」
モヨコから明らかな困惑の様子が見てとれた。
「ああ、ごめん。何でもない。勝手なイメージつけてただけだから。わかったわかった武闘家ね。で、どっち向かう?土地勘ないからモヨコが決めて」
「待って。黒犬、父はどこ?」
すると足元にいた黒い犬が少し前に出て鼻をヒクヒクさせると「オン」と鳴いてコチラを振り向いた。
「見つけたみたい。あの子を追えば大丈夫、父の所に連れてってくれるから」
「最優先は領主の確保、次に相手の首謀者ってことで、いいね?」
「いいわ。あなた、冒険者だったかしら?報酬は、どうすればいい?」
「今回は詫びも兼ねてロハでいいよ」
彼女相手に報酬請求するのは心苦し過ぎる。
「そう。まあ、おいおい。では行きましょうか?」
「ええ」
私たちは黒い犬の後を追って走り出した。
「姫様っ!?」
「姫、じゃ、ない!」
ズゴン!
「モヨコ様!?ご勘弁を!」
「様、じゃないって、言ってる!」
ゴスッ!
「モヨコ様が来たぞ!?」
「何度、言えば分かる!様じゃ、ない!」
メキッ!
……私、いるかなぁ?
「ねえ、モヨコ?今まで騎士と手合わせしたことって」
「ある。何度も」
「負けたことって」
「ない。一度も」
「騎士がみんな怯えてない?」
「気のせい」
「そう。……私いる?」
「いる」
「そう……知らない騎士っていた?」
「……いない」
いないかぁ。でも皆向かってくるんだよなぁ。
「どう思う?」
「……理解、できない」
彼女は辛そうに答えた。きっと顔見知りばっかりだったんだろうなぁ。
情報がどうにもまだ足りてないかなぁ?
「いいや。どちらにせよ領主様確保は変わらないし。先を急ごうっか?」
「そう、ね」
まあ、私働いてないけどな!
犬を追っていくと、地下への階段を下って行った。
「この先って?」
「牢屋。……父上」
「牢屋ならむしろ安全でしょ?ほら、とっとと行こうよ?」
「……ええ」
私たちは地下へと降りていく。
「……待ってくれ!」
「あれ……変質者?」
「誰が変質者だ!私は歴史家だ!」
牢屋を奥へと進んでいくと途中で髭の延びた変質者が牢屋に入っていた。
「ビィ、この人知ってるの?」
「私をずっと追っかけてきた人。モヨコも知ってるの?」
「ああ、確かに変質者ね?私にとっては休日が一日延びた原因の人」
モヨコが蔑む目で彼を見てた。
「歴史家(変)さん、あなたはどうしてここに?」
「君に会わせろとずっと言い続けていたら、何故かココに。頼む、出してくれないか?」
「断る。じゃ、行こうか?」
「ええ」
「ちょっっっっっっっっと!?」
私たちは彼を放置して更に奥に向かった。
「父上っ!」
モヨコが鉄格子に顔を近づけて叫ぶ。
「……モヨコ、何故ここに来た!」
「今出して差し上げますから!」
「私の事は構わない、早くここから去るのだ!」
「できません!少し離れていてください!」
そう言ってモヨコは鉄格子を蹴飛ばした。
「っくぅ!」
まあ、鉄格子だからもちろん鉄でできてるわけで、それが蹴りなんかでどうにか訳もなく、激しい打撃音がしただけで……あと、鉄格子が曲がっただけで、領主が脱出するだけの隙間はできなかった。
「モヨコー?」
「なによっ!?」
さすがに痛かったのだろう、足をさすりっているモヨコが涙目でやけくそ気味で返事した。
「あそこ、鍵」
私は後ろにある見回りの詰め所に掛かってるカギを指差す。
「あ……」
モヨコが気恥ずかしそうにしていた。
ガチャッ
牢屋のカギを開けると扉が開いた。領主が扉から出てくる。
「父上、ご無事で良かったです」
「ああ、助かった……ありが」と、領主が懐から短刀を取り出すと駆け寄ってきたモヨコに向けて突きたてた。
「!?父上っ!?」
「だと、思った!」
私はその二人の間に無理やり体を割り込ませる!
「っ!?」
領主の短刀は私の野薔薇姫に遮られて、モヨコには届かなかった。
「!父上、何故っ!?」
「野薔薇、お願いっ!」
私は野薔薇姫に魔力を込めると、萌黄色をしていた服がさっと、真っ赤に染まる。
「手加減、もね!」
野薔薇姫から茨が伸びると領主の手を叩いて短刀を弾いた。
あと、頭も叩いて領主を気絶させた。
モヨコが悲しげに眉根を寄せる。
「父上……どうして?」
「いや、普通に予測つくっしょ?黒幕いるか分からないけど、これ、洗脳入ってるよね?」
「え?」
「いや、そこは気付け?」
意外そうな声を出すな。何ならこのやり取り、必要とは思いながら茶番と思ってるからな、私?
「知り合いの騎士がモヨコを襲ってる時点で、洗脳疑うよね?……問題は、これを解除できるかどうかなんだけど」
「……選択肢は?」
「順当なら自然回復。強制なら呪いなら『アンチカーズ』、魔法的なものなら『ディスペル』かな?まあ、でもどっちも高位の回復職の魔法だから」
だから、……私が唱えるしかないのかなぁとか思っていると
『アンチカーズ』
そう唱えた声が聞こえたかと思うと、領主を抱きかかえていたモヨコの掌が光っていた。
『ディスペル』
続けてもう一度モヨコの声がすると、また発光した。
「え、なんで?モヨコって武闘家って……」
「武闘家、だけど」
彼女が伏せた顔のまま言った。
「もう一つは、聖女」




