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拝啓、高木様  作者: dede
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『私ね、伝説のネガ側にいたの』


夜空に揺らめく黒煙。それは空に浮かぶ月を覆って隠していた。

街は混乱に包まれ、喧騒が至る所で聞こえていた。


「あー。ねえ、あなた。あの建物知ってる?」

「ここの領主の館よ。私の職場でもあるわ」

「何が起きてるか分かる?」

「知らないわよ」

ろくでもない事だけは分かるけど、と続けた。

「……無視もさすがにできない、か。仕方ない。行きましょ?」

「え?」

「行かないの?」

彼女が意外そうに私を見た。

「私、部外者だし」

「……あなた、弛んだのはなくて?あなたの目の前で事件が起きてるのよ?颯爽と解決を期待する訳ではなくても、まずは見極めようとは動かないの?苔むすまで何もしないつもり?」

「いや、あれ、私関係あるかなぁ?」

「知らないわ?それを知りにいきましょ?さぁ」

彼女は私の手を掴むと走り出した。

私はその手を払うと、彼女の後ろを追う。

「……いいよ、乗るよ。じゃあ、行こうか?」


私と彼女は人の流れに逆行するように街を走っていた。

「にしても意外」

「何が?」

「あなたの方が余計な事に首を突っ込まなさそう……って、違う!職場って言ってたじゃん!100%あなた関係あるじゃん!私巻き込まれただけなんじゃん!?」

「……そうかもしれないわね?どうする?やっぱり帰る?」

「あーもういいよ?気になりだしてるし関わるよ。急ご?」

「あ、待って。キューリ!無事だったのね!」

「モヨコ様!?良かった、ご無事で」

領主の館から走ってくる人たちの中のメイド服の女性が走り寄ってきた。

「外にいたから。ねぇ、何が起きたか、分かる?」

「クーデターです。一部の騎士が反乱を起こし、館を占拠しました」

「父は?」

「領主様は捕まったご様子でしたが、今はどうだか……。それに、おかしいのです」

「何が?」

「魔物がいました」

「魔物が?」「へぇ?」

「魔族が関わっているかもしれません」

「……わかったわ。ありがとう。気を付けて逃げるのよ?」

「え、モヨコ様は?」

「私は館に戻るわ。……放ってはおけないもの」

「そんな!危のうございま」「ちょちょちょ?ちょい待って?」

「……モヨコ様?こちらのお嬢様は?」

「……一緒にご飯食べてた人」

「その、キューリさん?でしたっけ?この子、誰?」

私は横にいる彼女を指差す。

「……モヨコ・ビッグムーン様です。ご領主様の、ご令嬢の。その、ご存じなくて同行されてたのですか?」

「ちょっと待ちなさい、キューリ?」

モヨコがキューリを睨みつける。

「時間がないから流していたけど、いつも言ってるわよね?私は平民で、ご令嬢ではないの。様は私に不要よ?妾の子で、しかも同じメイドでしょ?」

「ですが!」「ですがじゃなくて!」

「どっちでもいいわ。事情は多少把握したから先急ごうか?」

私は二人の反応を待たずに館に向かって走り出した。

「そもそもあなたが……」

モヨコも文句を言いながらも私を追って駆け出した。

「だって自己紹介してないのが悪いんじゃん。あ、私の自己紹介いる?」

「……お願い。私、あなたの名前、知らない」

「え、そうなの!?……ビィ。私はビィ・ミヨリアだよ。ごめんなさい、色々知ってそうだったから名乗りが遅れた。その、予定調和の範疇かとすら思ってたわよ?」

「……わたし、あなたの事、少ししか知らないわよ?……そう、ビィっていう名前だったのね。……最近使ってる偽名とかじゃないわよね?」

「え、私、何の疑い掛けられてるの!?ビィは私だよ、私といえばビィだよ?」

「不安になる言い回しね……まあ、分かったわ」

むぅ、あらぬ疑惑が晴れない。それはそれとして破裂音が響いてから随分経って、私たちも随分走った。

おかげで人もだいぶまばらになっており、随分と走りやすくなっていた。

「でも、どう思う?魔物がいるってことは、やっぱ魔族もいるのかな?」

「いいえ、今回魔族は関係ないわ。ねえ、人だけで魔物を操る方法って心当たりある?」

彼女は断言した。

「へぇ、断言?それにちぐはぐだね、知識。……うん、幾つかあるよ、魔物操る方法」

「例えば?」

「テイマー系のロールが一番わかりやすいかな?あと一時的なら吟遊詩人の歌でもいける。でもたくさんの魔物なら道具の方が濃厚かな?魔操のオルゴールとかあればお手軽簡単恒常的に募集できる」

「……数は聞かなかったわね?抜かったわ。どれかしら?」

「さぁ?案外どれでもないかも?私も全てを知ってるわけじゃないし」

「頼りないわね?大丈夫かしら」

「なーに行けば分かるさ。それにやる事はシンプルだよ?術者なら殴り飛ばす、道具なら壊す」

「……ほんと、シンプルね?」

嫌いじゃないわと機嫌良さそうに呟くと、足取りを軽くしていた。今度は私が訪ねる。

「首謀者の心当たり、ある?」

「さぁ?やっぱり、その場で偉そうにしてるのがそうでしょう?」

それを聞いて私もクククと笑う。

「モヨコ様も大概だね?」

「……様?」

「だって、領主様の娘さん、なんでしょ?必要でしょ?」

「不要よ?言ったでしょ、私は平民だって。次言ったら、……その、……その、……怒るわよ?」

「わかった、モヨコ?」

「ええ、ビィ?私も呼び捨てで構わないかしら?」

「もちろん。私も平民だもの。で、着いた後のプランってある?」

「そうね、先に父や他の人質を確保したいわね?探せる、黒犬《コッケン》?」

「アォーン」

「そう、いい子。お願いね?」

「……え、いた?その犬?」

気が付くとモヨコの足もとを黒い犬が並走していた。

「いたわよ?さっきから」

「……そっか。そっか?まあ、いっか。でもさ、どうやって戦況ひっくり返すのさ?いっちゃなんだけど、私、全然無力だよ?」

「……そうだったの?まあ、父と味方の騎士を解放できれば、どうとでもなるとは思うけど……」

モヨコが私をしげしげと見つめる。

「……以前の白い服より劣るけど、それもいい服ね?それだったらこの程度で死ぬことも無いわよね?

あの黒い霞みたいなのはどうなの?使わないの?使えないの?魔力を直接ぶつけるのは……過剰すぎるからダメか。

聖女の力は?あれはまだ使えるのかしら?他に切り札ってないの?」

私は警戒レベルを一気にMAXまで上げると、彼女から飛び退いた。

彼女も足を止めて私に向かい合う。


「……ねえ、モヨコ?モヨコ、って誰?」

私はモヨコを指差してモヨコに聞く。

「それ、私に聞く?心当たり、あるんでしょ、ビィ?」


ある。今話した情報を全て知るものは随分と限られる。

ねえ、私、この子のこと、殺してない?


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