ねえ、知ってる?私実はこれでもあなたより年上なんだよお嬢ちゃん?
「じゃ、調査の件頼んだ。私はそろそろ行くよ」
「いや、待て。あと3日ほど待ってくれ。渡したいものがある」
「ダメだ」
「ダンジョンで待っていてくれ。それならいいだろ?」
「……3日だけだからな?酒、良いヤツから順番に、持てるだけ持ってくからな?」
「……お手柔らかに頼む」
「許可できません!ランクが足りてません!あの服だってないじゃないですか!」
ダンジョンに潜りに行こうとギルドに申請しに来たが、案の定ミルチェさんが許可を出してくれなかった。
「……なぁ、ティーリス?お前がどうにかしろよなー?」
「分かってる」
「……なんなんです、さっきから?やたら態度悪いじゃないですかビィさん」
ティーリスの後ろをダラダラついてきて、如何にもイヤイヤという態度を丸出しにし、あまつさえティーリスを呼び捨てにしていると私の態度が目に余ったのか、ミルチェさんがトゲのある言い方で咎めてきた。
「気にするな。今アレは思い通りに事が進まなくてスネてるんだ」
「っ!知ったような口を。私は今すぐ出て行って全然いいんだよ?」
さっきまでは泣きそうな顔して私を引き留めてた癖に、ティーリスがそんな事を言うものだからさすがにイラっときた。
「……ふぅ。ふてぶてしいだけかと思ったら、案外年相応に可愛いところもあるんですね」
「ミルチェさん、私はそんなに子供じゃない」
「そ。じゃ、その幼い言動どうにかなさい」
「……ティーリス、さん。で、どうするの?無理ならもう行くよ?」
「まあ、待て。ガネスのやつは……」
「……。触るな」
私は無言で私の肩を掴もうとしたガネスの手から逃げる。
「おっと、今度は気づかれたか。それに、その身体で俺から逃げるか」
ガネスが楽しそうに私の体を観察している。その後ろでは同じパーティーらしき男が二人が苦笑いを浮かべて立っていた。
「ティーリスさんや、このセクハラ野郎に用?」
「アハハ、こいつは手痛い。しかし思った通りぷにぷにで冒険者って体じゃないよな。例の服、どうした?」
私に挑発されても、さらっと受け流して更に失礼発言を重ねてきた。
「人に譲った」
「羨ましい。俺らが買い取りたかったよ」
「着るための条件が厳しいんだ。ガネス達には着れなかったよ」
「ま、条件が厳しいか、リスクが大きいかのどっちかだとは思ってたよ」
ティーリスが私とガネスの間に割って入った。
「ガネス、お前たちに指名依頼だ。コイツのダンジョン散歩に3日つきあって欲しい」
「……護衛依頼か?一緒にパーティー組んでって事じゃ……じゃ、ダメか。嬢ちゃんランクが足りてないもんな。でも俺らAだから高いぞ?」
「構わん」
そう言って懐からお金の入った重そうな袋を渡す。
「これで足りるか?」
「……ティーリスさん、予想の何倍か多いんだが?そもそも3日もこの嬢ちゃん、ダンジョンで何するんだ?採取じゃ採算取れないよな?」
「バカンスだよ」
私は皮肉げにニヤリと笑った。ガネスはちらりと私を見て、またティーリスに視線を戻した。
「で、本当は?」
「行けば分かる。ここでは言えん。口止め料も含んでると思ってくれ」
「わかった」
「今から行けるか?」
「今から?」
「急いでる」
「あー、せめて食料とか買いたいんだが」
「後で送り届ける」
「酒ならあるよ?」
私が身体を揺らすと、背負っていたリュックの中で瓶がカチャカチャと鳴った。音を聞いてガネスは目を見開いた。
「……え、まじバカンスなのか?」
「で、行けるか?」
「あ、ああ。かまわ……」
「ちょっと!なんでギルド内でギルド無視して勝手に話進めてるんですか、元ギルマス?」
ミルチェさんが再び割って入る。
「急いでいると言っている。書類はこの後整える。で、この体裁ならコイツをダンジョンにやっても構わんな?」
「……あの服もないのに、危険すぎます」
「いや、ホントな。あの服があればこんな苦労しなかったんだがなぁ」
ティーリスが肩を落として遠い目をしながらぼやいた。
「なあ、ミルチェ。俺たちがしっかり嬢ちゃん守るから。俺たちを信じてくれ」
「……」
ミルチェさんは、渋々、何も書かれていない依頼書に承認の印を押した。
ガネスさん達3人と私は闇夜に紛れて、ダンジョンへと急ぐ。
私と比べてガネスさんへのミルチェさんの信頼高くて羨ましいなぁー、とか。そんな子供じみた事、別に考えてなんか、ないよ?うん、別に。




