あなたが世界を滅ぼしたくなる程大事な人は誰ですか?
俺が魔王だ。
「反論は?」
「いーや、ないね。するだけの材料がない。でも符号はしてるからなぁ」
「そうか」
残念だ、と零すと目をぎゅっとつむって数回苛立たしげに指先でテーブルを叩くと切り出した。
「お前が今回の魔王だとして話を進める。違ってたら今の世代に頑張って貰うだけの話だからな。で、だ。結論から言うとしばらくお前はここにいろ」
「ここに?」
「ああ、正直お前が勇者と聖女に会ったら何が起きるか分からん。だから絶対に会わないようにしたい。
幸い、勇者と聖女はもうじき旅立つことが決まってるからな、むしろ王都にいた方が安全だ。
旅立つまでは冒険者の依頼も受けるなよ?聖女のタカネ・ワイルドがノートと面識があるらしいのが心配だが、まあ、部屋から出なければ会うこともないだろう。
今思うとお前が学園に通わなくて本当に良かったよ」
そう最後は和ませるように朗らかに笑った。
「そうだな。うん、わかった」
「ああ、あと、これも確認したかったんだ。お前、誰が迫害されたらキレそうだ?」
「なんでそんな事を聞く?」
「お前が魔王になるってことは、お前が世界と敵対するってことだ。お前今そんなこと思ってるか?」
「うんにゃ?」
「つまりそうなるキッカケがあるってことだ」
「うーん、まずお前とお前の嫁さん」
「まず俺なのか?」
「根無し草なめんなよ?知り合い少ないんだよ」
だいたい死んじまってるし。
「あとは……シミュル家の人々と受付のミルチェさんは気に入ってるけど、世界を滅ぼしたいって思えるかと言われるとちと分かんないや」
「そうか」
本当はこれにタカネが入るけど、これは内緒。
「あ、当たり前すぎて抜けてた。最優先でミドリ達だ。あの子たちに何かあったら確かにヤバイ」
「ああ、なるほど。間違いないな。わかった、その辺に働きかけようとしてる動きがないか、重点的に調べてみる」
そう言って席を立って部屋を出ていこうとする。
「まあ、勇者と聖女が旅立つまでの辛抱だ。それまでは大人しくしてろよ?じゃ、夜分にすまなかったな」
「いーや、私の事を思ってだろ?ティーリスは昔から優しかったものな。うん、ティーリスのそういうトコ好きだよ。お前も気を付けて帰れよ」
と、ティーリスはドアノブに掛けようとした手をピタリと止めた。
「あぁ?今、なんつった!?」
振り向いたティーリスは鬼の形相をしていた。




