席の隣りは仲の良いコと好きなコと、どっちが嬉しい?
「それにしてもビィは聖女のことを知ってるような口ぶりだったね?何で知ったの?」
「あー、昔読んだ本のうちに、聖女に書かれたものがあったから」
「へぇ、昔読んだ本ね?結構他にも色々詳しいし、実はビィって貴族とか豪商とかイイトコの出身だったりする?」
「違う違う。旅してる時に偶々機会に恵まれたんだよ。実家は農家」
色々知ってるのは年の功です。
「ふーん、それにしても聖女かぁ。100年以上前の事言われてもな。いざ実際になってみても実感湧かないんだよね。ね?その本には何で前回の魔王の時は現れなかったのか、理由って書かれてなかったの?」
「さすがにそんな事までは書かれてなかったよ」
「じゃあ、ビィはなんでだったと思う?」
「タカネはどう思ってるの?」
「私は……さっきまでは選ばれたけどやりたくなくて行動しなかったのかなって。でもさっきの話の感じだと無理そうだし。今は分からない。ビィは?」
「勇者がいたから十分だったんじゃない?実際勇者だけで魔王を勇ましく倒して皆を守り、世界を平和に導いたんだし」
「……それって、今回は聖女だけでも勇者だけでもどうにもならない存在って事?」
「……あのさ、それで聞きたいんだけど。今の脅威って何?私世間に疎くてよく知らないんだよね」
タカネはその質問に困った顔をして答えた。
「それが良く分からないの」
「よく分からない?」
「そう、世の中は一見して平和そうだし、神託では何も教えては頂けなかった」
それなのにその見えない脅威に対して勇者と聖女が選ばれた。素直に考えればまだ生まれる前か、暗躍している段階ってところなんだろうけど。
「そういえば勇者って会った事あるの?」
「ううん、まだ。でも絶対組まされるから、そのうち会わされると思う。嫌なヤツじゃなきゃいいんだけど。……実はビィが勇者だったりしない?」
「しない」
「やらない?」
「やらない。ってか、もう決まってるから」
「ちぇ。二人して世の中を救おうよ?ビィとならきっと楽しい旅になるのに」
それが本気で言ってるらしくて、それが眩しいやら何やらで思わず吹き出してしまった。私もそんな頃があったなぁ。
「ちょっと笑わないでよ!本気で私は言って……」
「ごめんね、冷やかしたつもりはなんだ。私もタカネと一緒に旅したらきっと楽しいと思う。でも私は勇者じゃない」
「あ、そうだ!別に勇者じゃなくていいんだよ!勇者だって仲間と一緒に旅したんだし。仲間として一緒に行こう?」
「私、吟遊詩人だから」
「んー、でも補助って大事だし」
「私、魔法使えないんだ」
「え、吟遊詩人なのに?」
「うん」
「んーーーーー、あ、その服!その服があれば十分仲間として貢献できるって!」
「この服?」
「うん!」
私はもぞもぞして服を脱ぐと、脱いだ服をタカネに投げ渡した。私は薄着になったが、まあ、別にまだまだ汗ばむ陽気なので問題ない。
「あげる」
「えぇ!?」
「私よりもタカネに必要でしょ?」
「……着ても?」
「もちろん」
タカネはもぞもぞして服を被ると、右腕が出て、左腕が出て、そして襟元から頭が……なかなか出てこらず、しばらく鼻息だけが聞こえてきたがようやく頭が出てきた。
「ありがとうございます!」
すごい満面の笑顔で感謝の言葉を口にする。でもすぐに眉間に皺を寄せた。
「でもビィは意地悪だよ、今くれるなんて。この服抜きで仲間に……うーん、うーーーーーーん」
タカネは唸ったあと項垂れた。
「……ごめん、周囲を説得できる未来が思い描けなかった」
「ハハ、さすがに無理だよ。私よりもそこいらの初心者剣士や魔法使いの方がよっぽど役立つから」
「んー、どうにか……」
「でもね、ノートさんなら、大丈夫だよ。彼は強いよ、それにもっと強くなる。私が保証するよ」
「ノート?なんでノート?」
タカネは少し不機嫌そうだった。
「あれ?ついてきて欲しくない?」
「……別に、あんな奴なんて」
「……さっき、言ったけど。はぐらかすならともかく、自分の気持ちと違う事を言うと後悔するよ?」
「!?……ぐぐぐ」
タカネは、私をキッと睨み、きつく目をつぶって眉間に皺寄せて歯ぎしりしていたものの
「……内緒なんだからね?」
「もちろん。今は二人だけ、でしょ?」




