お散歩デートに至るまで
「あれ?ティーリスさんいないんですか?」
「ええ、王様に呼ばれて朝から出てるの」
王様ってこの国で一番偉い人だよね?やたら軽く言われたけど。気にしてなかったけど、ちゃんと要職についてたんだなぁ。
「じゃ、しばらく王都に行って帰って来られないんですね」
「え?」
「え?」
パピニさんが凍り付いた表情で私の背後を指差した。
「あれ、お城よ?」
「……ああ、本当だ。王様が住んでておかしくなさそうな立派なお城ですね」
「……やっぱり学園に通う?」
「学校じゃ一般常識は教えてくれないと思うのでやっぱり止めておきます」
「という訳で夜には帰ってくるのだけど、しばらく通うことになりそうだって言ってたわ。それで次会う時にちゃんと練習してたか見るらしいから、自主練をサボらないようにですって」
「わかりました。また、しばらく間を置いてから来ますね」
「私は毎日来てくれてもいいのだけど?」
「お仕事あるので。一週間後に来ます」
「ちぇ」
私はティーリスの家を後にすると、真面目に労働に従事するためギルドに向かった。
そんなわけで、私はここ数日はシミュル家とギルドと郊外を回って過ごしていた。
F級になってもあいかわらず薬草集めばかりしていたが、討伐依頼よりはマシと思われているらしく受付嬢さんからは何も言ってこない。
他にも興味がある依頼がなくはないのだが、ミドリに構う時間が取れなくなるのでしばらくはこのまま続けようと思っている。
そんなある日、夕食の後に当主が少し躊躇いながら口を開いた。
「……すぐに噂が広まるだろうから先に伝えておく。今代の勇者と聖女の神託が下った」
「っ!?勇者ですって!?」
私は思わず興奮して立ち上がってしまった。座っていた椅子が勢いよく倒れた。
「あ、ああ。そうだ。しかしそんなに驚くことかね?前回から、かれこれ70年経つ」
「っ。……ハァ。すいません、少々興奮し過ぎました」
私は呼吸を整えると倒した椅子を立ち上げて座り直した。
「まあ、驚くのも無理はない。前回から70年だ。君らにしたら昔話の世界だろう。私だって当時を知る人から聞いた話でしか知らないからな」
そうじゃ、ない。確かに久しぶりだとは思うが、重要なのは
勇者がいることだ。
「ただ、我が家とも全く関係ない話じゃない。今代の聖女は」
当主は少し溜めると、ちらりとノート君を見てこう言った。
「タカネ・ワイルドだ」
「っ!?彼女がですか!?」
今度はノート君は椅子を倒して立ち上がった。それほど幼馴染の聖女の神託は衝撃だったらしい。
「ああ、そうだ」
まだ事態が上手く呑み込めていないのだが、どうやら世の中が大きく動いてるらしいというのは実感として感じずにはいられなかった。
翌日。
あんな事を聞かされたが、お金は大事なので今日も今日とてギルドに依頼を貰いに向かおうとシミュル家を出た。
「あ」
「あ」
家を出ると、家の前でウロウロしてるタカネ譲とバッタリと遭遇した。
「その、おはようございます」
「……あ、はい。おはようございます。あの、ノートさんですよね?今呼んできますよ」
私はノート君を呼んで来ようと踵を返したところ、呼び止められた。
「ま、待ってください違います!私は、あなたを待っていたんです!」
「へ……私、ですか?」
「……は、はい。その、お時間よろしいですか?」
「いいですけど……ちょっと一緒にその辺散歩しますか?」




