歌って!踊って!むしれるアイドル!(草)
「おや?確か一昨日来たお嬢ちゃんじゃないか?もう出てくのかい?」
街の衛兵のおっちゃんが私の事を覚えていて声を掛けてくれた。
「違う違う、私冒険者になったんだ。これからちょくちょく顔を見せることになるからよろしくね。でも、よく覚えてたね?」
「そうさな。毎日たくさんの人が街を出入りするが、嬢ちゃんは妙に印象に残ってたからな。ま、何にせよ気をつけてな」
「ああ、あんがとね、おっちゃん」
しばらく他の旅人と同じように歩いてたけど、受付で教えて貰った場所に向かうため道から外れて歩き出す。
ようやく人影が感じられなくなったのでミドリを呼んだ。
「もういいよー」
すると一瞬チカッとしたかと思うと、次の瞬間にはミドリとアカリがふよふよと浮いていた。
「お、今日はアカリも一緒なんだ。ひっさしぶりー」
私はニコニコしているアカリとハイタッチをする。
「じゃ、今日は久しぶりだし、何でもリクエスト応えちゃうよ。一曲目何がいい?」
私は背負っていたウクレレを正面に持ってきて構えた。
「え?聖女の行進?ミドリ、本当にそれ好きだねぇ。アカリもそれでいい?オーケー」
二人してコクコク頷くので、私は歩きながらウクレレを弾き始めた。
するとミドリは透明感のある声で歌いだし、アカリは楽し気にステップを踏んで踊り始めた。
「ッ」
それがしばらく続いたが、数曲弾くとまだ弾き慣れてない私の指先が割れてしまって曲を中断する。
するとアカリが私の指に近づいてきて、ほんのりと光ると治癒魔法をかけていた。
傷口が塞がったのを見届けると、ニッコリと微笑んでウクレレを指差す。うん、分かってますよ。続きを弾けっていうんだよね。
まあ、正直アカリがいた時点で私も期待してたからね。今日はガッツリ弾きますよー。
と、それが教えられた薬草の群生地に着くまで続けられた。
「ごめんね、ちょっと依頼を片づけるから少しだけ待ってね」
二人とも不服そうだったけど渋々と頷いた。
さてと、この辺だとナコナコ草が薬草になるんだよね。
薬草で一括りにされてるけど、地域ごとにポーションの材料になる草の種類が違うので旅をする冒険者は注意が必要だ。
ポーションのレシピも違うらしいんだけど、そっちの方はよく知らないや。
私は受付さんから借りてきた標本と見比べながら膝をついてガサゴソと草むらを漁る。
見つけた薬草は、基本だけど次もすぐ生えてくるように根の部分は残し、葉っぱの部分だけナイフで切り取っていった。
その様子を見ていたミドリとアカリが、近くに生えていた薬草を引き抜こうとしている。まあ、力及ばず抜けはしてないけど。どうやら手伝ってくれるらしい。
「二人とも、ありがとう。でも、また生えてくるように根は残して欲しいな」
すると二人は、茎にかじりついたり、チョップをしてみたりと切り取ろうと奮闘している。
まあ、二人には難しいかもなと思ったけど気の済むまでやらせようと私は自分の作業に戻った。
すると背後で、ジュッという音が二つした。
「え?」
振り返ると薬草の葉を持った二人が得意げに浮いていた。葉の切り口を見てみると焼け焦げている。
「雷はともかく光でどうやって焼いて?……まあ、いっか。二人ともありがとう。この調子で頑張って貰えると助かるよ」
二人は任せておけと、それから一生懸命に袋に薬草を詰めていった。
私も負けてられないなと、手を伸ばして草を掻き分けたところ、そこにはハッパが生えていた。
「ぬわっ!?……ああ、ビックリした。ハッパかぁ」
ハッパはコクコクと頷くと、埋まっていた下半身を引き抜いた。そしてジーッと置いてあるウクレレを見つめる。
「ごめんね、薬草を集め終わったらまた弾くからそれまで待ってね?」
するとハッパはコクッとうなづくと、切り取られた薬草に向けて手をかざし、ほんわりと光った。
薬草はみるみるうちに葉を伸ばして切られる前の状態に戻っていた。
「あ、ハッパも手伝ってくれるの?ありがとう。すごい助かる」
そこからは早かった。みるみるうちに薬草で膨れていく袋。
パンパンにした後は、夕方まで曲を弾いて過ごした。ミドリはやり遂げた顔をしているし、踊っていた二人もご満悦そうだった。
私もガッツリ演奏したのでココしばらく弾けてなかったフラストレーションが解消できた。
「ビィさん!無事戻って来られたんですね!良かった。すごい心配したんですよ……」
「え、薬草集めの依頼でしたよね?ドラゴン討伐とかじゃなかったですよね?」
「もう少し遅かったら救援依頼を出そうかと……」
「薬草集めで!?徒歩2時間しない場所で!?装備でケガしないって実演したじゃんか」
「ケガはしないかもですが、あれだけ貴重な装備をお持ちですからね、攫われて身ぐるみ剝がされる可能性が出てきました」
「いや、私の後見人ティーリスさんだよ?それを敵に回そうとか、普通しないでしょ?」
「少し考えればその通りなんですが、どこにでも常識が通じない人が1,2人はいるものです。あなたみたいに」
「そう。まあ、気を付けるよ。はい、これ集めた薬草」
私は受付のカウンターに薬草の入った袋を置く。
「わ、たくさんありますね。こんなに生えてました?」
「ええ。たまたま」
「ま、多い分には問題ないです。無事依頼達成ですね。それとF級に昇格です」
「え、こんなんでいいの?」
「はい。G級はちゃんと冒険者活動をしたかどうか、区別するためにありますから」
「なるほどー。ちなみにダンジョンの許可ってどこから?」
「D級からですね」
そっかー、まだまだ先だなぁ。




