地下巨大施設
巨大地下施設 その1
「痛ってーー!!」
下へ落ちた拍子に頭を何か固いものでしたたかに打った。
正直、気を失いそうだった。
眩暈がまだ酷かった。
一体。どれだけ落ちるんだよ。
吐き気も酷い……。
「く、暗くて前が見えんよ……ここ、どこだろ?」
倒れた状態では仕方がないので、取り敢えず立ってみた。
痛めた頭は天井などにはぶつかっていない。
涼しい風が西の方からビュウビュウと吹いていた。
「うー、なんか肌寒いな」
耳をすませば風の音以外にも何かの駆動音が聞こえ、遥か西の方から明かりが点いた。
「こ、ここは……ルーマニアにあるサリーナ・トゥルダみたいだな……いや……岩塩抗だ……」
大きな観覧車や至るところに線路が伸びていた。
風の音は強くなって寒さが増した。
無人のテーマパークのような岩塩抗。
そこは巨大地下施設だった。
「こんなところに……一人で……冗談じゃなねえーーー!! 電話繋がるかよ!!」
慌ててパイプクリーナーと工具箱を投げ出して、携帯電話を取り出した。
予想していた通り電波は圏外だった。
「飯は?! トイレは?! そんなのあるかってんだ?!」
勢い携帯電話を地面に叩き落そうとして、思い止まった。
誰かいるかも知れない。
「はあ、なんなんだよ。風呂もねえし」
パイプクリーナーはここで捨てて、念のため工具箱を持つ。
愚痴をいいながら、仕方なく西の方の明かりへと歩いて行くことにした。
地面は線路が複雑に絡まっていて、歩きにくい。
時々、足を取られた。
西の方から吹く涼しい風は、今では北風のように寒いだけとなった。
数ある観覧車の一つの前で立ち止まった。
観覧車の下には、大きな染みができていた。
「うん? この臭い……??」
たまに嗅ぐ臭いだった。
それも腐っている。
恐る恐る上を見ると、観覧車のゴンドラの一つにある窓からは、人間の捻じれた顔と肩がここから覗けた。それは元は一人の人間だったのだろう。恐怖の表情をしているその顔には、あらぬ方向に肩がめり上がっていた。
「ひっ!!」
声を立てて、その場で腰を抜かした。
まるで、悪夢だ。
俺は、今はまだあの降りる部屋の上で、気を失って倒れているのだろうか?
巨大地下施設 その2
「うん?」
ぼくは寒さで気が付いた。
どうしても寒さ以外でも震えてしまうけど、思い切って目を開けてみた。
目の前には巨大な観覧車がそびえていた。
「ここは、夢の中?」
まだぼくは寝ているみたいだ。
早く起きないと、両方のほっぺたを数回叩くと、やっと目が覚めて来た。
やはり、観覧車が見える。
「?!」
く……臭い……。
鼻血の臭いに似ている。
嫌な予感がしてきて、吐き気が緩やかにこみ上げてきた。勇気をだして観覧車から遠ざかった。
ぼくは人を探しに複雑な線路の地面を、しばらく歩くことにした。
「あれ? 何か落ちてる」
土の地面にはパイプクリーナーがポツンと落ちていた。
「誰のかな……?」
ぼくはパイプクリーナーを持って、再び歩くことにした。
西の方からの駆動音が聞こえて来た。
徐々に大きくなるその音は、まるで……。
「な……何?!」
こっちへ来る!
手にしたパイプクリーナーを強く握って、元来たところへ走った。
「車に轢かれそうーーー!!」