こどもという名の悪魔
背の高い人が赤ん坊を見せてきてこれが悪魔だと言った。
何かあると悪魔がささやきそそのかすのだと言った。
その人は背が高いので神様みたいだと思った。
悪魔がささやいたとき、わたしは思わず泣き出しそうになった。
その人はやさしく言った。大丈夫、大人になるよ、と。
その人は大人だと思った。
だれかがそそのかされたとき、わたしはその人の言葉を想った。
大丈夫、大人になるよ。
そのときわたしは大人だと思った。
わたしが大人の年齢になったとき。
背の低いこどもたちがじゃれるのを見ていたが、そこに悪魔は見えなかった。
かつて神様と思ったその人は、大事そうに、木彫りの赤ん坊をかかえていた。