是非欲しいです!
「うーん、どんなのがいいかしら……」
オリヴィアは自室の机に座りどうしようかと悩んでいた。
というのも、エマへのお礼にブレスレットを交換するという事で作り出そうと思ったのだが、どうにもいまいちしっくり来るデザインが決まらない。
「一応お礼な訳だし、ちゃんとエマが喜ぶ様な物にしたいんだけど……」
そもそも、今まで友達とかに手作りのものをあげた事がない。
ダルシーとも特に何かプレゼント交換とかした事なかったし、この前エマにあげた誕生日プレゼントは私が今まで作っただけで使ってないハンカチを渡しただけだから、一から考えて作るというのは初めてだ。
母には勿論手作りのものを渡したりするけど、母の好みは大体知っているから作りやすいし。
「そう考えると、私あの兄弟たちの好みなんてろくに知らないわね……」
まあまだ知り合って1年も経ってないのだから当然といえば当然な気もするのだが。
「エマに直接訊いて……て言ってもちゃんと答えてくれるかしら?」
エマの事だから私が作ったものなら何でも嬉しいとか言いそうだ。
そう言われるのはありがたいではあるのだけれど、お礼なのだし、どうせ渡すならちゃんと好みのものを渡してあげたい。
「……他の兄弟に訊いてみるか」
それから私はルーカスの部屋を訪ねた。
「オリヴィア様! どうされました?」
私の訪問がそんなに嬉しかったのか、ルーカスは目を輝かせながら尋ねてくる。
「実は、訊きたいことがあったのだけれど」
「訊きたい事ですか? 是非とも何でも訊いてください!」
ルーカスはそうとう頼られた事が嬉しかったらしく、まるで犬が尻尾を振って喜んでる様だった。
そういうところがやはり犬っぽいなと思ってしまう。
「エマがどういうのが好きか知ってる?」
「へ? エマですか?」
ルーカスは思ってもみなかった質問が飛んできてキョトンとする。
「それは何故ですか?」
「まあエマにちょっとプレゼントを渡そうと思って」
ここで色々と事情を訊かれると面倒なので、取り敢えず端折って説明する。
しかし、それを聞いたルーカスの表情が曇りだした。
「エマにプレゼント、ですか?
誕生日にも渡してましたよね?」
「まあ、それとは別にちょっとね」
「オリヴィア様……。
まさか、エマと恋仲になったのですか!?」
「は?」
物凄いベクトルで勘違いされてしまった。
「違うわよ」
「で、でも! オリヴィア様が誕生日だとかの理由でなく人にプレゼントを渡すなんて!」
確かに、私は普段プレゼントなんて渡す様な柄ではない。
しかしこのまま誤解されると面倒なので、ある程度濁して説明する事にした。
「いや、今女の子たちの中で手作りの物を交換するというのが流行ってるらしくて、それをエマとするだけよ」
「それなら俺とも交換しましょう!」
「いや、あんた何か作れるの?」
ルーカスが裁縫やら編み物をしている姿が想像出来ない。
「はっ! 何も作った事がない!」
「そりゃそうでしょうね」
「ならこれから頑張ります!」
「いや、何でそうなる?」
私ははぁ、と溜め息を吐いた。
本当にルーカスは抜けてるというか、天然というか……。
「女の子同士の流行りなのにあんたが作ってどうするのよ?
それはそうと、エマがどういうのが好きなのか訊きたいんだけど」
ルーカスはやっと真面目に考えだした。
「エマの好きなもの……。
そうだな、花ならチューリップが好きで、動物ならネズミが好きだったな、確か」
「ネズミ?」
ネズミって普通害獣扱いされるのだが、そんなのが好きなのか?
「ああ、エマはあの猫とネズミが追いかけっこするアニメが好きで、それの影響だと思います」
「ああ、アニメの方のネズミね」
それなら納得出来る。まあリアルな方のネズミも可愛いと言えば可愛いだろうけど。ハムスターとか。
それにしても、ルーカスはやはりちゃんと妹弟の事を見てるんだなと感心する。
「ルーカスってやっぱり兄なのね」
「え? まあ兄ですけど……?」
私の呟きにルーカスは不思議そうな顔をする。
「チューリップにネズミね、ありがとう。参考にしてみるわ」
「ああ、また何かあったらいつでも頼って下さい!」
ルーカスは嬉しそうに笑う。
「そうね、また何かあったらね」
そう言い残し私は部屋を出ようとしたのだが。
「あ、待ってくれ!」
突然ルーカスに呼び止められた。
「何よ?」
「俺も、オリヴィア様から手作りの物が欲しい!」
何だか面倒な事をお願いされ始めた。
「えー……。じゃあ今度の誕生日にあげるわよ、それでいいでしょ?」
「いや、まあ誕生日プレゼントでもありがたいのだが、その、今回のエマみたいに何もなくても欲しいというか……。
交換とは言えオリヴィア様の手作りブレスレットを貰うなんて羨ましいというか……」
「ちょっと面倒だからそれは却下」
「そんなぁ!?」
ルーカスはまた露骨に落ち込む。
「俺も何か欲しかった……」
「あー、それなら刺繍のし過ぎて有り余ってるハンカチでいいならあげられるけど?」
それを聞くや否やルーカスはすぐ様その条件に飛びついた。
「本当ですか!? 是非欲しいです!
家宝にします!」
「いや、家宝にしなくていいから。
じゃあハンカチは後で渡すわ。それじゃあまた」
「はい! また後で!」
それから私は喜んでるルーカスの元を後にして次はノアの部屋へと訪れた。
因みにネコとネズミのアニメはあの有名なアニメの事です。
大人になって見てみても面白いです。
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