面白い子
アデックは内心焦った。
いやドキンって何だよ俺の心臓、俺の意思に反していきなり脈動の仕方変えるな。
ときめいたかもって勘違いするだろ。
大体女の笑顔なんて作り笑い含めて目が腐る程見てきただろうが。
この笑顔だってオリヴィアには他意はない訳なんだ。
そして悪気もない。
俺はオリヴィアの頭をぽんぽんと撫でた。
「まあ、頑張って強く生きろ」
「?
ありがとうございます」
急に頭を撫でられたのを不思議そうにするも、もうその話題が終わっただろうとオリヴィアは猫とじゃれ出した。
こいつ、俺の事途中から王子としては見てないよな?
そんな風にアデックは考えた。
それから暫くして、オリヴィアは帰る支度をしていた。
馬車に乗る前にアデックが見送りに来る。
「じゃあ、また何か面白そうになったら呼び出すから」
そう言われオリヴィアは引き攣った笑顔を見せる。
「後、何もなくても猫見に来るくらいならいつでも来ていいから」
そう付け足すと、先程の表情とは打って変わって満面の笑みになる。
「え!?
猫だけ見に来てもいいんですか!?」
「いいけど、その場合俺と喋る気は一切なさそうだな」
そう俺が嫌味の様に言うと、ばつが悪そうな顔をする。
「いや、そう言うつもりで言ったわけでは!」
とオリヴィアは慌てて否定する。
「それじゃあまた」
「あ、はい、また」
そう言ってオリヴィアは帰っていった。
俺は部屋に戻ってベッドに腰掛けて考える。
「ふーむ」
もしオリヴィアが男好きか金好きで、その為に男性を誘惑してるというのなら、ルイスを諦めさせる為に俺が釘を刺そうと思っていたんだが。
「面白い子だったな」
オリヴィアは恐らく男性に好かれる事なんて狙っていない。
本人は警戒しているつもりなんだろうけれど、いかんせん隙があるんだよなぁ。
あれは確かにルイスもルーカスもノアも、もしかしたら女のエマだって落としてるかもしれない。
ただ、本人が無自覚なのが一番厄介である。
気をつけろと言った所で、そもそも分かっていなければ気をつけようもない。
しかしこのままでは、誰も報われない。
「無自覚を自覚して貰うにはどうすればいいか……」
俺はそう遠くを見つめて考えてると、ドアがコンコンとノックされた。
「何だ?」
俺がそう声をかけると、メイドが1人入ってきた。
このメイドは俺が生まれた頃からいる1番古株のメイドだ。
歳はもう40を過ぎているが、まだまだ現役で働いてくれている。
「アデック王子、夕食は如何なさいますか?」
「どうせ今日も両親は働きに出てるんだろ?
なら俺はこのまま自室で食べるから持ってきてくれ」
そう俺が答えると、メイドがクスクスと笑っていた。
「ん? 何かおかしなことでもあったか?」
俺が尋ねるとメイドは微笑みながら答えた。
「いえいえ、アデック王子がいつも以上に楽しそうなので」
そう言われ、俺はふと窓を見やる。
窓には唇が綻び、笑っている俺が映っていた。
「そうだな……。
中々に楽しかった」
そう言うとメイドは満足そうに部屋を出て行った。
恐らく俺がオリヴィアを好きになったと勘違いされたかもしれない。
俺が前付き合っていた女性と別れてからは、もうその後誰とも付き合っていない。
確か18歳の時だから、今から3年前か。
婚約もしていたのだが、結局別れてしまった。
恐らく周りは早く俺が誰かと結婚して次の世継ぎをと思っているのだろう。
だが、流石に昔からの馴染みで兄弟の様に仲の良かったルイスの想い人に本気で手を出す訳にはいかない。
「はあ、俺はただ面白ければ何でも良いのだが」
そうアデックは1人呟いた。
一方、オリヴィアは家に帰ると他の兄弟達から案の定質問攻めにあっていた。
「オリヴィアちゃん、大丈夫だった!?」
「何か変なことされてないだろうな!?」
「オリヴィア姉様、心配しましたよ!」
私は3人を見て思わずホッとする。
はっきり言ってアデックとの会話は本気で緊張したから、何だか3人のこのやり取りが安心してしまった。
「大丈夫だったわよ。
普通にお喋りしただけで、特に何でもないから」
「お喋りって何を話したの?」
そうエマが訊いてきて私はうーんと悩む。
「何だろう、人生相談? 教訓? 的なものかしら」
一体どんな話だったのだろう……?
3人の中で全く同じ疑問が生まれた。
「まあ何事もないなら良かったよ」
そうルーカスは胸を撫で下ろす。
「これ以上ライバルが増えると厄介ですしね、しかも王子なんて」
そうノアもニコニコと話す。
「まあ、何はともあれやっぱり自分の家が1番ね」
そうオリヴィアが言うと、3人はニヤニヤと笑い出した。
「オリヴィアちゃん、やっとここの家に慣れてくれたのね!」
そうエマが抱きついてくる。
「いや、だから王室のお屋敷何かよりよっぽど落ち着くっていう意味で……。
って何でみんなにやけてるのよ!?」
そうオリヴィアが叫ぶも、みんな生暖かい目でオリヴィアを見ている。
「あーもう!
言うんじゃなかった!」
そうオリヴィアが怒るも、エマは両手をギュッと握りしめてきた。
「うふふ、そう怒らないで。
みんなそう言ってもらえて嬉しいんだから!」
しかし、どうにも小っ恥ずかしい。
私は結局逃げる様に自室へと入った。
「はぁ、全く、油断するとすぐあれだわ」
そこでふとアデックの言葉が頭をよぎる。
「隙を見せるな、少なくとも男の前では警戒しろ……か」
オリヴィアとしては別に隙を見せてるつもりはないし、警戒だってしているつもりだ。
でもそれでは足りないという事なのだろう。
「うーん、分からない……」
きっといつもの様に分からない事を考えるのはやめよう、では、きっと駄目なんだろうと分かっている。
「はあ、取り敢えず気をつけてはみよう」
考えた末、結局行き着いた先はそこしかなかった。
ご覧の通りアデック王子も面倒臭い側の人間です。
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