恋愛とは?
ノアと付き合ってるフリ騒動から1週間ほど過ぎた日のこと。
私は今日も蝶々の飾りがついたネックレスをして図書室で読書に耽っていた。
といっても、他の3人はそもそも読書があまり好きではないらしく元々誰もここに来ない為、私はゆっくりと読書を堪能することが出来た。
そのお陰で図書室は私にとって数少ない心休まる場所の1つでもある。
「ふぅ、この本も読み終わってしまったわ。
次はどれにしようかしら?」
私はよく伝記物、歴史物を読むのだが、本を探している最中に一つ気になる本が目に飛び込んできた。
「恋愛もの……?」
それは、私が普段良く読む伝記物の著者が書いた恋愛物の本である。
「この人、こんなものも書いてたんだ」
本のタイトルはそのまま恋愛物語と至ってシンプルなものだった。
「普段恋愛物に興味はないけど、この著者の考え方割と好きだし、気になるわね」
私はその本を手に取りページをめくる。
そこには、この著者の恋愛観というものが書かれていたのだが、どうやらこの人は、「人を好きになるという状態」が分からず、それを科学的に解明しようとしたらしい。
「へぇ、恋愛科学ね」
そして、本の中にはいくつか例題として、短編的な恋愛の物語がそれぞれ記されていた。
一目惚れのパターン、段々と相手が気になり始めるパターン、相手からアタックされてから自分も気になるパターンなど、それぞれを根拠的に話していく為中々に読み応えがある。
何というか、普通の恋愛物ならただ登場人物が誰かを好きになって、最終的に両想いになっておしまいなんてものばかりだが、こちらはその状態のことを詳しく書いている感じだろうか。
この時の主人公の脈拍はいくらで、この行動後更に脈拍が上がったとか、一目惚れの衝撃は雷に打たれたと思うくらい強いとか、相手に好きだと言われ続けるとある種の暗示に囚われ自分も意識しだすとか、恋愛経験のない私でも分かりやすく論理的に解説してくれている。
そして、著者の様に全く響かない人もいるという事。
私もその1人なのだろうか。
ふと、シーラの言った言葉が蘇る。
ーールーカス様と一つ屋根の下で暮らしていて、何も思わないなんて!
確かにルーカスの顔はカッコいいと思う。
しかし間近で見たからとて心拍は上がらない。
性格が駄目だからなのだろうか?
そういえば、ノアには頬にキスされたっけ、と自身の頬を撫でる。
……。
思い出しても、何とも思わないのは、ノアがまだ幼く見えるからだろうか?
後、エマにはよく抱き付かれるが、勿論脈拍などあがらない。
女同士だから、まあ当然といえば当然か?
ふと、私は昔誘拐されかけた時に助けてくれた少年を思い出す。
栗色の髪に青い瞳、まだ幼いせいかカッコいいというよりはかわいいと形容したくなる顔立ち。
お礼を言ったらそっぽをむかれてしまったっけ。
今となっては、命の恩人である彼に、いつかしっかりとお礼をしたいと思っていた。
でも、もうあの少年も大分大きくなってるんだろうな、と私は少年の大人になった姿を想像する。
普段私は答えの出ないものを考えるのは好きではないが、少年のことを想像するのは何だか楽しい。
「もしかして、これが恋かしら!?」
そう思い自分の手首で脈を測るも、特に変化が分からない。
まあ、昔に一度会っただけの少年に恋をしていたら、それは何だかロマンチックではあるがなんとも現実味にかける。
また会えるかどうかも分からない、名も知らない相手だし。
そう考えると、オリヴィアは一気に考えるのをやめた。
「はぁ、何だか冷めたわ。
やっぱり私には恋愛はよく分からないわね」
私が独り言を呟いていると、母が図書室へと入ってきた。
「あら? 恋愛の勉強中だったかしら?」
ニヤニヤと母が尋ねてくる。
「違うわよ。たまたまいつも読んでる著者の人が恋愛物を書いてたからどんなものか読んでみただけよ」
すると母も、その「恋愛物語」を手に取りパラパラとめくり出した。
「は~ん、なるほどねー。
この本を書いた人、凄く冷静に分析して恋愛を書いてるのね。
まるであんたみたいね」
母は私を見ながらそう話す。
まあそれは私も思ってはいたが。
「まあ、母さんとしては、オリヴィアが幸せにさえなってくれれば恋愛をしようがしまいが関係ないんだけどね。
あ、でも出来れば孫の顔は見たいけどなー?」
「大丈夫よ母さん、私が結婚出来なくても他の兄弟の誰かしらが結婚してくれれば孫が出来るわよ」
私は母の冷やかしにそう冷静に返す。
母はそういうことじゃないんだけど、と少し不満気だった。
「まあ、まだ14歳だし、これから誰かにドキドキして、眠れないなんて甘酸っぱい経験が出来るかもね♡」
「ところで何で母さんは図書室なんかに?」
母は恋愛話が大好きな為話が長くなりそうなので私はわざと話を逸らす。
「あ、そうだった。ジョンに頼まれて昔の戦争の歴史の本を探すんだったわ」
「戦争物なら、あっちの棚よ。
右に行くにつれて古い年代になるから」
そうして母は何冊か本を持って、急いで戻っていった。
相変わらずそそっかしい人だなと思いつつも、母は誰にでも愛嬌が良くて、愛されやすい。
私とは真逆だなと思う。
「はぁ、ドキドキして眠れないなんて、実際あるんだろうか……」
恋愛に興味がないわけではないが、かといって無理矢理するものでもない。
考えても想像がつかないので、私はそのまま別の本を読む事にした。
その後、オリヴィアは気付いたら2時間以上も図書室にこもっていた為、3兄弟に時間が過ぎてるといつもの様に追いかけられたとさ。
果たしてオリヴィアが今後誰を好きになるのか……。
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