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甘いものはお嫌いでしたか?

 前回までのあらすじ。


 オリヴィアは助けてもらったお礼にクッキーを焼いてみんなに配った後、アデック王子にとあるお願いしていた。

 そしてアデックは嫌々ながらもそのお願いを叶えるべく、オリヴィアと2人で変装して汽車へと乗り込んだのだった。


「いいかオリヴィア、今回俺は極秘でお前の付き添いをやる事になったから、絶対王子って呼ぶなよ?

歳の離れた兄妹っていう体にするから、俺の事は兄さんなりお兄ちゃんなり好きな様に呼んでくれ」


 出発前、アデックはオリヴィアにそう忠告した。


「分かりました。気を付けます。


しかし、まさかアデック王子が直々に付き添いになってくれるとは」


 てっきり、王室の家来か誰かが付き添いになるのだろうなと予想していただけにオリヴィアは驚いていた。


「まあ、他に適任が居なかったというか、うまく仕組まれたというか……」


「仕組まれた?」


「いや、こっちの話だ。


それじゃあ早速行くぞ妹よ」


「あ、はい。

アデッ……じゃなくて兄さん」


 そうして2人は今汽車に乗っているのだが。


「あー面倒臭い……」


 アデックは汽車に乗って席に着くなり持ってきていた仕事の書類を眺めて溜め息を吐いていた。


「その、私が訊くのもアレですが、私の付き添いになって大丈夫だったんですか?

仕事が溜まっていたのでは……」


 オリヴィアはそんなアデックを眺めながら申し訳なさそうに問い掛ける。


「あ?

ああ、お前が気にする事はないぞ。

寧ろ屋敷で1人寂しく書類を眺めるよりはこうして外でお前と喋りながらの方が楽しいし。


それに……今の時期はどんなに仕事をこなしても次から次へと仕事が溜まるから現実逃避もしたかったし」


 アデックは窓の外から見える景色を遠く眺めながらそう答えた。


 どうやら、忙しい時期だった様だ。


「その、色々と大変そうですね」

「本当だよ、まあ大変とは言っても基本的には書類を読んでその意見にOKかNGか出してサインする簡単なお仕事なんだけどさ。


あ、どうせならお前俺の筆跡真似てサインしていってくれないか!?」


 アデックはナイスアイデアと言わんばかりに提案する。


「何言ってるんですか。

そんな偽造まがいな事駄目なんじゃないんですか?」

「うーん、良いアイデアだと思ったんだけどなー」



「季節限定の冷たいジェラートは如何ですかー?」


 そんなやり取りをしている横で、汽車の中で車内販売しているお姉さんが通りがかった。


「あ、すいません。

ジェラート1つ」


「お買い上げありがとうございます。

どうぞ~」


 アデックはお姉さんを呼び止めてお金を渡してジェラートを購入した。


 そしてお姉さんはスッとコーンに乗ったジェラートをこちらへと差し出してくる。


「ほら、受け取れよ」


「え?

あ、はい。どうも」


 私はアデックにそう言われてお姉さんからジェラートを受け取った。


「俺が仕事している間退屈だろ?

夕食の時間までまだあるし、それでも食っとけ」


 アデックは相変わらず書類を見ながらそう素っ気なく話す。


「え?

あの、でもお金は……」

「俺の奢りだから気にすんな」


「えっと、あ、ありがとうございます……」


 私は戸惑いつつもお礼を言って、ジェラートを頬張った。


 しかし、まさか王子に奢られるとは。


 ただ、折角奢ってもらったところ申し訳ないが、私1人で食べるには少し量が多い気がする。


「あの、アデ……じゃなくて、兄さんも食べませんか?」


 私が恐る恐る尋ねると、アデックは書類に目を向けたまま返事をする。


「俺はいい。

手が汚れるの嫌だし、書類汚したらまずいし」


 確かに、このジェラートは持ち手がコーンになっているので、どうしても手が汚れてしまうだろう。


「なら、食べさせましょうか?」

「は?」

「はい、どうぞ」


 私はそう言ってアデックの顔の近くにジェラートを持っていった。


「いや、いいって。

お前の為に買ったんだし」

「でも、量が多くて私1人だと食べきれないと思うので」

「それなら残せばいいだろう?」

「そんな罰当たりな事出来ませんよ。


それに、早く食べてくれないと溶けて書類にかかりますよ?」


「分かったよ!

食えば良いんだろ食えば!」


 私にそう言われてアデックは少し慌てつつジェラートをパクリと食べる。


「……甘い」

「甘いの嫌いでしたか?」


「別に嫌いではないけど……

というか、お前こういう事平気でするんだな」

「こういう事?」


「食べさせたりとか、気にしないのか?」


 アデックに問われて私は少し考える。


「まあ普段は別にしませんけど、今回は状況が状況だったので」


「状況って、そこまで無理して俺に食べさせんでも」


「だって、残したら勿体無いし、それに買ってもらった本人目の前で残すなんてしたくないですし」


「まあ、それもそうだけど」


 かと言って照れもせずにそういう事されるとこっちが逆に意識してしまいそうで困るんだよなぁ。


 流石に21にもなってあーんだの間接キス如きで騒ぎたくはないんだが。


 俺はこいつを好きにならない様にしなくちゃいけないのに、こいつはそんな人の気なんて知りもせずに……。


「……はぁ」


 いや、今は仕事の書類に集中しよう。


 俺は無理矢理思考を仕事の方へと持っていった。


「しかし、オルトレアまでやっぱり大分時間掛かりますよね」


 オリヴィアは窓の景色を見ながらそう呟く。


「まあそうだな。

というかあんな一件があってまたすぐオルトレアに行きたいと言いだすなんてそっちの方が俺は驚きなんだが」


 アデックにそう言われてオリヴィアも少し苦い顔で答える。


「本当は行きたくはないんですけど、どうしても確かめないと気が済まないというか……。


それに、失恋した後は傷心旅行をするものだと前に読んだ本に書かれていたので個人的にはそれも兼ねてます」

「普通傷心旅行は失恋した相手と行くものではないんだけどな」


 オリヴィアの発言にアデックは的確に突っ込んだ。


「しかし、良く他の家族も許してくれたよな」

「勿論最初は反対されましたけど、ハワード子爵に王室から護衛を付けてもらうという条件付きで許してもらえました。


まあ、他の3兄弟にはめちゃくちゃ止められましたが」

「そりゃそうだろうな」


 それを聞いて俺はあの3人が必死に止める様が目に浮かぶ。

 想像出来すぎて逆に面白い。


「今朝までずっとそれなら自分達も行くって聞かなくて、朝3人を置いて出発するのが凄く大変でした」


「まるで飼い犬が飼い主のお出掛けを寂しくて妨害しているみたいだな」


 そんなアデックの例えが的確過ぎてオリヴィアはふふっと笑っていた。


「確かにそうですね」

「ま、あんまりみんなを心配させる様な真似はするなよ?」

「分かってますよ」


 笑顔でオリヴィアは答えるも、内心全然分かってなさそうだなとアデックは苦笑いした。

 車内販売って憧れます。

 いつか汽車の旅でもしてみたいなと思う今日この頃です。


 読んで下さりありがとうございます。


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