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兄心妹知らず

「ねぇ、どう思う?」

「流石にちょっと、ねぇ……」

「まあでも死ななければ大丈夫なんじゃない?」


 ある日、使用人たちがこそこそと何やら話していた。


「何を話しているのですか?」


 私がニコリと微笑みながら問い掛けると、使用人の1人が困った様に口を開く。


「……それが、国王様のご命令で、リーシェお嬢様の料理にこの粉を混ぜろと言われまして」

「見るからに怪しいですよね?」


「粉……」


 それが何の粉なのかは分からなかったが、意図は大体読めた。


 どうやら父上様は本格的にリーシェをオルトレアに閉じ込めておくつもりらしい。


「まあ、死ぬ様なものではないとは言っていたんですけれど」

「何だか怖い話よね」

「でも逆らう訳にもいかないし……」


 使用人たちは口々にそう言いながらも持ち場へと戻っていった。


 このままではまずい事になりそうだ。

 父上を止めなくては。


 そう思い私が父上の所へ行こうと向かっていると、側近になった元教師の男とでくわした。


「久しぶりですね、レイアン王子」

「エバレット、そこを退いてくれませんか?」


 エバレットと呼ばれた男はしかし私の言葉には応じなかった。


「レイアン王子、貴方は妹のリーシェ姫を疎ましく思っていましたよね?」

「……だからと言って、やり方が姑息すぎませんか?」


 レイアンは薄い笑みを浮かべつつもエバレットを睨む。


「まあそうかもしれませんね。

しかし貴方だって、リーシェ姫の才能をこのまま野放しにするのは良くないと思いませんか?」

「正直、私としてはリーシェの才能などどうでもいいと思っています。

どうせならさっさと結婚でもして出て行って欲しいくらいですね」


 レイアンがそう言い切ると、エバレットはやれやれと溜め息を吐く。


「貴方はもっと賢いお方だと思っていたのですが、教育が足りませんでしたかね?

そんな貴方に教えておきますが、貴方の父上はもうリーシェ姫を手放す気などありませんよ。


貴方が何を言おうともう手遅れです」


「……そうですか。

わざわざご忠告どうもありがとうございます」


 エバレットの言う通り、父上にリーシェに毒を盛るのをやめる様進言しても聞く耳など持ってくれなかった。


 それどころか、エバレットは広い人脈を活かして屋敷内の人達も従わせていたのだ。


 私一人でどうこう出来る問題ではなかった。


 せめて、リーシェと唯一仲良くなれたアデック王子に伝えなくては。


 彼ならもしかしたらどうにか出来るかもしれない。


 だがどうやって伝える?


 手紙に書いたとしても恐らく検閲されるだろう。


 それに、彼は私やこの屋敷の人達のリーシェに対する態度を快く思ってはいない。


 そのせいで屋敷に来る事はあまりないのだ。


 普通にお茶に誘うだけの手紙を出したとしても断られるのは目に見えている。


 なんとかしたいのに、どうしたって私は非力だった。


 それから約1年、たまたまリーシェが風邪を引いてアデック王子が見舞いにやって来た。


 ここしかチャンスがないと思った。


 私は皮肉も混じえてアデック王子にリーシェをオルトレアから追い出す様に頼む。


 アデック王子も私の事を嫌いながらも私の提案通り動いてくれた。


 しかし、アデック王子でもどうする事は出来なかった。


 本当はリーシェが毒を盛られていると直接言えば、もっと結果は変わっていたのかもしれない。


 しかし、屋敷の者が何処で聞き耳を立てているか分からない以上、直接伝える事が出来なかった。


 屋敷の者は大半はエバレットの味方だから、もし何か私が言おうとしたらすぐに止められてしまうだろう。



 それから、リーシェは日を追うごとに毒に侵されていった。


「悪い事は言いません。

屋敷で食事を摂るのはやめなさい」


 私はついにリーシェにそう告げた。


 もう、妹の弱る姿を自分が見ていたくなかったのだ。


 しかし、妹はまるで何も気にしていないかの様に口を開いた。


「毒の事ですか?

別に致死量は入っていないので、問題ないですよ。

それに、私が屋敷で食事を摂らなくなれば怪しまれるでしょう?」



 薄々思ってはいたのだが、やはりリーシェは毒に気が付いていた様だ。


 気付いていて、尚これまで平然と食べていたというのか。


「な、ぜ……」


 怖くなった。


 目の前にいる妹という存在が、怖くて堪らなかった。


「何故?

まあ、兄上様にはきっと分からないでしょうね。

ただ、私の邪魔だけはしないで下さい。

兄上様はこれまで通り、ただの傍観者で居てくれたらそれだけでいいのですから」


 妹のその発言を聞いて、私はそれからリーシェと関わる事をやめた。


 彼女は狂っている。


 そんな彼女に関わったら、私まで気が狂ってしまいそうだった。


 それからリーシェは結局毒で死んだ。


 しかし、私はすぐに勘づいた。


 彼女の料理に混ぜられた毒の量では彼女は死なない筈。


 つまり、自分で毒を複製して致死量を飲んだのだろう。




 そんなの、もう自殺じゃないか。




 私は、結局最後の最後までリーシェの考えが分からなかった。



 これが、妹の望んだ結果なのだろうか?


 リーシェは、本当はアデック王子と結婚したくなかったのか?


 それとも、結婚出来ないならと諦めて亡くなったのか?


 私は、どうすれば良かった?


 彼女に言われるがまま傍観者であり続けた私に、何か本当は出来る事があったのか?


 考えても分からない。


 ただ、妹を見殺しにした自分に、酷く落胆していた。


 私は、最初から最後まで、結局良い兄になどなれなかった。


 ただ、苦しかった。


 妹が死んで、悲しまなくてはいけないのに、ホッとしてしまう自分が、憎くて堪らなかった。




「嗚呼、嫌だ」





 こんなに汚い自分が、嫌で嫌で仕方がなかった。


 こんな私が、いずれ国王になっても良いのだろうか?


 こんな私が、幸せになどなれるのだろうか?


 こんな私が、罰せられる事がなくて良いのだろうか?





 こんな私が、生きてても良いのだろうか?

 レイアンも割と可哀想だったりします。


 後、今更ですがアデックが最初黒髪黒目と書いてましたが黒髪金目に直しました。

 理由は黒髪黒目キャラが多すぎたからです。


 突然の変更申し訳ございません。


 読んで下さりありがとうございます。


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