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大好きな王子様

 それから、私はアデック様の事ばかり考える様になった。


 私にとって、アデック様が私の生きる原動力となっていたのだ。


 彼に私の記憶力の事を伝えると、彼は案の定凄いと感心してくれた。


 今まで他の人達にこの事を話すと、口では凄いと言いながらも、私の事を気持ち悪がる人が多かった。


 アデック様も勿論少しは気持ち悪いと思ってはいるけれど、それよりも純粋に凄いと思ってくれている事が嬉しかった。




 それから私の兄上のレイアンとアデック様が初めて会った時、アデック様はどうやら私が普段周りからどういう扱いを受けているか察したらしい。


 正直私にとってはアデック様以外の人に微塵も興味がないし、無視されようが嫌がらせを受けようが何とも思わないのだけれど。


「……生き辛そうなやつ」


 でも、アデック様が私を心配してそんな事を言ってくれるのが堪らなく嬉しかった。



 アデック様と知り合って2年程経ったある日、私は国王である父上に呼び出された。


「リーシェ、実はお前に訊いてみたい事があったのだが」


「なんでしょうか?」


「実はな、我が国をもっと良くしたい、今より発展させたい場合、どうした方がいいかを色んな者から訊いて回ってたんだ。

まあ、学の無いお前には少し難しい話かもしれないが、意見を聞いてみようと思ってな。

小さな事でも構わないぞ」

 

 父上は相変わらず女性である私を見下しているらしいが、別にそんな事で怒りの感情も特に湧かない。


 それよりも、今まで私から意見を聞く事などなかったのに。


 恐らく、この前父上の側近になった者が入れ知恵でもしたのだろう。


 その側近は昔から王室に仕えていて、私は殆ど顔も見た事がないが、前に兄上に勉学の指南などもしていたから私の事も兄上を通して知っていた筈だ。


 断った所で父上がへそを曲げるだけだし、それも面倒なので私は適当にアドバイスする事にした。


「そうですね、まずは異国の奴隷達の待遇をもう少し良くして、教育を受けさせて下さい」


「は? 奴隷に教育?」


 父上は私の言葉に耳を疑った。


「そうです。

そうする事でこちらの国の奴隷になれて良かったと錯覚させるのです。

教育と洗脳は紙一重ですから。

愛国心がある方が戦時中も団結しやすくなり指揮も取りやすくなります。


それから、他の国民達にも、学校を整えてみんなが最低限の教育を受けられる様にして下さい。


他所の大国は産業革命のお陰で大分オルトレア(うち)と知識の差が開いてしまってます。まずはそこの溝を埋めるのです」


「し、しかし、そんな大掛かりな事を急に言われてもなぁ……」


 父上は頭を掻きながら悩んでいる。


「何を仰いますか、お金なら有り余っているではありませんか?

国民から巻き上げている余分な税金を肥やしにしているのでしょう?」


 私の発言に父上はドキリとした顔をする。


「あっ、いや、あれは……」


「まあこれはあくまで私の意見ですので、参考にするしないは父上にお任せしますわ。

それでは私はこれで失礼致します」



 私は、あの父上は私利私欲の塊なので私の意見など聞き入れないだろうと踏んでいた。


 しかし、意外にも父上は私の言われた通り奴隷の待遇を良くして学校を新しく建てたのだ。


 それどころか、あの後度々私から意見を求める様になった。


「へぇ、どうやらあの側近が何やら裏で手を引いてるみたいね」


 まあ私にとってオルトレアが豊かになろうと廃れようとどちらでもいいので、大して気にする事もなかった。


 そんな事よりもアデック様の事の方が私にとっては重要だったのだ。


 そんなある日、ようやくその日がやって来た。

 

「アデック様、ご機嫌よう!」

「おー、あ、そう言えば、最近お前んとこの国、随分と羽振りがいいよな?」


 私はいつもの如くニコニコとアデック様に挨拶をすると、そんな事を尋ねられた。


 ただの一つの話題提供、ぐらいのつもりだろうけれど、これを機に少しアピールしてみる事にした。


「ああ、実は父上からこの国をもっと良くする方法はないかと尋ねられて、アドバイスしたら本当に父上がその通りにやったらしくて」


「え?」


 アデック様は驚いていた。

 それもそのはず、私の父は今まで私に無関心だったのに、急に私の助言を聞き出したのだから、アデック様も焦るだろう。


「お前、国王に助言したって事か?」

「ええ、そうなるわね?」


「……他にも色々と訊かれたりしなかったか?」

「そういえば最近は毎日何かしら訊かれるわねぇ」


 私は特に気にする素振りも見せずにそう答えた。



「アデック様、心配かしら?」


 私はニコニコと笑いながら確かめる様に問い掛ける。


「私はアデック様の婚約者で、ゆくゆくはノルトギアの王妃になる予定だし、だからもしアデック様が私の頭脳を使いたいなら、私はいつでも力になるわよ?」


 勿論この言葉は本気である。


 私の頭脳を父上が今利用しているのはどうでもいいのだが、アデック様の為なら喜んで力になりたい。


「いや、断る」


 しかし、あっさりと断られてしまった。


 まあ、アデック様は人の力をあまり頼ろうとしない人だと分かっているからそんなに驚きはしなかったが、やはり少し残念だ。


「え? それは、私が女だから?

政治に女は関わるなって事?」


 別にアデック様はそんな男だからとか女だからとか考えてないだろうけど、少しからかうかの様に訊いてみた。


「いや、別にそうじゃなくて、単純に好きな女に頼るのが悔しいというか……」


「好きな女?」


 その瞬間、私の心臓がドキンと跳ねた。


 顔や態度に出さない様に必死に隠すも、内心私は嬉しくて堪らなかった。


 この2年、私が待ち望んでいた言葉を、やっと彼の口から聞き出す事が出来たのだ。


 今まで生きてきた12年間の中で、こんなに嬉しかった日はなかった。


 ああ、今すぐ抱きしめたい。


 私も好きだと言って、彼を早く私だけのものにしたい。



 でもまだ駄目だ。


 アデック様はまだ私がアデック様の事を好きだと言う事に気付いていない。


 それに、アデック様はそんな私を好きになったのだ。


 だから私が簡単にアデック様を好きになってはいけない。


 ちょっとずつ、好きになる様にしなくては。


「アデック様……私の事好きなの?」


 私は早る気持ちをグッと押し堪えて確認する様にアデック様に訊く。


「……まあ、そうだな。

俺は、どうやらお前の事が好きらしい」


 するとアデック様は照れて赤くなっている顔を腕で必死に隠している。


 その姿が可愛らしくて愛おしくて堪らない。


 本当は今すぐにでも襲いたい衝動を何とか堪える。

 


「つまり、アデック様は、




私と子を作りたいという訳ね!」




「……


はぁっ!?!?


おまっ、なにいっtゲホっゴホッ!!」


 私がおどけてそう言うと、案の定アデック様は凄く取り乱した。


 私を意識している姿もやはり愛おしい。

 どうせならもう手を出してくれてもいいのだけれどなぁ。


 まあアデック様はそんなに簡単に手を出したりはしない事も分かってるしそんな所も大好きなのだけれど。


「アデック様、大丈夫?」


「ぜぇ、はぁ……あのな、お前、急に何を言い出してんだ?」


「何って、アデック様が私に発情して生殖行動をとりたいから求愛したのだと思ったんだけれど」


 ここはからかいの意味合いも込めてちょっとアデック様を翻弄してみよう。


「どんな解釈をしたらさっきの話の流れでそうなるんだよ!?」


 顔を真っ赤にして抗議してくるアデック様も堪らないなと思いつつ私は更にからかいを続ける。


「今私とアデック様は室内で2人きりという状況下で、その上で私に好意があると伝えてきたのは、すなわちそういう事なのかと」

「違うわ!! 拡大解釈が過ぎるだろ!?」


 必死に突っ込んでいるアデック様はやはりカッコよくて可愛らしくて愛おしい。


「アデック様……私の頭脳が欲しい訳でも、私の体目当てでもないという事は、一体何故私を好きになったの?」


 ちょっとからかい過ぎかなと思いつつも私はそう質問してみた。


「奇遇だな。俺も現在進行形で何故お前を好きになったのか頭を悩ませていた所だ」


 アデック様は頭を抱えながらそう返してきた。


 本当に何でこんなデリカシー0女好きになってしまったんだろうと考えているらしい。


 私としてはアデック様が興味を惹く理想の女性の様に振る舞っているのだから、そんな事考えても無意味な事なのになと思ってしまう。


 あーあ、早く私も好きだと伝えられたらなぁ。


「お前に言っても分からないだろうけど、理屈じゃないんだよ。

まあお前は俺の事なんて好きにはならないだろうけど……」


「私はアデック様の事好きよ?」


 私はなるべく本心を隠しながらサラッと言う。


 本当はもっと気持ちを込めて言いたいけれど、ここは我慢だ。

 

「あのなぁ、だからお前の言ってる好きは俺の言っている好きとは違うだろ?」


 しかし、私が好きと言った言葉にアデック様はドキドキしてくれているらしい。


 嬉しい事この上なかった。


「まあ、確かに私は父上や母上や兄上や、その他みんな好きだけど、でも、アデック様はみんなよりちょっと上よ?」


「ちょっと上って何だよ?」



「今まで、私はみんな同じくらいの好きだったのに、ちょっとだけみんなより好きになったのは、アデック様が初めてよ?」


 私は猫の様に笑いながら答える。


 どうやら、私がちょっとでも特別な気持ちが芽生え始めているという事をアデック様は嬉しいと思ってくれている様だ。


 早く私の気持ちを教えてあげたいけど、もし貴方に私の気持ちを全て伝えたら、どんな顔をするのかしら?


 いきなりだときっと引かれてしまうだろう。


 でも、いつかこの気持ちを貴方に伝えられたらと私は心の中で願った。

 政治的な事をなんとなく書いていますが、作者はそこまで政治にも歴史にも詳しい訳じゃないので生温かい目で見てって下さい。


 難しい話が苦手なのでリーシェの様な天才キャラは好きですが書くのに苦労します。


 読んで下さりありがとうございます。


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