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エマの決心

「うーん、中々情報が集まらない……」


 私はどうしたものかと首を傾げていた。


「大体あいつ人前で性格変えてるから、好き嫌いもキャラ作ってるとかだと厄介だな……」


「お悩みですか~?♪」


 私はまた後ろからの声にバッと振り返る。


 後ろにはニコニコとした表情のメアリーが立っていた。


「メアリー……」

「聞きましたよ~ノア様の誕生日プレゼントの為にまたみんなから訊き回っているらしいですね?

それで好き嫌いもキャラを作っていたら困る、と」


「あ、えっと、それは!」


 まずい、ノアから性格を変えている事は秘密にしてと言われていたのに!


 私はなんとか言い訳を考えようとするも、メアリーはクスクスと笑いながら話し出す。


「オリヴィアお嬢様、そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。

私は昔から気付いていますから」

「え……気付いて……?」


 私は困惑した。


「はい。そりゃあ産まれた頃からお世話してるのですから、当然知っていますよ?


あ、でも私がノア様が性格を偽っている事を知っているって事、逆にノア様は知らないので、内緒にしてて下さいね?♪」


 メアリーはニコニコと説明した。


「そ、そうなの……?」


「はい♪」


 ……何だか、メアリーが凄いなと思う。

 何というか、母親にはどんな嘘や隠し事もお見通し的な感じなのだろうか?


 兎に角、この人にだけは嘘も隠し事も出来ないのだろうなと思う。


「それで、ノア様の好きなものをお調べですよね?」

「ええ、まあ」


 私がメアリーの問いに答えると、メアリーはそうですね、と口を開く。


「ノア様の好きなものは、強いて言うならうさぎですかね?」


「うさぎ?」


 私は全く予想していなかったものが出てきて訊き返す。


「エマお嬢様は猫とネズミが追いかけっこするお話が好きなんですけど、ノア様はイタズラっこなうさぎの絵本が好きで、昔はよく読み聞かせしてたんですよね~」


「へぇ、そうなんだ」


 うさぎと聞いて何とも可愛らしい一面があるものだなと思ったが、あのイタズラ好きなうさぎだと聞くと妙に納得出来る。


「まあでも絵本を読んでいたのは小さい頃の話ですし、ノア様はある意味オリヴィアお嬢様以上にガードが固いですから、今何が好きかは私でも完全には把握しきれてないんですけどね。

今一番ノア様が大好きで手に入れたいものは分かりますけど」


「え? それって何?」

「さあ、何でしょうね~?」


 私が尋ねるとメアリーはニコニコとした顔ではぐらかしてきた。


「……それ、まさか私とか言うオチではないでしょうね?」

「さあ?

どうですかね~?

では私はもう仕事に戻りますので~」


 そうメアリーはニコニコとした表情のまま去って行った。


 あの表情は恐らく当たっているのだろうなと思う。


 それにしても私よりガードが固いってどういう事だ?


「私はノアより分かりやすいって事?

それだと何だか腑に落ちないけど……」


 しかし、私の好みもいつの間にかメアリーが把握しているのは確かだ。

 話した憶えはないのに、何故バレてるんだと不思議に思う。


「……まあいいわ。

うさぎ、ね」


 多分、これ以上訊き込みをしても他に良い情報は出てこないだろうと思う。


 それに、安直ではあるが今ので一つプレゼントを思いついたのでそれにしよう。


 ぶっちゃけ考えてる暇も無いし。


「はぁ、人へのプレゼントを考えるのって大変だわ……」


 きっと私は他の人の誕生日でもこうやって訊き回る事になるんだろうなぁと考えると少し頭が痛くなる。


 みんなはプレゼントとか選ぶ時どうするんだろう?

 やっぱりこんな風に調べなくともすんなり思いつくのだろうか?


「……まあいいや、もう後1日しかないし、さっさとプレゼント用意しよう」


 そうオリヴィアは呟いて自室へと向かった。



 一方、エマはノアの部屋を訪れていた。


「……」


「……あの、何ですか?」

 

「……」


「エマ姉さん?」


 エマはノアの部屋に入るなり無言でずっと居座っていた。


 どうしたのかとノアが訊いてもエマは喋らない。


 普段明るいエマが大人しい事にノアは戸惑いを隠せずにいた。


 急にどうしたんだろう?


 正直、こんなにエマ姉さんが大人しいのは初めてである。

 その大人しさが逆に怖い。


「……ねえノア」


 かれこれ部屋に来て5分ほど無言だったエマが、ついに口を開いた事にノアは少し驚く。


「っ!

な、何ですか?」


 なるべく平静を装う様にノアは返事をした。


「オリヴィアちゃんって、何であんなに優しいのかしら?」


「えーと……?」


 唐突のエマの問いにノアはどう返せばいいか分からずに言葉が詰まる。


「私、オリヴィアちゃんに告白したわ」


「え!?」


 ノアはエマの言葉を聞いて目を丸くして驚いた。


「そしてフラれたわ」


「あー、そうなんですね……」


 それからいつも以上に大人しいエマを見て考える。


 エマ姉さんが告白してフラれたとして、いつもとあまりにもテンションが違い過ぎる。


 普段ならフラれたとしても大声で「フラれたわ~!!」とか言って泣きついてきそうなものなのだが。


 何だか淡々と喋っているのが余計に怖い。


「ノアはオリヴィアちゃんから特別な感情を向けられてるって思った事ある?」


 エマにそう訊かれてノアはこの前オリヴィアから嫉妬された時の事を思い出す。


「まあ正直それはありますね。

ただ僕の勘違いでしたけど」


「やっぱりあるのね……。

オリヴィアちゃんって誰にでも優しいから、勘違いしちゃって、私一人で舞い上がっちゃって、恥ずかしいわ本当に……」


 その辺の話を聞いてノアは色々と察した。


「つまり、エマ姉さんはオリヴィア姉様に優しくされて、自分に脈があると思って告白してフラれたという事ですか?」


「うーん、ちょっと順番は違うけどそうね。

正確には脈が無いと分かってて告白したんだけど」


「それはそれは……難儀ですね」


 かく言う自分もフラれる覚悟で前に告白しているから、何となく気持ちは分かる。


 いつまで経っても駄目なら、いっその事フラれて終わりにして欲しかった。


 あれ? でもエマ姉さんはしっかりフラれたのか。俺には分からないって答えてたのに。


 まあでもそれはエマ姉さんが最初から女性で恋愛対象外だからと言われればそれまでなんだけど、それでも。


 それだけでもちょっと自分には脈があるんじゃないかって錯覚してしまいそうになる。


「ノアはさぁ、どう思う?

オリヴィアちゃんと付き合えると思う?」


「それはどういう意味ですか?」


「オリヴィアちゃんって、きっと誰とも付き合いたくないと思ってるわよね……。

なんて言うか……例え好きな人が居たとしても付き合う事をしなさそうと言うか」


 それは確かに、前から俺も薄々思っていた。


 オリヴィア姉様は自分だけ報われるなんて悪いと思っていそうなんだよなぁ。


 でもそれだと本当に誰も報われない。


「ならそうならない様に自覚させるしかないんじゃないですか?

少なくとも僕はそのつもりですよ?」


 ノアはニコリとエマに言う。


「……自覚、ね。

そうよね、まずはオリヴィアちゃんの気持ちをオリヴィアちゃん本人が気付かなきゃ意味がないわよね。


よし! こうなったら私、全力でオリヴィアちゃんの恋をサポートするわ!」


 エマは何やらやる気を出したのか、椅子から勢い良く立ち上がった。


「恋のサポートって?」


「オリヴィアちゃんが今後誰かを好きになったら、全力で応援するの!

因みにオリヴィアちゃんに好きな人が出来るまでは私もこれまで通り諦めないんだけどね!」


「それって、要は今までと変わらないのでは?」


 ノアはエマにそう突っ込むと、エマはキリッとした目つきで答える。


「いいえ! 今まで私はもし他にオリヴィアちゃんが私以外を好きになったら嫌だなって気持ちだったけど、ちゃんと受け止めようと思うわ!」


 エマはそう自信満々に宣言した。


「そうですか」


「それじゃあノア、聞いてくれてありがとね!

あ、オリヴィアちゃん、ノアの誕生日プレゼントの事またみんなに訊いて回ってるみたいよ? 良かったわね!」


「そうなんですね、それは嬉しいなぁ」


 それだけ言い残してエマは去って行った。


「まさかエマ姉さんが告白するとは。


……俺も頑張んなきゃなぁ」


 ノアは一人部屋でそう呟いた。

 果たしていつか報われる時はくるのでしょうか?


 読んで下さりありがとうございます。


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