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涙の訳は

 一方オリヴィアは自室でノアへの誕生日プレゼントをどうするか考えていた。


「うーん、ノアの好きなものって何だっけ?」


 ……結局1年程一緒に居ても私はあの兄弟達の好きなものをろくに知らないんだよなぁ。


 エマの好きなものは前回のブレスレット作りの際に調べたから多少知ってはいるけど。


 しかしノアとはここ最近一緒に行動する事が多かったのに、好きなものとかは分からなかった。


 乗り物酔いしやすいという事だけは分かったけど。


「はぁ~他人に興味が無いからこうなるのかしら?」


 ぶっちゃけ私はあの3兄弟の好みなんてどうでもいいとすら思っている。


 いや、3兄弟のみならず、他人の好みに興味が無い。


「また訊いて回るしかないか……」


「オリヴィアちゃ~ん!

お願いがあるの!」


 私が考えている最中にエマはドアを叩きながらそう大声で話しかけてきた。


「相変わらずうるさいわね、でもちょうど良かったかも」


 私は早速エマにノアの好きなものを訊こうとドアを開ける。


「エマ、ちょうど私も頼みがあるんだけど」「オリヴィアちゃん! 私も猫を一緒に見たいわ!」


 私のセリフを遮る様にエマが話し出した。


 私はそれを聞いて何が何だか分からなくなる。


「は? 猫?」


「ノアが王室に呼ばれた理由って、ノアが猫を見たいって言ったんでしょ?」


「は? え、待って?」


 ノアが猫を見たいって言ったって?

 

「え? ノアって猫が好きなの?」


「ノアに何で王室に呼ばれたのか訊いたら、そう答えてたわよ。

あれ? 違うの?」


 あー、なるほど。


 私はそこまで聞いてようやく理解した。


 ノアの奴、咄嗟にそんな嘘を吐いたという訳か。


「あー、確かそんな事言ってたわね、忘れてたわ」


 仕方なく私も面倒だが話を合わせる事にする。


「でも絶対あれってノアの嘘よね!」

「え?」


 ヤバい、折角話を合わせたのに、もう嘘だとバレそうだ。


「だって今まで猫好きなんて聞いた事ないし、きっと猫と戯れているオリヴィアちゃんを見たかっただけなんだわ!」

「ああ、そっちか」


 てっきりノアが猫を見たいと言ったという事自体が嘘だとバレたのかと焦ったが、どうやら変に勘違いしてくれたらしい。


「私だって猫を可愛がっているオリヴィアちゃんを可愛がりたい!

だからオリヴィアちゃん、今度王室に行く時は私も一緒に行きたいわ!」


「王室へ行く動機が不純すぎる」


 まあそんな私も王室へ行く理由の一つは猫と遊びたいからではあるが。


「でもノアは許されたんでしょ!?

それとも、猫の他に理由があったの?」

「え? あー……」


 エマから中々痛い所を突かれる。


 実際ノアが王室に行った本当の理由なんて言えないし、でもエマをそんな理由で王室に連れて行っていいものなのか……?


 まあ私も猫を見るだけでも来ていいとは言われているし、それはそれで良いのだろうか。


 かと言ってここでもしエマまで王室に行くとなれば、当然ルーカスだって黙ってないだろう。そうなると厄介だな。


「あー、というか、あくまで猫を見たいだけなら、何も王室へと行かなくても今度下町に行った時に公園とかにいる野良猫でも見ればいいんじゃない?」


 私はエマにそう提案する。


 しかし、この提案は間接的にノアが猫を見たいから王室へと行ったという理由を破綻させているのだが、大丈夫だろうか?


 しかしエマはそこには全く気付いていないのか、目を輝かせていた。


「オリヴィアちゃんと下町デート出来るの!?

行きたい! 是非行きたいわ!」


「えー、まあいいけど……」

「やったー!♡」


 エマは大いに嬉しそうにはしゃぐ。


 結果これはこれで面倒な事になった気がする。


「じゃあ早速明日にでも行きましょう!」

「いや、明日はちょっとやめて欲しいわ。

私ノアの誕生日プレゼントまだ用意してないから、せめてその後とかにして」


 私がそう言うと、エマはキョトンとした顔をする。


「え? ノアと下町デートしたのが誕生日プレゼントの代わりじゃなかったの?

そうルーカス兄様から聞いていたんだけど……」


「え?」


 いつの間にそんな話になっていたんだ?

 まあでもそれはノアもさっき提案してきた事だし、あながち嘘ではないが。


「ノアにもそれがプレゼント代わりでいいとは言われたけど、私はプレゼントを貰ったのにそれを返さないのが個人的に納得いかないから、ちゃんと返そうと思ってるわ」

「そうなのね、オリヴィアちゃんってやっぱり真面目よね」


「そりゃあノアに限らずみんなからあれだけ誕生日プレゼントを貰っちゃったらちゃんと返さなきゃと思うじゃない」


 オリヴィアが至極当然と言わんばかりに答えると、エマは少し切ない顔をした。


「きっとみんなオリヴィアちゃんの事が好きだからプレゼントを渡しただけで、お返しが欲しいだなんてそこまで考えていないと思うわ」


「え? でも貰いっぱなしも悪いでしょ?」


「……そうね」


 エマはオリヴィアの言葉を聞いて内心モヤっとした。


 オリヴィアちゃんは律儀で真面目だから、そうやってギブアンドテイクの考え方を当てはめてるけど、そんな業務的な感じじゃなくて、もっとこう、心を込めて欲しいというか……。


 でも、これを口に出した所で、感覚的な問題だから多分オリヴィアちゃんには伝わらないんだろうな……。


「あ、それから頼みがあるんだけど」


 私が悩んでいると、オリヴィアちゃんは全く悪気なく私に問い掛けてきた。


「ノアの好きなものとか、欲しそうなものとかって分かる?

誕生日プレゼントの参考にしたいんだけど……」


 ああ、やっぱり。


 エマは手首につけているオリヴィアから貰ったブレスレットをギュッと掴んだ。


 それから、エマの綺麗な碧色の瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。


「……え?

何で急に泣いてるの? どうしたのよ?」


 オリヴィアはエマの異変に気付いてビックリした。


「オ、オリヴィアちゃんの……


オリヴィアちゃんの、バカァ!!」


「は?」


 そう叫んだエマは勢いよくオリヴィアの部屋から出て行った。


 オリヴィアは一人取り残されて困惑する。


 え? 私何かしたっけ?


 今ノアの事を訊いただけなのに、それがまずかった?


 でも何で??


 全くもって理由が分からない。


「えーと、どうしよう……。

取り敢えず追いかけて話を聞いた方が良いわよね?」


 そう考えてオリヴィアもすぐ様部屋を出た。


 それからエマの部屋に急いで向かうと、ばったりルーカスとでくわした。


「あ、ルーカス! エマ見かけなかった?」

 

「ん? エマなら確か凄い速さで駆け抜けていったぞ? 危ないぞとは注意したが、何かあったのか?」


 ルーカスが不思議そうに尋ねてくる。


「えーと、何かエマが急に泣き出したというか怒り出したというか……」


 私はどう答えればいいのか分からずに歯切れ悪く説明する。


「泣き出した?

オリヴィア様、それは一体何があったんです?」


 そう問われても、寧ろこちらの方が訊きたいくらいだ。


「私も分からないのよ。

ただエマにノアの誕生日プレゼントの相談をしたら突然泣き出したの」


「ノアの誕生日プレゼントの相談……?

あれ? オリヴィア様、前にノアと出掛けたのがプレゼント代わりじゃなかったんですか?」


 先程エマから受けた質問と同じ事をルーカスにも尋ねられる。


「あー、それだと私の気が収まらないから、ちゃんとプレゼントで返そうと思ってて。

それでノアの好みとか欲しいものとか知らない? って質問したらエマが泣き出して」


 そこまで聞いてルーカスはうーん、と考え込む。


「もしかして、ノアと誕生日代わりのデートをした上に、更にプレゼントをあげようとしているのが嫌だったとか?」


「そうなのかしら?

デートと言っても用事に付き合って貰っただけというか、全然デートでもなかったんだけど。

それに、その話の時点ではまだエマは普通だったと思うわ」


 私はさっきのエマとの会話を思い出しながらルーカスに話す。


「じゃあ、やっぱりノアの事を訊かれた辺りでエマが泣き出したという事か……」


 ルーカスはそう呟いて更にうーん、と悩む。


 一緒に悩んでくれる辺り、やはり優しいのだけれど、そういえばルーカスって、乙女心というか、こういう相談事には向いていないんだった。


 私はそれを思い出し、ルーカスにやんわりと断りをいれる。


「ルーカス、一緒に考えてくれてる所悪いけど、やっぱり私エマに直接訊いて……」「オリヴィア様、一つ確認しても良いですか?」


 私が断ろうとすると、ルーカスは私の目を見据えて質問してきた。


「何かしら?」


「オリヴィア様は、何故ノアにプレゼントを渡そうと思ったんですか?」


 ルーカスが急に変な質問をしてきた。

 一体どういう事なんだろう?


「何故って、そりゃあ誕生日だし、それに先月プレゼントをこっちも貰ってるのに返さないのも悪いでしょ?」


「あー、多分、それが原因かと……」

「は?」


 ルーカスは言葉を選びつつ辿々しく説明しだした。


「多分、なんですが……。

誕生日プレゼントって、その人への感謝というか、お祝いというか、そういう物だと思うんですよね」


「えーと、つまり私がノアの誕生日をちゃんと祝ってないから怒ったって事?」


「はい。恐らく。

ほら、エマってクリスマス・イヴが誕生日で、キリストの生誕祭の前日だから、誕生日に対する考えを大事にしているんですよね」


 そうルーカスに言われて、成る程と納得する。


 確かに、私の誕生日プレゼントに対する認識はただ誕生日だから取り敢えずプレゼントをあげないといけないという感じではあったかも。


「ありがとうルーカス、私、エマに謝ってくるわ!」


 理由が分かった事だし、私は早速エマの元へと向かおうとした。


 すると、ルーカスが私に声を掛ける。


「オリヴィア様、仲直り出来ると良いですね」

「……まあ、別に喧嘩した訳じゃないけど、そうね」

 

 オリヴィアそう言ってエマの部屋へと急いだ。



「オリヴィア様も素直じゃないなあ」


 オリヴィアを見送りながら、ルーカスはにこやかにそう呟いた。

 本来ならエマが泣き出す回を書く予定は無かったのにこうなりました。

 乙女心難しい……。


 読んで下さりありがとうございます。


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