ハーレムの女王
あーーーっ、サスケラ忘れてた!
[模型訓練]
「いいか、門扉を交わったら直ぐに降下布を切り離せ」
でないと尾部が引き千切れるぞ、とミーティアが脅す。
「うへーい」
虎治に緊張感はない。まだ模型での訓練の段階だ。そもそも木馬=天馬は気球だ、きちんと前から風を受けさえすれば墜落する方が難しい。
二回程消化した台車での訓練でほぼコツは掴めている。それでも空軍が実験や訓練を繰り返すのは、極たまに横向きに飛び出す事が有るからだ。
鷲型のケースだが、一瞬で強烈なスピンが掛かり、操舵手は失神した。200キロ以下で有った為、大事には至らなかったが、四百キロ以上の高高速度なら、内翼気室の紐付けが千切れ空中分解も有り得た。
現在空軍では実機訓練は百キロ以下でするように指導している。
万が一に備え掩体に身を隠した整備員が降下布を投下した。機首に取り付けたワイアーがしゅるしゅると伸びる。虎治は真下を覗き込むように交わる瞬間を測っている。交わった!虎治の手が素早く動く。
「成功だ!」
ワイアーに繋がれた玩具の木馬はきちんと気流に乗っていた。
[ロマン]
「本物の竜骨戦艦?」
滔々と構想を捲し立てる族長に、シャオは呆れている。まるで気に入った玩具を前にした子供だ。
骨格をまるまま使って戦艦を作るのだと言う。
「大きいのは駄目」
だが大き過ぎるのだ。森に潜ませるには向かない。竜骨戦艦の様に細ければ問題ない。背骨と尻尾の部分だけなら、クネクネ曲がって置き場を見付けるのも容易だろう。
そう言うと、なにか言いたげにはしていたが頭を下げて、下がった。勿論シャオは、族長が何を言い掛けたのか知っている。
男なら誰でも言う言葉だからだ。[女にはロマンは以下略]
[オアシス]
「ここも外れだ」
既にポイントには到達している筈なのに、肝心のダンジョン跡が見付からない。上空から見て洞窟っぽく見えたので降りてみたがただの陰だった。
もしかすると、砂漠のダンジョンは洞窟型ではなくフィールド型だったのかも知れない。
「オアシス跡を探して」
ならば、特異点はオアシスの形をしていたのかも知れない。
「或いは移動型ですかね」
女性艦長が不吉なことを言う。そうであるなら、永遠に見付からない。
上空へ上がったマリコがオアシスらしきものを見付けた。まだ生きていると言う。
[暗雲]
水軍元帥は、空軍が何を企んでいるのか、ついに理解した。イェードゥを再び落とす気だ。しかる後にイバーラクに戻り王政を敷く。
偉大なるエーアス執政官をどうする積もりなのか、不吉な予感しかない。警告すべきか。いや、執政官はサルーに完全に騙されている。
前段階のイェードゥへの派兵を阻害するしかないか。
え?水軍が戦争準備してるの?
どことやるの?
うち?なにそれ。
参謀長から、水軍がどうやら敵対路線を進んでいるらしいとは聴いていたが、さすがにこれは寝耳に水で、現実感が湧かない。それでも、対抗措置の案を幾つか出して参謀長に丸投げするのは何時ものサルーである。
どの辺が?丸投げの辺り?
「でもさぁ、うちと仲たがいしたら、真空魔石の補充どうすんのかな?」
「水軍元帥は専門家では有りませんから、気付いていないかも知れませんね」
「ん?どゆこと?航空隊には秘密でうちと敵対してるの?」
「おそらく…航空隊は空軍と仲が良いですから」
「水軍、始めから負けてない?」
[サスケラ]
消灯前にサスケラがやってきた、というより忍んできた。そういえば演習航行に出て以来サスケラとはご無沙汰だと、虎治は思い当たった。
しかし、今は困る。消灯のタイミングで嫁全員を分割ルームに、連れ込む段取りなのだ。
「仔細は承知している」サスケラが切り出した。
「虎治と共に分割ルームとやらに訪いたい」
えっと眷族でないと、と言い掛ける虎治を制して、
「うちのマティーに聴いた、パートナーとして招待されると虎治と共にすべてのルームに入れると」
マティーとはコアのデュブリケイトを基にした城のプロシージャだ。サスケラの好みのなにかに変わる筈だったのだが、変わらなかった。
と言うより一旦はメイド服姿の美少女で現れたのだが、すぐに黒い球体に戻ってしまった。
サスケラはコアみたいなのが欲しかったらしい。
「そうなの?」初耳の虎治。
時間になったので取り敢えずやってみた。サスケラも同行出来た。他の虎治の処へはどうか不明だが、直ぐに分かるだろう。
サスケラは[すりーぴー]と言うのがしてみたかったようだ。
「他の嫁達がどうやっているか、気になるではないか」
いつものサスケラの直球だった。
[家族旅行?]
マリーが耳許でわうわう吠える。
えー煩い!怒ったら、しゅんとなった。
「ごめんごめん、怒る積もりはなかったんだよ、でも煩いから吠えないでね」
現在、リュウコの背上、空の旅だ。
旅と言っても昇って降りるだけのちょっとした物だ。
で、俺の背後にはマリーが前足で肩にしがみついて、
顎を頭に乗せている。
常に乗せていると言う分けでもなく、
右を視たり左を視たり忙しい。
足の間にはツノウサが鎮座在しましていて、
ふしゅーふしゅー言ってる。
機嫌が悪い様でもなく、ただ興奮してるだけの様だ。
「わうわうわう」
数分もしない内に、またマリーが吠え出した。
こりゃだめだ。射撃訓練用の耳栓買ってこよう。
酒保で売ってるかな?
やっとダンジョンの手懸かりか?




