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砂の焔  作者: 南雲司
7/18

魔女と聖女

全世界の歴史小説ファンに捧げます。

[健康的な三日間]

 帰省許可は三日間で、それは詰まり、アーカイブで完全回復した[嫁]を連れ帰れと言う事だろうと思われた。

「暇だねー」

「マジ退屈」


 午前中の極早い時間でのリタイアである。三人とも精力は有り余っている。じわじわ虎治ににじり寄る嫁二人に、淫靡いんびなものを感じてか前屈みになる虎治、ただれた三日間が、今始まろうとした時、コアが現れた。

「遣ることはいくらでもあります。暇なら手伝いなさい」

「えー、うちら休暇中だしー」声をそろえる嫁二人。

 ブレードの気配に直立不動になる虎治。下半身もまだ休めになってないので見事なテントだ。

「休暇ではなく帰省許可です。それにダンジョンには休暇は有りません」

「あー、そういや、家庭的な職場だった」


 健康的な三日間が始まった。


[お裾分け]

 空軍にお裾分けの竜肉がどっさり届いた。

「竜肉ってうめえのか?」工廠長。

「普通に料理したら固すぎて食べられませんね」

 参謀長の蘊蓄が始まる。

「臭みも強いので、香辛料をたっぷり使って長時間じっくり煮込みます」

 すると臭みが旨味に変わるのか、コクのある食通好みの味となる。


「そいつぁ旨そうだ」


[霜降り飛竜]

 歪なダンジョンにもどっさり。

「俺知ってる、竜肉って霜降りの松坂みたいな味なんだよね」

 虎治の知識は異世界だった。

「檻に閉じ込め、穀物由来の餌を与え、毎日ワインを大量に飲ませれば、そんな味になるかも知れませんね」

 コアが矛盾を止揚しようした。


 その晩の食事は竜肉入りのカレーだった。

「竜肉カレーさいこー」

 気に入ったようだ。松阪牛との比較の発言はない。そもそも、虎治は食べた事がないから当然ではある。


[レンジャーズ]

「こりゃ、飛竜の巣ですね」

 兵曹上がりの准尉が言う。目的地が近くなり、警戒度を上げた処に、なにやら怪しげな物を見付けたので、特殊戦分隊に降下して貰った。

 その報告である。


「最後に使われたのは一週間程前と推定」

 遠話缶から聞こえる声に、艦橋にいる者凡てが、一様に思う。

(すげー、なんでわかるんだ)森で培ったスカウトの技量は、ここ砂漠でも有効なようだ。

「おそらく、先の撃退した飛竜の巣でしょう。テリトリーを放棄した物と推定」


 木目シャオはキオト領の飛竜騒ぎを知っている。なので全艦に次の様に告げた。

「告げる。先の飛竜の撃退について口外する事は慎む事。之は敵対勢力に利用される事なからしむ為である」

 いやがらせでキオト領に飛竜を追いやった等と勘繰かんぐられては堪らない。


[演劇]

 イェードゥのキオト領で不思議な演劇が流行っていた。筋立ては、冷酷な魔女シャオ・ハイマオと腹違いの妹森の聖女ネーネ・ハイマオの確執、つまりイバーラクのお話である。


 民を虐げる冷酷魔女、その民を影でこっそり助ける森の聖女。クライマックスでは空を飛ぶ神樹が舞台の上に現れて、冷酷魔女を退治するのだ。

 いや、まて、冷酷な魔女のモデルが木目シャオなら、退治されてないから、元気に司令官やってるから。そして、致命的な矛盾を抱えたまま大いに興行収入を上げたこの劇は中原全土に広がった。


 イバーラクでも大いに受けたが、人気のあるシャオを悪役にも出来ず、名前が入れ換えられた。冷酷な魔女ネーネ、イバーラクの聖女シャオである。

 文盲率の極めて高い世界に於いては、庶民の歴史観はオババの寝物語と芝居とで形作られる。

 そして編纂へんさんされる史書は少なからぬ割合を市井しせいに流布された伝承に依存する。この不思議な劇は後生に於いて中原の歴史家達に、大いなる困惑を与えることになるだろう。

 完全な創作ではないがおおむね嘘っぱちで有るがゆえに、この時期に起こった主要な事件への、真しやかな解説ともなっているのだ。


[才の片鱗]

「こう言うのどうかなって、思ったんす」

 三日後、虎治と三人娘は帰艦報告で訪れた艦橋で温めていたアイディアを披露していた。名誉の為に付け加えると温めていたのは、三人娘で虎治はたまたま居合わせているだけである。


一案、

「降下布を使う?」

 尾部に長いロープで降下布の背のうを取り付け、十分離れた処から背嚢を投げ落とす。後は風がやってくれる。

「台車も要らないっす、あれってもともと降着装置のない鷲型のためっすよね?」

 磨かれた甲板なら橇でも十分滑走出来る。


二案、

「改造が必要かも知れないんですけど」

 後扉を水平に開きそこに天馬を設置する。

 作業員待避の後、後扉を傾斜させる。


「ふむ」木目シャオは考える。

 どちらの案も有効そうだ。二案だとピタリと水平に止める必要があるし、実機の重量の分補強も要る。一案を試してみよう。

「貴女達の名は?」しまった名前考えてない。(メタ)


[成長]

「やーらーれーたー」

 意味不明な台詞を棒に詠んで、リュウコから降りたサルーはパタリと倒れた。

 マリーとツノウサが飛び乗る。

「これこれ、痛いから…」

 この台詞をサルーから引き出すまでが遊びだ。

 そこに妥協はない。


 リュウコは息切れすることもなく、平然としている。ちょっとプルプルしてるようにも見えるが気のせいだ。

 うっかり指摘でもしたりしたらマジで落ち込むし。

 しかし成長早いな、もう俺より二回りはでかい。

一見、史実に沿っているようで、歴史小説も読者を喜ばせる為に書かれた[お話]です。真に受けて、蘊蓄披露等すると、しばしば恥ずかしい思いをします。御注意を

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