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砂の焔  作者: 南雲司
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冷酷な魔女

余計な邪魔が入って進行が停まります

[領域]

 円盤機は連合諸国の中で、中堅に属するキオト王国の所属で演習に同道させろと言って来た。

 サルーなら、ま、いいか、で許可が出たかもしれない。

 カヌーベ参謀長なら、慇懃無礼にお引き取り願うか、或いは相手の不備を突いて多額の見返りをせしめたかもしれない。


 だがこの艦隊の司令官は[木目]シャオだった。

「理由が不明である。拒否する」

 キオトにもシャオの噂は轟いている。しかし、その天才性についてであって、何かと恩寵の短剣を振り回したり、身を挺して飛竜を封印した血の気の多さの事ではなかった。

 そして、その天才魔術師が顔一面に入れ墨をした野蛮人エルフである事にも虚を突かれたのだろう。

 男爵と名乗った男が吠えた。


「エルフの女では話にならん、話の分かるのを出せ!」

 兵学校は、森人とイバーラクの合同で運営されている。そして、司令官も森人だ。詰まり、この艦は[神樹の森]の所属でもある。

「捕らえよ!」

 男爵は取り押さえられ、お付きの者達にも剣が突き付けられた。

「何をするか!」

「此処はエルフの領域でもある。此処でエルフをエルフと呼んで良いのはエルフだけ」

「そして、反すれば死罪」

 勿論、殺すつもりはない。全くの異文化をぶつけて、反応を、素性を視るのだ。

「何の工作が目的か問い質す、別々の部屋に拘禁せよ」

 特殊戦分隊がさっそく役に立った。


 喜んだのは整備班である。早速円盤機の解体に取り掛かった。お帰り頂く迄に直しておけば良い。


[綿火薬]

「この火薬ってさ、黒色火薬じゃないの?」

 整備班に配置された虎治の嫁の一人が突然言い出した。

「なんかマホーで細かくしてるみたいだしぃ」

 隣の[嫁]が答える。

 側にはもう一人娘がいて、黙々と作業を続けている。これも虎治の嫁。


 さて、読者諸氏はお気づきだろうか、この三人は最初の休暇にダンジョンに帰って、工作人形の針仕事に驚嘆した三人である。モブ設定なので名前はないのだが、もしかしたら重要な発見をする事に為るかも知れない。そうなったら名前を考えてあげよう。


 話を戻す。魔法で粒子を極めて細かくする事で燃焼効率を上げているのがこの世界の黒色火薬らしい。硫黄には魔法は効かないのでそれは手作業だ。

「セルロイド出来んならさ、綿火薬作れないのかな」

 突然それまで黙々と作業していた娘が、最初の娘の口を塞いだ。

「それを言ってはいけない。もし誰かに聴かれたら…」

 あー、と納得する残りの二人。それからは三人とも黙々と作業するのであった。

 絶対休み減るよねとのコンセンサスである。


 残念、名前お預け。それと、うら若い娘達がなぜ綿火薬などと言う物騒な物を知っているのかは、謎である。コアに訊けば分かるんだけどね。


[処刑]

「エルフの野蛮人めが、良い気になるな!」


 拘束されていると言うのに、男爵の悪口雑言は止まらない。

 一つには自分が貴族である事を頼みにしているのだろう。

 人族なら、簡単には貴族は殺せない。

 だがエルフは[野蛮人]だ。


 シャオは立ち上がった。

 この男をそのまま帰すわけには行かない。

 予断と偏見を基に、有ること無いこと言い触らすタイプの人間だ。

 共和国にも、森にも譲歩したと言う弱みだけが、残るだろう。


「処刑して」

 男爵は何が決定されたのか理解せず、

 理解できずわめき散らしている。

 エルフの女を撃退した事に軽い満足すら覚えていた。


 随員達は数珠繋ぎにされ、

 前部格納庫の壁際に立たされていた。

 猿轡を噛まされ手足を縛られた男爵が、

 台車に載せられ運ばれてきた。


 搬入口が大きく開く。

 男爵も含めキオトの者達に、

 これから何が行われるのかを知らしめた。

 随員の一人が叫ぶ。


「お待ちください!此れは何の仕儀ですか、貴族が裁判にも掛けられずに処刑される等、有ってはならない!」

「それは貴国の法、此処では神樹の森の法が適用される。さらに、この艦は作戦行動中である。裁判を要求する事こそ違法」


 台車に載せられた男爵は落下し、台車は回収された。

 爾来じらいキオトではシャオは、

 醜い入れ墨を顔面に施した

 悪鬼の様な女性として描かれる事になった。


[遊び再び]

「え?また乗るの?」

 なんとなく飛竜の成長ぶりが気になって、此処のところ毎日のように顔を出しているサルーに、飛竜が首を差し出す。

「良いけど、べしゃってなったら痛いよ」

「クェー!」対策済みだそうだ。


 首の根方に乗ると肩車になる。

 飛竜はサルーを肩車したままトコトコ駆け出した。

「クェー!クヮックヮッ!」

 これなら、痛くないと言ってるらしい。

「でも、足に筋肉付いたら、飛びにくく為らないか?」

 飛竜がピタリと停まる。

 口があんぐりと開いている。

 考えてなかったようだ。


 サルーがじゃ降りようかと言い掛けた時、飛竜は猛然と走り出した。

「うおっと」

 首にしがみつくサルー。

 勢いを付け飛竜は飛び上がった。

「おお、五メートルは上がったぞ!」

 直ぐに墜落した。

 投げ出されて転がるサルー。

 飛竜は伸びている。

 前日の遊びの続きと思ったか、

 マリーとツノウサが飛び付いてきてサルーの上に乗っかった。


 これ、痛いから角でつつくのは以下略。


綿火薬について:綿を硝酸で処理して出来るニトロセルロースは、セルロイドの原料ですが、実は火薬です。ただ、連鎖反応が鈍いのか実用的なものではないそうです。真空中でも燃えるので、火薬には違いないって感じ。それを条件を変えてごにょごにょすると、酸素と窒素をたっぷり含んだ綿火薬ができます。硫黄の含有量が減らせる上に、煙が出にくくて実に空軍向きの火薬なのです。

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