エピローグ
いやしくも、エンターテイメント擬きを騙るなら、エピローグは必要だよね、的な?
[課題]
騎士団を含め演習艦隊には一機の被墜も、一艦の損失も無かった。
基本的に優位な上方からの迎撃であった事は大きな要因だが、
やはり隠蔽の力がもっとも大きな因だろう。
水軍は見えない天馬に常に集中を削がれ続けた。
能力の半分も発揮できたか怪しい。
そして、その事を十分に利用して指揮をとった
騎士団の中隊長の評価は高い。
その一方で新たな課題も見付かった。
有利な状況であるならば、天馬は一機の被害も出さずに
敵を撃滅し得るが、劣位であったり数的な不利が有る時には、
攻撃時の発射煙から、しばしば発見を赦し避退を余儀無くされた。
サスケラ小隊の第二分隊二番機は、実に十二発の被弾を受け、
被墜しなかったのは奇跡と評された。
森人空軍であれば、空気抵抗を無視した魔法の矢が主兵装であり、
このようなケースも少ないであろう事を思えば、
まだまだ研究の余地有りだろう。
[結論]
戦勝の報告に空軍府は沸いた。
完勝ではないか。
この勝利は空軍に驕りを生んだ。
ひよこ達が騎士団の助けを借りたとは言え、
倍する敵に完勝したのだ。
ならば鷲型に乗る精鋭達に勝てる者はない。
その一方で、冷静に次を見据えようとする者達も確かにいる。
空技厰だ。
天馬の火力と防御力の低さに危惧を抱いていた。
火力は、威力自体は十分に思えるが継戦能力の貧弱さは
疑い様がない。
アサミ小隊が後数分粘れていれば、
サスケラ小隊の苦戦は無かったかも知れないのだ。
防御力に関しては鷲型が余裕で耐えられる程度の被弾で
遁走せざるを得なかった。
一回り大きな魔石が必要である。
そう結論付けられた。
[ワルキューレの仕事]
水軍のイェードウ空軍との大きな違いはいくつか有るが、
此処では一つ降下布を挙げる。
イェードウの被墜は死を意味したが、
水軍はそうではないと言う事である。
戦後のワルキューレ達の仕事は橇の間に網を渡し、
湖水上で、救命胴衣を頼りにプカプカ浮いている
水軍の搭乗員達を拾い上げる事だった。
そういう作業には向かない騎士団の鷲型は、
発見したそれらしき物の付近に発煙筒を投下して助けと為した。
助けられたのは二十数名で凡そ半数が戦死した事になる。
[降伏勧告]
木目シャオの出した水軍艦隊への降伏勧告は、
意外な事に受け入れられた。
降伏したからと言って、演習艦隊にはどうにも処理のしようがない。
結局、武装を水中に投棄させ、解放した。
勿論、揚力胴型の予備機その他を押収した上での事である。
水軍機搭乗員の返還を打診されたがそれは拒否した。
まだ戦争が終わったとは言えないのだ。
エーアスの命令と布告が届くのにはまだ数日掛かるだろう。
そのエーアスは最大の危機が去った事を知った。
演習艦隊が無事なら水軍元帥の言い訳は利かない。
元帥の捕縛は速やかに行われるだろう。
[ロープ]
一番、馬力のある旗艦が騎士団母艦を曳航している。
「よくこんな長いワイアーあったね」曳航作業を手伝った三娘A、
三娘達は旗艦に戻っていた。
「水軍からの押収品、それとワイアーでなくてロープ」B。
「へっ?あんなに固いのに?」A。
「むふふ」C。
「なによ、三娘C」A。
「固くて、太くて、長くて、油が染みて真っ黒」C。
「あー」AB。
[解任]
「元帥が解任?」
エーアスの出頭命令は意外に早く次の日には水軍府に届いた。
確認したのは首席参謀で、事が終わったことを知った。
直ちに水軍憲兵隊を率い元帥の執務室へ向かった。
「カモートス大将閣下、出頭命令が来ております」
カモートスは、なぜ軍府の長を示す元帥ではなく階級で呼ぶか。
そう疑問が過ったが、居並ぶ憲兵達を見て悟った。
「そうか」それだけを応えた。
[職務]
「わうわう」
砂漠のオアシスダンジョンにはマリーとツノウサも残っていた。
「取ってこいやるの?待ってね、この山片付けたら、いてて」
ツノウサが突っついた。
溜め息の擬音を発して、コアが許可を出した。
空軍元帥の足が穴だらけになるのは避けるべきと判断した様だ。
外に出ると、リュウコが空を舞っていた。
「わうわうわう」
マリーが誘い掛けるが応じない。
職務の遂行中であるらしい。
マリーとツノウサも職務を遂行することにした。
即ち、取ってこい遊びである。
そこに妥協はない。




