表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂の焔  作者: 南雲司
11/18

砂の焔その2

リュウコ危うし、ついでにサルーも

[リュウコ]

 なぜもっと早く飛竜の幼体と会っておかなかったか、とシャオは軽く後悔した。会ってみれば、明らかなプロシージャで、コアと同様のポテンシャルを持っている様に感じた。恐らく砂漠のダンジョンだろう。ではダンマスは何処に?


 リュウコは直ぐにシャオに懐いた。

 頭をグリグリとシャオの薄い胸に擦り付けている。

 こら、リュウコ、それは俺のだ。

 いつも素直なリュウコがチラリと横目で視て鼻で笑った。


「サルーは失礼」

 しかもシャオに怒られた。

 いやその、俺のと言うのはレトリックで…。

 かぶりを振るシャオ。


「薄いと考えた」そっちか。てか、心を読まれた。


[高度]

 騎士団は快調に作戦を続けていた。逆落としで何頭か屠った後上昇反転のセオリーは機動は重たくても高速の騎士団の鷲型にはとても向いている。しかし、翼竜も頭を押さえられるのを嫌って徐々に高度を上げて来る。カンナプスは八百付近で翼竜の機動が緩慢に成る事に気がついた。


「管制、翼竜の戦闘高度は千から千二百が限界と思われる」

「情報感謝する、全部隊に告げる、翼竜の戦闘限界高度は千二百と推定、飛空艦の占位せんいは千五百以上を基準とせよ」


 勿論基準とするだけで実際の高度設定は各艦長に任せられる。余り細かい指示を出せばいかに司令官でも越権となる。特に今は各艦が単独で作戦行動をしているのだ。


[騎士団母艦]

 騎士団の母艦はかなりの後方に位置していた。が、翼竜の戦闘限界高度が推定された事で、前線に移動する事にした。二十分のインターバルでは往復時間を考慮すると整備の時間がギリギリ過ぎる。


 艦長は輜重を任されていた中隊長で、この任を受けるに当たり大隊長に昇進した。今まで馬匹の番をしていたのが、戦闘部隊のおさである。ましてや艦長となってからの初陣、張り切らない分けがない。

 前線への移動を制肘しようとする副官、翼竜よりも高度限界の高い竜種が出現しないとも限らない、とする者にこう言った。


「貴官は騎士団航空隊が信じられないのか」

 実に卑怯な物言いではあるが、士気はあがった。


[内と外]

 コアは砂漠の結節点=ダンジョンにアクセスを試み続けていた。このダンジョンが敵対するのがどうにも不自然に感じられるのだ。そこへシャオ=森のシャオから念話が飛んできた。

「プロシージャが森に?そのプロシージャは内部管理ですか?それとも外部?」


「内外の別とは初耳、詳しく」

「虎治さまやシャオ様、広げると森人の主だった方々が外部管理プロシージャですね。ダンマスと呼ばれるのはその代表的な方です。役割的に類似しないなら内部管理でほぼ間違いありません」

「ほぼ?」

「中間的な存在も有り得ますので、役割をある程度把握しないと同定出来ないと言う事も考えられます」

「転移門を展開出来る、この事は判断基準になる?」

「必ずしも為りません。本来はダンジョンマスターの職務ですが、うちの場合でも、虎治さまより私の方が得意ですし」


 シャオは理解した。コアは内部と外部に股がって管理できるのだ。

「可能ならそこへ送り込みたい、大丈夫?」


[水軍工廠]

「新型魔石が手に入らない?」

 水軍工廠では作業が滞りがちに為っていた。

「シャオ嬢ちゃんに計画が集中してて、製造の余裕がないそうだ」


 発注しているのが水上艦艇用の真空シールドなのが、実は問題だった。圧縮比と斥力比を弄っただけで戦艦が陸上を走れる様に成る。

 強大な火力が自在に中原を走り回るのだ。

 今の水軍に渡すわけにはいかない。


「天才過ぎるのも問題だな」

 工廠では水軍が空軍を仮想敵にしているとは、まだ気付いていないらしい。


[参謀長]

 参謀長は国内の三軍配置図を視ていた。

 この配置のままであれば水軍が戦端を開くのは難しいだろう。

 陸軍が邪魔になる。

 だが空軍と水軍の配置が変わればどうだ。


 水軍の狙いは恐らくチュダイ(サルー)元帥、一点だろう。

 元帥を殺せる状況に如何どう持っていく積もりだ。

 軍事行動を陽動にしての暗殺?空軍府にいるなら、難しい。

 何処かに引きずり出そうとする筈だ。


 何処へ?


[プロシージャ]

 飛竜のリュウコがダンマスである可能性が示唆された。どの様な役割のプロシージャであるのかは、此処に置いていては分からない。


「試して貰うしかないですね」コアの答えは簡明だった。

「リュウコ?いける?」

「クヮッ!」

 慣れたのか、違和感のある声音ではなく、

 長くもない鳴き声で門が開いた。


「これは外?」

 遠目にオアシスが見える。

 上空では鷲型が翼竜を屠っていた。

 リュウコがブレスを吐いた。


 とても届かぬ小さなブレスではあった。


「止めさせて!」シャオが叫ぶ。

 リュウコが翼を広げた。

 サルーが飛び付く。

 その肩にマリーがしがみつく。


 ツノウサは飛び付いたがしがみつける場所がなくて

 ぽてっと砂の上に落ちた。

 ふしゅーふしゅー言っているがもう遅い、

 リュウコは飛びたった。


[怒れる飛竜]

 サルーには分かった。

 リュウコは怒っている。

 ダンジョンの眷族である翼竜を

 苛めている、飛空艇に猛烈に怒っている。


 だが、今のリュウコでは何秒も持たず返り討ちだ。

 なので宥める。

 必死で宥める。

 途中ヤバイことに気付いた。


 あれって騎士団じゃね?

 リュウコの背に乗っているのが、

 サルーだと、

 空軍元帥だと知っている保証はない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ