嬉しさ、そして怒り
なんかよくある展開になっちゃいました。
買い物も済んで、時刻は4時を過ぎた。
「今日は付き合ってくれてありがとうございました。」
「いやいや、大した事ないよん。結局、天ちゃん振り回したのはこっちだし。」
たしかに、いろいろと振り回され、いろいろ着せられた気はする。
「でも、おかげで楽しめました。」
「そお?ならいいけど。」
そう言って、猫さんはニコッとした。この顔をした猫さんは本当の猫みたいだ。
「さて、それじゃあそろそろお別れとしますか。のんびりしてたら天ちゃんの帰り、おそくなるもんね。それに私、こっちだから。」
といって、駅に続く道と反対の道を指差す。大きな電波塔が、視界の隅に映った。
「そうですね。それではまた来月の会議のときに。」
「天ちゃんはお堅いわねぇ。友達なんだから普通にバイバイとか、またじゃあね、とかでいいわよ。」
友達……
「ふふ。じゃあね天ちゃん、また今度っ。寂しくなったら、いつでも連絡ちょうだいね!」
「は、はいっ、また今度っ!」
私の言葉を聞いて猫さんは、最後にニコッとして背を向けた。その背中も猫みたいにスラっとしていて綺麗だった。
***
駅のプラットホームで電車を待ちながら、今日一日を振り返っていた。
報告会議があって、その後猫さんと買い物して……。
あれ、そういえばあのとき感じた視線は結局なんだったんだろう。
振り替えったときにはすでに気配は感じられなかったが、あの身体の奥を刺すような眼光。少し身震いすらする鋭さ。
私は、あの視線と似たものを少し前にも見た事がある気がする。そうだ。それは報告会議が終わった後の……。
「っ!」
そうか!「ホークス」!あの鋭い眼光は鷹の瞳で間違い無い。
しかし、なぜあの人がこちらを睨むような真似を?私はあの人とは初見同士だ。何かあるとしたら猫さんだが……。
……そういえば猫さんはあの男に対し、何か因縁めいたものを持っているように思えた。とすると、ホークスにも猫さんに対する何か因縁があるのでは?
そんな推理をして、私は居ても立ってもいられなくなり、猫さんに電話してみることにした。
プロロロロロ、プロロロロロ……
これで何もありませんでした、だったらどうしよう。
プロロロロロ、プロロロロロ……
その時は事情をはっきり話すまでだ。
プロロロロロ、プロロロロロ……
おかしい、出ない。別れてから10分くらいしか経ってないのに。
プロロロロロ、プロロ、…………
コールが鳴り止んだ。しかし猫さんは電話に出てこない。
「猫さん?猫さん⁉︎」
呼びかけるも、返事無し。では他に、誰が猫さんのスマホにかけた電話に出るというのか。突き当たる人物など、一人しかいない。
「ホークス…………っ!」
『ひはっ、いいねぇその怒り心頭って感じ。そうですオレですホークスさんですよお、トカゲちゃん。』
舐め回される様な気色悪さと怒りと共に、自分のスマホがミシッと音を立てた。
「猫さんに、何をした…。」
「別に何も?ただちょいと寝てもらってるだけだ。」
「っ!」
画面にヒビが入った。
「ハハッ、今すぐにでも殺してやりたいって感じだねぇ。そういう単純なのは嫌いじゃない。」
「……どこにいる。」
怒りで血が沸いている感じがする。力も抑えきれているかすらも分からない。
「フンッ。トカゲちゃんはもうちっと考えて動くタイプかと思ったけど、そうじゃなかったみたいだな…」
「どこにいるのかと聞いている!!」
「聞いたところでどうする。あいつを助けれるとでも?」
「ああ。そしてあんたをぶっ潰す。」
「ハ、少年漫画の主人公みたいなセリフ吐いちゃってまあ。大体お前みたいな雑魚がオレに敵うとでも?」
「敵うとも。そんな下衆みたいな手を使う奴には少なくともね。」
電車が到着するときの音楽が、遠くに聞こえる。
「フンッ、雑魚がよく言った。なら教えてやろう。オレとこいつがいるトコを。」
聞きながら、私はホームへの階段を駆け上がっていた。
「……駅出たら見えるだろ?でっけえ電波塔。そこで待ってるぜ。トカゲちゃん。」
最後の言葉を聞きながら、私は駅を飛び出た。スマホが左手の中でバリィと音をたてて、その破片を撒き散らした。
作者は絶賛宿題に追われております故、また次回まで間がしばらく空くでしょう。まあ、学生なんで。そんなものです。ちゃんと書きますので、待っていてください。よろしくお願いします。