リベンジ
金曜日放課後。天は二人と共に御多良子駅に降りた。
「今日はゼッッタイ捕まえる!」
「おお、気合い十分だな。」
リベンジのときは来た。今日はあの天狗が空を飛ぶ最期の日になるだろう。
奴の本気の力は恐らく昨日の程度じゃない。その気になれば家も飛ぶくらいの風を起こせるはず。
作戦は至ってシンプル。奴が来たらまず、私の力で取り抑え、すぐさまミカサとシロナが捕まえるというもの。
相手に行動の隙をいかに与えないかが、この作戦のミソとなる。今回は私も手を抜かない。胸の中で今一度決心を固めた。
***
「ホントに出るの?天狗。」
行動開始30分でもうシロナが弱音を吐いた。
「来るかどうかはあいつ次第だからこうして歩いとくしかないの。」
確かに、長い間ねばらないと出てこないかもしれないこともないからシロナには不向きなのかもしれない。
「でもなー、作戦上帰ってもらうわけにはいかないからなぁ。」
「うん、帰りはしない。しないけどちょいと休憩させて……。」
以外と体力ないんだな。シロナは。まあでも、ずっと登り道だからしょうがないのかな。ミカサは余裕そうだけど。
とりあえず、フェンスにもたれかかって小休憩にする。
「ほい。トッポ食べる?」
「サンクスー」
持ってきたおやつを二人に分けてやる。
空を見上げて気を休ませる。風が心地よい。
「以外と良い景色だなぁ。」
ミカサが言うので、自分もフェンスの向こう側を見てみる。
「おお。確かに。」
眼下には広くて閑静な住宅街、そこを抜けるとビルや、大きな建物が見える。左側を見ると山の間に海も見える。見るものを飽きさせない、バラエティな景色だ。
そんな景色を眺めていると、急に強い風が吹いてきた。
「アゲハ!この風は!」
ミカサが叫ぶと同時に私は力を発動していた。
「『ハイプレッシャー』っ!!」
「なにぃっ!?」
もはや連写の隙も与えてやらない。
「二人ともっ!」
「よっしゃあ!」
「シロナ、いきまーす!」
私の合図で、二人が思いっきり天狗の背中に乗る。「ぐえっ」と声をあげる天狗にお構いなく、ミカサとシロナは私が事前に渡した手錠、足錠をそれぞれはめた。
風が吹いて、ここまで約八秒。
「くそっ!三人がかりとは卑怯な!」
「卑怯だとは微塵も思いませんわ。」
平然と答える。
「とりあえず、本部に連絡っと。」
「やっぱり、お前そっち繋がりなのか!?」
「そっち?」
この単語が意味するものに、シロナだけはピンときていない様子。
「畜生こんなとこで捕まってられっかよ……。」
「っ!私だって二度も逃してなんかやらないわよっ!」
天狗に本気を出されては、自分はともかく、二人は命に関わるかもしれない。私は圧力を強める。
「風よ、荒れ狂えっ!『クロウズ・ハリケ…』」
「ほわちゃぁー!!」
「「!?」」
何が起こった!?天狗が力を発動しようとしたところに……
「「シロナ!?」」
ミカサと同時に叫んだ。シロナの手刀が天狗の首もとにクリーンヒット。綺麗に意識を奪ったらしい。
「へへーん。実はアタシ、空手二段。」
「………ナイス」
シロナの以外な活躍により、この件は落着した。
***
ラーメン屋にて。
「マジか……今月のバイト代が……」
「ごちそうさま。ありがとね。」
頭を抱えて俯くミカサに笑顔で言う。醤油、豚骨、塩をコンプした上、替え玉までして、ミカサの財布の中身を吹っ飛ばした。
結局、天狗はあのまま署に送られた。その成果から、後日自分たち三人に、警察の方から感謝状が表彰されるのだそうだ。その後、シロナと別れて今に至る。
「捕まえることはできたけど、結局手伝ってもらってるからね。半分は自分ではらうよ。」
「ああ、そうしてもらえるとこっちも助かる。」
ミカサがようやく顔を上げた。
「にしてもこの件、以外とあっけなく終わった気がするなぁ。」
「それは早かったからじゃない?あの時天狗が力を解放してたら今頃どうなってるか。」
「ホントホント。雲居さんがいてくれてよかったな。」
「確かに、あれは雲居さんの手柄だね。頼んだらまた手伝ってくれるかな?」
「楽しんでたみたいだし、手伝ってくれるだろ。」
そうか。またなんかあったら頼んでみようかな?
「じゃあミカサは?」
「オレ?いいぜ。火水はバイトで無理だけど。」
正直、本当に助かる。三人だと作戦の幅が広がるから。
支払いを済まし、ラーメン屋を後にする。
「それじゃ、また月曜ね。」
「ん。気をつけて。おやすみ。」
「うん。そっちも気をつけて。おやすみ。」
お互いに背を向けて帰路につく。すっかり日も落ちて半月が昇っている夜に、穏やかな心地よい風が吹いた
読んでいただいた方、ありがとうございます。学校は、そろそろ卒業式の季節。テストとか歌練習とかいろいろ忙しいなか頑張っております。拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします。