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009 スライムはペットに入りますか?~300円を超えるので却下

 サブタイトルに矛盾があります。

「――どこにいる?」


「はっ、見つけたのは王宮の中庭でそこから動いていません」


「そうか。手は出していないのだろうな?」


「もちろんです。騎士団長殿の命令を違える者はおりませんので」


 ん~?

 話が見えてこないなぁ。

 とりあえず、お城に何かが現れたってことはわかったんだけど……。騎士団長がわざわざ動くってことは何かあるんだよね?


「しかし、なぜスライム如きを騎士団長殿が気になさるので?」


『スライム?』


 初日に勇者(笑)が倒し損ねたのが逃げたのかな?

 だけど、危険なモンスターじゃないって言ってなかったっけ?


「やはり、スライム。これで王命を果たせるやもしれん」


 伝令に来た兵士と私が疑問に思う中、騎士団長は一人満足気に頷いている。

 兵士としては雑魚モンスターを見つけた報告をしたら、王命に関わることとか言われて一層混乱してるみたいだけど。説明しなくてもいいのかな?


「……あの、スライムが一体?」


「騎士団長殿!!」


「むっ、何か動きがあったのやもしれん。急ぐぞ!」


「はっ、はい!」


 慌ただしく駆け出す背中を追いかけて行けば、庭では兵士たちが手に長槍や網を持って上を見上げている。


『んん~? あっ、あれだ』


 一か所だけ今にも落ちそうな水滴が溜まってるところがあった。

 あれがスライムに違いない。


「いたな……!」


「おおっ、団長殿!! お待ちしておりましたぞ」


「うむ。兵長も元気そうだな」


 へぇ、一般の兵士にはきつく当たるのにあの人とは仲良さげなんだ。

 兵長と呼ばれたのは騎士団長よりも頭一つ分低く、筋肉の影響もあるけど身体は一回りほど小さいおじさん。いかにもベテランって感じが漂ってるけど、どことなく頼りない。


「しかし、団長殿に言われて城内を探してみましたが……スライムなんぞどうするのです?」


 やっぱり皆そこは疑問に思うんだ。

 こう言っちゃあなんだけど、雑……弱いモンスターの代表格みたいな存在だもんね。わざわざ騎士団長みたいな武力のトップが気にする対象じゃないということでしょ。


「うむ。貴殿も知っていようが、先日召喚された勇者たちに関することなのだ」


「勇者ですと……? 今のところ使い道がないと上層部が頭を悩ましている存在ですな」


『なんだってー!?』


 えっ、世界を救うために呼ばれてたった一日でそこまで評価が地に落ちてるの?

 さすがに見切りをつけるのが早すぎない?


「うむ。その勇者だが、文献に記されていたようにスライムを倒させてみたがレベルアップをしなかった。……そこで考えたのだ。もしかしたら、スライムに原因があったのではないかとな」


 逆転の発想だね。

 つまりは、喧嘩に負けたら自分が弱かったなじゃなくて、相手が強かったんだっていう発想!

 結果は変わらないのに、どうしてこじつけのようなことを思いつくんだろう?


「そして、このタイミングで現れたスライム。私の読み通りならば、奴は特殊個体なのだろう。あいつのせいで勇者はレベルアップをしなかった……そう考えるべきだ」


「なるほど! では、なんとしてでも捕まえねばなりませんね」


「ああ、もしもそのような能力を持っているのならばこれからの戦いを有利に進められるやもしれん」


 レベルアップを抑えるってことは、相手が強くなるのを抑えられるってこと?

 そんなことで戦いって変化するのかな?

 圧倒的に強い相手が現れたら、それ以上強くならなくても意味がないんじゃない?


「……ということで、悪いが奴を殺さずに捕獲してくれ」


「かしこまりました。……ただ、難しい注文ですね。スライムは液体状のモンスターで掴みにくいですし、強引にやれば死んじまいますからね」


「特殊個体ならば多少は丈夫かも知れんが、確証があるわけでもないからな」


「とりあえず、城内ということで初めから火矢の使用は禁止してありますが、それについては徹底させてましょう」


「……そうだな。城内に燃え移ることは元より、殺したところで解決しない問題だったら、我々はお荷物を抱え続けなければならなくなる」


「再召喚は出来ないんですか?」


「どうだろうな。出来るかもしれんが、出来なければ一大事よ。各国がこぞって勇者召喚を果たしたことで我々も大義名分を得たが、二度目となると非難されるかもしれん」


『自称勇者が言ってたように、他の国でも召喚は行われてたんだ……』


 私一人が知ったところで困る情報だけど、少なくともあの子どもを信じてもいい要素が追加されちゃった。

 というか、表ではあれだけ勇者様って拝みこんでたのに実際にはこんな風に考えてたんだ。人間っていうのはどこの世界でもずる賢いなぁ。


『利用されているとわかると、反抗したくなるのもまた人間なわけでして……』


 現在、私はスライムの横、いや真正面?に浮かんでいます。

 ちょっぴり気に食わない騎士団長のために、スライムを逃がそうと思います。

 ただ、飛べるからここまで来るのは楽勝だった。下では兵士たちが必死に槍の持ち手――石突きの方で地面に落とそうとしているけど、スライムはギリギリの高さまでよじ登っているので難しそう。

 かと言って、早く動けるわけでもない上に、侵入できそうな窓などはすべて閉じられているので逃げることは出来ないみたい。


『さてさて、どうしよっか?』


 かくいう私も自分が何もできないことを思い出していた。

 スライムを抱えて飛べたら一番楽なんだけど、それは無理。試してみたけど、やっぱり触れないから。

 話しかけてみても声も届かない。それ以前にどうやったら逃がせられるかのアイデアもない。


『……困ったなぁ』


 このままでは嫌がらせをする前に捕まってしまう。

 勇者たちが戻って来るまでに対処したいからわざわざ一人で来たんだもん。もしも、間に合わなかったらそれこそ強硬手段を取る可能性が高い。

 見た目通りの脳筋だったら、すでにアウトな状況だったからまだ救いはあるけどね!


 結局、私に出来るのはこのまま傍観するか――それか今こそ眠っている真の勇者としての力の覚醒を待つ、それしかないのだ。

 さあ、早く目覚めるのです!


『な~んて、そんな都合よくはいかないか……ん?』


 あっはっは~って笑ってたら、何か引っ張られるような感覚が……?

 辿って行けば、スライムと繋がる白い線。


『白い? あああっ!!』


『!?』


 さっき、騎士団長が倒したモンスターから回収した白い物がスライムに吸い込まれってってる~!!


『なんでっ!? どうして!?』


 前は適当に千切るまでどうすることも出来なかったのに!


『ぴ、ぴぎぃ!!』


『うわぁっ!?』


「――マズイッ、追……」


 奇声を発したスライムの様子に焦った騎士団長が声を上げるよりも早く、まるで撃ち出されるようなバウンドを見せ、そのまま城壁の一部を破壊してどこかに飛んで行ってしまった。


『えぇ……、い、意外とアグレッシブ』


 私と騎士団長、それに必死になって捕まえようとしていた兵士の皆さんは呆然と飛んで行った方角を見つめることしか出来ないのだった。



『えぇ……』


『ぴっきぃ!』


 日も暮れて来たので、お墓を避けて今日も今日とて委員長たちに張りつこうと思ってたら目の前にぷるぷる震える謎の物体が。

 うん。現実を否定しようとしけど、これどう見てもスライムだよ。


『もしかしなくても、昼間の子かな?』


『ぴーぴっき』


 どうしよう。

 絶対、私のこと見えてるよ。

 見えてることも問題だけど、一番の問題はなんとなくスライムの言いたいことがわかる気がする。ほんと、なんとなくなんだけど。


『ぴぃぴぴぃ!』


『うん、うん。落ち着いて?』


 どうやらお礼が言いたいらしい。

 大したことはしてない、ってか何にもしてないんだけどな。


『えっ? 私について来たい?』


 そんな大層な人間じゃないよ~、じゃなくて!


『止めておきなさい。私と関わると不幸になるわよ』


『……ぴきぃ?』


『ツッコまないでよ』


 決まったと思ったんだから。


『……まっ、いっか。ついてくるのは勝手だけど、どうなっても知らないよ?』


 ――だって、ユーレイなんだから。



《真の勇者》


「……まさか、スライムをテイムするなんて」


 結女とスライムの様子を陰ながら見守っていたら、驚きの展開が繰り広げられていた。

 スライムが見えていることにも驚いたが……結女があっさりと受け入れたことも信じられなかった。


「僕のことは拒絶したのにな」


 肩を落とす素振りを見せてみたが、誰かに見とがめられることはない。

 とはいえ、第三者目線で見ると明らかに不審者なのでこの場を離れた方が良さそうである。


「スキルがテイマー系なのかな? だとすれば、勇者たちのレベルが上がらないのは別の要因が……? 絶対に彼女が原因だと思ったんだけど……」


 なんにせよ、監視初日に早速得るものがあったことは喜ばしい。収穫もなく女の子の周りをウロチョロしていたら、仲間たちにストーカーを通り越して変態扱いされることは間違いない。


「今後も要監視だな」

 前編後編に分けるつもりだったのですが、中途半端になったので1話にまとめました。主人公サイドで仲間が出来たので、そろそろ話が動く予定です。

 ただし、次回は第二回異世界対策会議。再び、委員長をはじめとした女子たちが密談をします。

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