004 勇者が現れた!~ちょっと敵キャラ感が強いかも
話が進むとは言ったけど、説明回みたいな感じ。ただし、飛ばすとちょっとわかりにくい・・・なんてことがあったり、なかったり。
「――ちょっと、待ってもらってもいいかな?」
『へっ……?』
後ろを見て、右を見て、左を見て、上を見てついでに下も見て最後にもう一回後ろと見せかけて前を見る!
そんなことをしても誰もいない。私はぼっちだから。
いや、正確には一人だけいる。
突然現れて声をかけてきた――少年が。見た目的には中学生になるかならないかぐらい?
そこまで状況を把握してから、周囲の環境を思い出してみる。
今の時刻……夕暮れから夜になった辺り。
場所……墓が少しだけある小さな墓地。
人の気配……私と少年だけ。
『……なんだ痛い子どもか』
あー焦って損した。
さてさて、さっさと探検にいこ。
「だから、待ってってば」
『ぐえっ!?』
な、何をする!
「ごめんごめん。でも、待ってくれないから」
というか、あれれ??
『も、もしかして……』
見えてる?
「もしかしなくても、バッチリ見えてるよ。というか、触れてるでしょ?」
『うっわあああああっ!?』
ビックリしたー!!
「……いや、ビックリしたのはこっち。何なかったことにしてスルーしようとしてんの?」
だって、ねえ……?
今まで誰も気付かなかったんだよ?
それで、ここ墓地だよ?
とうとうヤバいもんの仲間入りしたかと思ってもしょうがなくない?
「……ハア、これが最後の勇者なんて」
『ちょっ! 人を見て落胆しないでっ!』
見た目が良いだけにショックが大きいからっ!!
『まさか、異世界に来て運命の出会い……な~んてことはないか』
雰囲気おっかないけど、子どもだもんね~。
さすがにないわ~。
「言っておくけど、こんな見た目でもアラサーだから」
えっ!? まさかの年上??
「事情は順を追って話すけど、僕は『真の勇者』だ」
あっれ~? やっぱり、ちょっと痛い子かな?
そりゃ、私やクラスメートは勇者として召喚されたけど自分で『真の勇者』を自称するのは違うでしょ。
「そして、君もまた『真の勇者』の一人だ」
『そうだと思ってました!!』
だよね~。
一人だけ勇者(笑)たちとは何か違うと思ってたんだよね~。
ってこら、そこ! 得体の知れないモノを見るような目はやめなさい!
「……まあ、いいよ。納得してくれたならそれで」
『ねえねえ、『真の勇者』ってどういうこと? 一応、クラスメートに勇者ってステータスが表示された人がいたんだけど?』
もしかして、嘘ついた!?
……そんな風には見えなかったけど、意外とやるね。
「ステータスが間違ってるわけじゃないよ。ややこしい話だけど、彼が勇者っていうのも正しいんだよ」
どゆこと?
「言っただろ、僕らは『真の勇者』だって」
目の前の自称『真の勇者』が言うには、この世界に召喚された中にはステータスに勇者と表示される世間一般的な勇者とステータスには表示されないけど勇者としての力を持っている勇者……『真の勇者』がいるらしい。
わかりやすく言うと、公式なカップリングと自分の中で考えた最強カプみたいなものかな。
「うん。全然違うけど、それで納得できるならそれでいいよ」
『わかってるって。漫画とかラノベとかで、落ちこぼれが勇者よりも強いチートを持ってるとかそんな感じでしょ?』
「う~~ん、そっちの方が近いかな……」
煮え切らないなぁ。
別にそんなにガッツリ理解する必要はないんだから、どうでもよくな~い?
『まあ、そんなことはどうでもいいのよ!』
結局、あんたは一体何をしに来たの?
「ああ、それは君をスカウトに来たんだよ」
スカウト!?
ふっふっふ、やはり大物の私には何もしてなくても注目は集める運命なのね!
「……いや、国王の頭上であそこまで堂々としている召喚者はさすがに初めて見たよ」
やっだ、そんなとこまで見てたの!
「うん、見てたんだよ。……もうね、あれを見て誘うかどうか躊躇するレベルだったよ」
ワハハハハ~、我の偉大さに恐れ戦いたということだね? んん?
「……本当にやめておいた方がよかった気がする」
ボソッと言わない!
「まあ、混乱しているんだろう。……うん、そういうことにしておこう。とりあえず、よくわかってないだろうから現状の説明をしておくね」
自己完結だなー。
ここで見放されたら面倒だからありがたいけど……、諦観の境地に至ったみたいに悟った顔するのはやめてくれない?
小学生の時に夏休みの宿題をすべてやらずに登校した時を思い出してムカつくから。
えっ? その時はどうしたって?
言い訳をせずに自主的に早退したよ?
それからは教師も親もに勉強関連で口出ししてこなくなってラッキーだったね!
ただ、度々バカな子を見る目をされるのはたまらなく嫌だったけど……。
「あの、何をいきなりしゃくれ面をしてるんですか?」
『無意識につい』
あまりに苛立って挑発的な態度を取ってしまったよ。反省反省。
「君たちがガンファーレの国王から言われたことだけど……」
『ちょっと待って! ガンファーレって何?』
「……国名だよ。今いる国の。ついでに言えば君たちを召喚した国の名前でもある」
へ~。ここそんな名前だったんだ……どうでもいいな!
「じゃあ、先に進めるよ」
どぞどぞ。
「国王から言われたことだけど、彼は肝心な部分を話していない」
ほうほう。肝心な部分とな?
「世界はたしかに危機に瀕している。だけど、勇者召喚が行われた国はガンファーレだけじゃないってことさ」
な、なんだってーー!?
な~んちゃって、話しの流れ的にそうじゃないかと思ってたんだけどね。
「この世界には六つの大国がある。その大国はかつて世界を救った勇者――僕たちの大先輩が骨を埋めたっていう国らしいんだけど、その国には召喚のための方法が伝承として残っているらしい」
『召喚した国じゃなくて、亡くなった国なんだ』
それはまた。きっと召喚国が悪い国だったんだろうな~。
「それについては真偽はわからないとだけ言っておく。ただ、迷惑なことに僕たちが召喚された理由はかつての勇者たちが残した勇者召喚だったわけだ」
勇者召喚ってどんなのなんだろう?
気になるな~。
「召喚に就いては詳しくわかっていないし、重要じゃないから省略するけど、現在の六大国の中で最初に召喚を行ったのが僕が召喚されたオーディナス帝国になる」
ふ~ん。まあ、国名なんて興味はないけど。
「あなたは……」
おっ? 何、なに? ケンカ売ってる? 買うよ? 買っちゃうよ?
「……なんでもありません。(相手にするのが、馬鹿馬鹿しくなってきましたよ)」
わかればよろしい。
小声で何か言ったみたいだけど、言いたいことがあるならハッキリ言ってね。
「僕が召喚されたのはバスの中だったのでクラスメートだけということはありませんでしたが……僕もあなたと同じように姿を認識されなくなっていました」
『ようやくかー』
長かったなぁ。説明回とか飛ばして読んだじゃうタイプの私には辛い時間だったわ。
でも、これからは私がいかに優れているのか。その片鱗がわかる話だからじっくりいくよ~。
「幸い、隣にいたのにいないことに気付いてくれた人はいましたけどね」
うわっ、さりげなく自慢してきましたよ!
私がボッチなのを鼻で笑ってやがる! 絶許!
「まあ、それでもなかなかに辛い日々でしたよ? 傍にいるのに、姿が見えないから召喚されなかったのだと思われていたのですからね……」
遠い目をしても誤魔化されないよー。
というか、本題ってそれなの? もうそろそろ勇者としての説明とかよくない?
主人公の活躍が遅くなるよ?
「……主人公があなたなら、作品は打ち切りにした方がいいと思いますがね」
ボソッと言うなーー!!
傷つくでしょう!
「ですが、そう考えているなら話が早い。僕も元々、これから先の話はまず用件を伝えてからがいいと思ってましたから」
『用件……?』
まさか、国王みたいに世界を救えとか言わないでしょうね?
疑ってみたけど、自称『真の勇者』が口にしたのは平凡な要求だった。
「『真の勇者』として、僕たちの仲間になりませんか?」
さあ、主人公の返答やいかに!?
どうでもいいですが、主人公をはじめとした登場人物の名前はまだ出ません。一番最初は誰かな~? 彼かな? それとも、あいつかな? この場で言っておきますが、主人公ではありません!(確定)