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002 勇者(笑)白くて変なモノが出て来たよ?~初めての××××

主人公は勇者をかなり舐めています。

「さあ、存分に力を振るわれよ」


「……ぞ、存分にって言われても」


『うわっ! 何コレッ!? ばっちぃ!!』


 案内された修練場の壁や地面には粘液の塊が散らばっていて、とても足の踏み場がない。


「……おや? 勇者殿はスライムを見るのは初めてか?」


『スライム? スライムってあの水色のちょっとおにぎりに似た見た目のアレ? そんなのどこにもいないじゃん~』


「ス、スライムって……まさかあの粘液がそうなんですか?」


「ええ。もちろんですとも。勇者殿には今からあのスライムの駆除をしていただき、レベルを上げていただきます」


『凄くいい笑顔で勇者様のために集めたって言ってるよ~? これはもしかしてフラグ建てちゃったんじゃないの? このこのっ!』


 っておじさんのフラグなんていらないか。

 それにしても困ったねぇ~。

 相手は善意で集めてくれたのに、期待してたのと違うとか見た目が汚いから嫌ですぅとか言えなくなっちゃったね?


「ど、どうすればいいんでしょうか?」


 おっ、さすがは勇者(笑)! チャレンジャーだね。

 装備まで用意してもらった手前、断れないのかもしれないけどね。

 断れない人間は早死にするっていうよ。気を付けなね。


「そうですな……まず勇者殿には天から授かった力があるはず。それを使用して見ていただけますかな?」


 あぁ、勇者(笑)認定された『伝説の力』ってやつね!


「わかりました。皆、どんな風になるかわからないから離れていてくれっ!」


「…………」

「…………」

「…………あいよ」


 一人だけでも答えてあげるなんてやっさし~。

 まあ、初めから近くに誰もいないんだけどね。


「出でよ! 聖なる剣! 選ばれし者の運命を切り開く宝剣――【光の剣】」


 うわっちゃ~。ダサい。ダサダサだよ……。


「……伝承では、【光の剣】と唱えるだけでいいはずなのだが?」


「はい。我々もそう伺っております」


「もしや、今代の勇者様だけ特別ということでしょうか?」


 ほらっ、現地の人たちにあらぬ誤解を与えてる!

 というか勝手にアドリブ入れない!!


「で、出ました!」


 誤魔化そうとしても無……って何そのしょっぼいの?


 勇者(笑)の出した【光の剣】とやらは、爪楊枝よりちょっとだけ大きいかなってぐらいの小さな剣。

 一応、名前負けしないように光って入るけど、指の間に挟んだら見えなくなるぐらいの小ささだから意味はないよね。


『そんなの見せびらかすためにあれだけ派手なアクションしてたの?』


 想像以上に勇者が痛すぎて見てられないよ。


「う、うむ。出てきたようだが。だ、だがっ! やはりレベル1では戦闘に使うにはまだ不向きのようだな!」


 気を遣わせちゃったね……ごめんよ。


「だがっ!! それもレベルを上げれば立派な大剣、いや伝承によれば天に届き、雲を切り裂くほどの長さになるという! そのためにもレベルを上げて欲しい!」


 必死かっ!

 あっ、いや必死にもなるか。アレだもんね。アレに自分たちの命運を懸けるとか嫌だよね~。


「はいっ! 頑張りますっ!!」


 そしてこっちは無駄に前向きだー。


「スライムは見た目通り、物理攻撃にはめっぽう強い。核があるから物理攻撃でも倒せないことはないが、慣れないうちは難しいだろう。だから、こうして松明を近付けてやれば簡単に駆除できる。さあ、やってみてくれ!!」


 ほほぅ……! 

 悲鳴のような鳴き声を上げながら、身体が部分的に燃えて……見た目にはわかんな~い。


「わかりました! こうですね!」


『わかったの!?』


 王様の話を聞いた時といい、理解力すごっ……ってわけじゃないんだろうなぁ。きっと。

 わかってなくてもわかったって言っとけ感が半端なく漂って来てるもん。

 幸い、こっちの世界の人にとっては常識みたいで疑われてないけど、後ろのクラスメートたちは怪しい人を見る目は元からだったね。

 じゃあ、問題なし。


「さあ、邪悪なモンスターめ! 僕が成敗してくれるっ!!」


「あ、あの、勇者殿……? スライムは大量発生すれば困りますが、基本的に無害な生物なのですが?」


『いいのいいの。気分の問題だから放っておいてあげて。……そんな言葉をスルーされる私』


「やりましたっ!」


 そんなこんなしているうちに一匹の焼却が終わったみたい。


「その調子です。しばらくすればレベルが上がるはずですから続けてくださいっ!」


「はいっ! 任せてください!」


 そこから一体に火を点け、また火を点け……やってることは種火配り。


『ふわぁ~、退屈ぅ……?』


 あれっ? さっき、煙なんて出てたっけ?

 スライムが燃えた跡から、モクモクと……勇者(笑)に向かってる?

 気のせいかと思ったけど、勇者(笑)が持っている火の向きとは逆に向かってんだから間違いないよ!


『あっぶな~~い!!』


 私、勇者救いマース!


『キャッチ……ってかこれなんなの!?』


 煙かと思ったら、ネバネバするよぉ!

 勇者(笑)のせいで白いネバネバするものが手や髪に絡みつくよぉ!


『勇者(笑)が出した白い変なモノがか弱い女の子を襲ってるよぉ~~!』


 というか今まで触れなかった反動なのか、この白いヤツ予想以上に絡まってくる!

 もう家の玄関に張られた蜘蛛の巣並み!


「あの~、あと何回やればいいですかね?」


 コラー!

 私がこんなに苦労してるのに、飽きてるんじゃないわよ!

 あとで覚えてなさいよっ!!


 ……この日、修練場からスライムがいなくなっても勇者(笑)がレベルアップすることはなかった。

 ふんっ、いい気味ね!


 ただ、このことで勇者一行認定されたクラスメートと私自身にちょっと面倒なことが起こるなんて思いもしなかった。

サブタイトルのXXXXはスライムです。


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