転生先は魔法世界でした。その9
敵の正体が分かったところでどうしようもなかった。
あんなスピードで動かれては、銃なんて当たるわけがない。
それに、先に行ったはずのジョンは?
どこへ行った?
まさか、気がつかずにまだ山頂へ向かっている・・・?
一人じゃとても勝てるとは思えない。
A級という物を完全になめていた。
こんなところで私の性格が仇となった。
「ジョン・・・早く来てよ。」
成人してから訓練でつらいときも一切泣いたことがなかった。
引退後に、自分のミスで自分自身が死ぬかもしれない。
悲しい、涙が出そうだ。
「でも、だめ。私一人でも何とかしなくちゃ。」
仕事だから仕方がなく?
いや違う。
軍人時代と同じ
「人を、この世界の人を守るために!命を賭してでも戦う!そして勝つ!」
ジョンが居ないから勝てないんじゃない。
私が自分の経歴を過信して軽い気持ちだったから勝てないんだ。
まずは、相手を見極めなければならない。
だが、襲ってきたと言うことは、こちらの事はバレている。
いち早く、対策を生じてこの場から離脱しなければならない。
鷲、つまりは猛禽類。
ただの鳥として考えるなら、驚異なのは、足と嘴、それに高い飛翔能力。
だけれど、ハーピーには人の上半身がある。
人間の頭脳があると言うことは、思考能力は少なからず高い。
視野で言えば、鷲ほどではないはずだ。
なら、おそらく見えにくいであろう遠距離から確実にやるのが妥当であろう。
だが、あの飛翔能力だ。ほぼ当たらない。
なら、飛翔能力を奪ってしまえば良い。
「って、どうすれば良いんだ?」
再び、風を切って近づいてくる音。
しゃがもうかと思ったが、それよりも横へ全力で走る。
相手は飛んでいる、と言うことは急なUターンはできないはずだと考えたからだ。
予想通り、直線に飛び大きくUターンをして返ってきた。
また自分に向かって飛んでくるので、今度は正面から拳銃で頭を打ち抜く。
といっても、適当に打ち抜いた程度では、残りの力で向かってくる可能性がある。
だから、狙う位置は、脳。
体の制御を完全に失わせるために、脳幹を確実に狙う。
拳銃で、ぎりぎりまで引きつけて確実に。
バンッ!
真っ赤な血しぶきが跳ね返ってきた。
確実に当たった証拠。
ハーピーの体は、制御を失い。
その場に崩れ、痙攣をしている。
「やった・・・、でもA級っていうのはこんなに簡単なの?まぁ、それよりもジョンは、どこ・・・?」
本当に気がつかず、山頂へ行ってしまったのだろうか?
でも今私がハーピーを殺したからこれ以上長居する理由はない。
道を使わず、木々をかき分け最短のルートで山頂へ向かう。
こんなに返り血を浴びてしまったが、臭いとかは大丈夫だろうか?
一応、私も女の子な訳だしそこら辺は心がけたい。
そんなことを考えながら山をどんどんと進んでいく。
すると、いきなり強風が殴りつけてきた。
あまりの風に地面に倒れ込む。
幸い、近くに生えていた木に捕まり、それにもたれながらやっとの事で立ち上がる。
風がとても強い。
だが、倒れ込むほどには風は強くない。
向かい風の方向を向くと息がしにくいとかそんな程度だ。
そんなとき、拳銃を片手にし、木に寄りかかりながらに移動するジョンを見つけた。
もう、向かう必要が無いんだ、もう戻って良いと伝えるためにジョンに近づいた。
ジョンまであと十数メートルのところでまた突風が吹いた。
さっきと同じ倒れてしまうほどの風。
また私は風で倒れてしまった。
その倒れる瞬間にとある物が見えた。
さっき倒したのとは比べものにならない。
羽を広げたら10メートルは確実にあろう女性の上半身を持つ巨大な鷲。
「あれが、本当の・・・フォルドコアトル・・・?」
それに信じられずに立ち上がると、別のことに驚いた。
ジョンが居なくなっていた。