派遣先は魔法世界でした。その2
「まず、この世界の魔王には現時点では戦いすら挑めません。」
五十嵐「挑めない、というのはどういうわけだ?」
エリサ「え~っとですね、確かこの魔法世界に現れる魔王には必ず4体のA級の部下がいるそうで、それらを倒さなければ魔王城にたどり着けないというわけです。」
神父「おぉ、さすが勇者様!そのA級というのは何か分かりませんがだいたいは合っています。」
A級というのは、地球で使われている異世界生物の強さを表す物だ。
下から、G、F、E、D、C、B、A、S、SS、神 級となる。
G級は無視できるレベル
F級は子供でも倒せるレベル
E級は女でも倒せるレベル
D級は成人男性が倒せるレベル
C級は戦闘訓練してやっと倒せるレベル
B級は戦闘経験者では倒せるレベル
A級は重火器を用いて倒せるレベル
S級は戦車を用いて倒せるレベル
SS級は核爆弾を用いて倒せる確率が半分以下のレベル
神級はもちろん人類では太刀打ちができない
俺達を戦闘能力だけでレベルに当てはめるなら
俺、五十嵐俊介がA級。
岡田雪子もA級。
ジョン・マディ・クーモアがB級。
エリサ・マリナ・シュタイナーがE級だ。
だが、ジョンは隠密行動に長けているらしく、それらを含めると俺と同じくA級と言ったところだろう。
エリサだが、この世界の研究者という情報しかないので戦闘能力は資料の上での判断しかできない。
エリサ「でも、この情報数年前の物なので詳しくは知らないんですよ。」
神父「では、その4体について説明いたしましょう。まず一体目、ヘルリザード、獄炎の竜人です。二体目は、ディープネレイス、深海に住まうニンフです。3体目、フォルドコアトル、風吹き荒れる高山に住まう鳥人です、4体目、ヴェルドジリスク、猛毒の沼に住まう鳥とトカゲのキメラです。」
これは、魔王だけというならいざ知らず下手をしたら配下の方が強い気がしてきた。
獄炎に深海に暴風に猛毒と来たか・・・
今までにいろいろな世界を回った俺でさえ苦労しそうだ。
岡田「でも、そいつらに重火器とかって効くんですかね?」
ジョン「この弾丸なら効くと私は思いますね。」
二人は一発の弾丸を取り出した。
俺以外の三人は神製の道具を持っているが、そんな物に頼っていてはダメだろうと俺は考えている。
いままでの世界でもそれで通用した。
五十嵐「俺のこの刀達も通用すると良いのだが・・・」
エリサ「そんなに心配ならですね、こんな魔法があります。”エンチャント”」
彼女が俺の刀の内の一つに触れながらそう唱えた。
---魔法使用マナ15×術者ゲート21、よって315のエンチャントを付与します。
神父「さ、315ですとっ!?それはっ!ヒヒイロカネさえも断ち切ってしまうではありませんか!?それを持ってすれば幹部などひとたまりも無いです!」
315か・・・数値で言われてもよく分からんがいち早く試し切りをしてみたい。
エンチャントで付与された刀の刀身は薄く紫色に染まっている。
美しい、だが他の刀達もしっかり愛することを忘れない。
岡田「そんなのつまんなくないですか?そんなチート武器、楽しさが半減しちゃうんでいざというとき以外は使わないでくださいね?」
ふむ、それもそうだ。
それではせっかくの強者との渡り合いもできなくなる。
五十嵐「わざわざすまないが、やはり解いてもらえまいか?俺の刀はそのままでいて欲しい、いざというときはまた頼むよ。」
エリサ「そうですか、それほどに日本刀のことを愛しているのですね。」
再び刀に触れると元の銀色に輝く刀に戻った。
神父「あぁ、せっかくの武器が・・・ゴホン、はじめはヘルリザードを倒すことをおすすめします。地獄池と言うところにいます。どうかご無事で」
さぁ、まだみぬ強敵、と言う物はいるのだろうか。
エリサ「あ!最後に、この地図ってまだ合っていますか?」
一枚の紙を持って近づく、神父はそれをのぞき込むように確認すると
神父「はい、大丈夫です。合っていますよ。」
エリサ「そうですか、では世界に名を刻むため、頑張ります。」
教会を出て、地獄池に向かう前にとある場所へ行く。
金に関しては支給された金があるため困ることはない。
飯屋だ。腹が減っては戦はできぬと言う、食事を終え次第地獄池に向かうとしよう。
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もうすでに地球と交流をしているだけあって、現地の料理にはなじみ深い物もたくさんあった。
日本人として、ここは和食で行こうと思い、
五十嵐「和食御膳を頼む。」
ジョン「では、私も同じ物を」
このジョンとは少し気が合いそうである。
興味を持って食し、日本を好きになってもらえればありがたい。
岡田「じゃあ、えっとエビフライ定食でお願いします。」
おもわず鼻で笑ってしまった。
ここに来てまでエビフライ定食とは・・・ふふっ軍人上がりとはいえ心は子供なのだな。
エリサ「こちらの世界の料理をお任せで」
俺達が地球の物を頼む中で魔法世界の研究者エリサは研究の一環であろう、こちらの世界の料理を頼んだ。
10数分待つと料理は続々と届き始めた。
店員「こちら、和食御膳です、こちらはエビフライ定食。そしてこれがこの世界特産品をたっぷりと使った海鮮丼です。」
エリサ以外は、よく見慣れた物が来た。
エリサの料理はと言うと、見た目は一般的な魚介丼、使われている食材は、米以外はすべてこちらの世界の物だそうだ。
彼女としても、とても興味があるように見える。
五十嵐「では、手を合わせて」
ジョンは慣れているらしく、直ぐに手を合わせた。
エリサは周りの見よう見まねで手を合わせた。
ふふっ、こうも一つの文化を共有するというのは良い物なのだな。
五岡ジ「「「いただきます。」」」
エリサ「いただきます」
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五岡ジ「「「ごちそうさまでした。」」」
エリサ「ごちそうさまでした。」
良い感じに腹もふくれてこれならやれそうである。
気分も少し良くなっていたので、3人分の飯代を出してやった。
といっても、支給された金なのだが、
店員「勇者御一行様、世界をお願いします。」
店を後にする俺達に勘定をした店員が小走りで追いかけて言ってきた。
五十嵐「大丈夫だ。きっと救ってみせる、それにあの和食はなかなか良かったぞ。」
そう告げて、店を後にする。
食後の運動をかねて地獄池までは徒歩で向かった。