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派遣先は魔法世界でした。その16

「ハク!大丈・・・え?ハクな・・・の?」


「そう・・・どうだ。我だ。・・・。」


ジョンと合流後、一人で3匹を相手にしているハクの援護に駆けつけようとここまで走ってきた。

ハクの実力を知らなかったから、もしかしたらハクが危ないかもしれない、そう思っていた。

だけど実際ハクは、傷だらけながらも3匹を殺しており人のような姿でうなだれていた。

黒いどろっとした塊の直ぐ横で。


「なにが・・・あったの?3匹は倒しきってそれで・・・?」


ハクの視線は、黒い塊に注がれていた。

ハクは質問には答えずずっとそれを眺め続けていた。

ハクのどこか重たい雰囲気に私も、そしてジョンも何も言い出せずにいた。

まるで時が止まったみたいな沈黙が1分程度続いた。


「ラ・・・ライアは、フォルドコアトルは死んだ。我の目の前で得体の知れぬ黒い影によって・・・。」


さきに沈黙を破ってきたのはハクの方だった。

フォルドコアトルは死んだ。

ハクの目の前で、それも得体の知れぬ黒い影によって。

そう言った。


「ねぇ、ハク。その得体の知れない黒い影って何か言ってなかった?」


この世界に来る前、あの4人が初めて会った日。


「我のことを魔王の一味か?と聞いてきた。勇者殿の仲間かと思い訪ねたら、”勇者?そんなものフィクションさ”と言っていた。言葉の意味は分からなかったが。」


勇者派遣会社の社長からあることを聞かされた。


「消える際、”いつになれば帰れるのかな”とも言っていた。」


社長は、こう言った。

”魔法世界には、影内かげうち しのぶっていう日本人転生者が居るから、できることなら保護しておいてね。”

転生者。

それは、何かのきっかけで地球と異世界が重なったときにごくまれに向こうの世界へ渡ってしまった者のこと。

神曰く、転生という奇跡は神にも予想不可能であり、転生した者は、神に近しい力を手に入れる。


「雪子さん、それってもしかして・・・。」


「えぇ、たぶん・・・いや、確実にそうでしょうね。」


思わぬところで、サブミッションに接近していた。

これは、俊介、エリサの二人にも相談しないといけないね。


「ハク、助けてくれてありがとう。フォルドコアトルのことは、どっちみち殺すつもりだったの。」


「あの子の事は・・・もういい。それよりあの影を、殺してくれ。」


それは・・・


「それはできません。ハクさん。彼は、私たちと同じ地球人かもしれません。」


「それなら我は、もう力を貸すことはない。すまないが、勇者殿。この山には入らないでくれ。」


なんとなく覚悟はしていた。

だが、実際言われるとすこし痛い。


「えぇ、分かったわ。もうここには来ない。ジョン行きましょう、協会でエリサ達を待つよ。」


ジョンは、それ以上何も口にすることなく私より先に山を下っていった。

私は、途中でハクの方を振り返った。

元の姿に戻っていた。

初めは静かだった山にも、元々はこうだったであろう生き物の気配であふれていた。

私は、何をしたんだろうか。

ただただおびえていただけのように思う。

ジョンは、子供を殺し、ハクは、傷を負いながらもハーピーを殺した。

まだ見ぬ、彼でさえフォルドコアトルを殺した。

私がこの世界に来た意味はあったのだろうか。

そんな疑問を抱えて、ジョンの後を追うように山を駆け下りた。


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