派遣先は魔法世界でした。その14
ハクの縄張りを出た辺りからやはり、生き物の気配などが一切無かった。
「まさか・・・ここまで静かになってしまっていたのか・・・。」
ここ最近の森の状況をハクはよく分かっていなかったらしい。
ジョンの行動がうまくいっていることを願って、山の頂上へ向かった。
山を進んでく間に、風が強くなってきた。
「この付近のこの強風って前からずっとあったんですか?」
「この強風はな、どこの山よりも激しいと言われておる。故に、嵐山と呼ぶ物もいるのだ。」
この強風ももしかしてあのハーピーの仕業かとも思ったが、流石にそれは考えすぎだったらしく、この山独特の現象らしかった。
「着いたぞ。勇者殿。今後はどうするつもりだ?」
今真っ先にするべきは、ジョンとの合流だろう。
ジョンは今ハーピーの巣で戦闘中・・・のはずだ。
すると、トランシーバーにコールが入った。
「雪子さん、聞こえますか?」
「えぇ、聞こえてるわ。それより大丈夫なの?」
ジョンとは、この派遣勇者の仕事で初めて会って、そんなに時間はたっていないがジョンの身の安全が心配だった。
でも、聞こえてくる声からは、なんともなさそうだ。
「大丈夫ですよ、子供はもうほとんど居ません。それより、中型の個体が2体ほど飛んでいくのが見えました。気をつけて下さい。」
「えぇ分かったわっーーーー」
その会話の途中で、
「勇者殿!逃げろ!」
ハクの声が響いた。
それと同時に、大きな物体が風を切って近づいてきたのが分かった。
一目散に真っ正面に走り、途中で横に転がり、回避した。
さっきまで走っていた道を大きな人型の鳥が通過していった。
あれは、私が倒したのとほとんど同じサイズ!
宙でUターンをし、再び私目掛けて飛んでくる。
再び、横に避けて、そのハーピーは、ハクに捕まった。
すると、捕まったハーピーは大きな悲鳴を上げた。
おもわず、耳をふさぎたくなるような酷い悲鳴だった。
「勇者殿!こやつは、仲間を呼んでおる!ここは我に任せて同士殿と合流しろ!」
「わかった!」
風と鳴き声で音がかき消されないように声を張り上げ、ジョンの詳細な居場所は分からないままその場から離れた。
走りながら、トランシーバーでジョンにコールする。
「ジョン!今どこ!?早く合流しないと!目印になる物は!!?」
「雪子さん!僕が言った爪痕って覚えてますか?それがあった木の所まで何とか降りてみますそこで合流しましょう!」
「少し距離がありそうだけど、分かった。合流したらすぐハクの援護に向かうから!」
「ハクって誰ですか?まさか、痕跡の・・・?」
「そう!ここの元主!とにかく時間が無い!できるだけ急いで!」