派遣先は魔法世界でした。その13
「えっと、そのすみません・・・何も考えてなかったです。それと、さっきハクさんが言っていたとおり自分は勇者、派遣勇者です。」
今指摘をしなければきっとこの後指摘する暇なんて無いだろうと思った。
「なるほど、本当に勇者殿であったか。それと我のことはハクで良い。」
「ありがとう、言葉に甘えさせてもらってハクって呼ばせてもらうことにするわ。で、作戦なんだけど・・・どうしよう。」
ハクの戦闘能力が自分の想像通りならば、勝てる見込みはある。
「あやつは、空を舞い、知性を持つ。いかにして倒すか・・・やはり正面突破かの。」
自分も正直初めから正面突破で行こうと思っていた。
だが、それでは自分一人で行ってしまえば確実に返り討ちに遭う。
作戦を練って隠れながら行くにしても、ハクの大きさを考えれば、どう考えても正面突破のみである。
「やっぱり、正面突破しかないですよね・・・。それと言ったか忘れましたけど仲間が捕らえられてるんです。」
「ほう、ならその同士殿に囮になってもらおう。猛禽類の特徴を使えば、子供などたやすく倒せる。あいつらは餌を求めて兄妹同士で争い合う、そしてその最後の一匹だけを相手すれば良い。」
「・・・、大丈夫ですかね?」
「何もしないよりかはましであろう。」
トランシーバーの電源を入れ、ジョンにコールする。
「生き物は見つかりましたか?」
「えぇ、大丈夫。それといきなりだけど囮になれる?子供達の餌役なんだけど・・・」
「それは・・・無茶をさせますね、そんな案を思いつくのは貴女ではないですね?察するに今そこに居る生き物は知性がある!どうですか?」
「当たってるわよ・・・猛禽類ってのは餌を取り合って兄妹同士で争い合うらしいの」
「なるほど、最後の一匹だけを確実に殺せば最小限の弾でいけそうですね。では、終わり次第こちらからコールします。」
ブツッ
・・・。
あっさりとジョンは了承をしてくれた。
それは良いがとても心配だ。
「同士殿はなんと?」
「やるそう・・・です。」
「まさか、そこまですんなり受け入れてしまうとは・・・」
私もそう思う。
「じゃあ、親以外は何とかなりそうですね。親の方は・・・」
「直接叩くしかないだろう。それにあいつは我の手で直々にやらなくてはいけない。それは我の使命だ。」
「分かりました。取りあえず頂上付近まで行きましょう。」
「乗せてくぞ?」
「お言葉に甘えて。」
白くてモフッとした大きな背中にまたがる。
心地良い匂いがする。
「しっかりと掴まっておれよ。」
大きなぬいぐるみにでも抱きつくようにぎゅっと体に掴まった。
あの巨体からは予想も付かないような静かな足音で木々の中を駆け抜けた。