電気6 良い夢を
Kは思い悩んでいるのか、そこからあまり話さなくなった。むしろ仕事をしていて楽しくなさそうに見えた。
「最近どうや?」私は自動販売機のそばでKに質問をした。
「最近は特に……ですね。仕事をしていても、エアコンを見ていてもあまり楽しくありません」
ガタンという音と共に、自動販売機の当たりのルーレットが回る。今日も数字は5556と決しておしいとは思わない結果である。
「そうか、趣味とかないの? 楽しい事あったらまた違うんちゃうん?」
「僕そういった事ないんですよねー。毎日が何もする気が起きないというか、考えるだけで終わるんですよ」
私は先日神様からお告げがあった。
Kを救えと……彼の寿命を延ばすのはお前自身だと。
そして神様はこう言った。
「一度だけ夢を叶えてやる。決してお前の夢ではない。Kの夢だ。Kが楽しい夢を見れるようにこれを渡すんだ」
風が恍惚に吹いた。台車に載せられたダンボール箱の入庫票がヒラヒラと空中に舞った。私はその紙が弧を描くのを見ながら
「これ、なんか良い夢見れるらしいで。一回してみたら?」と渡したのはおもちゃのような黄色い星のペンダント。
「なんか、少女アニメに出てくるやつですね」
「俺もそう思った。でも街中の一部で流行ってるらしいで。寝る前に首にぶら下げて、一、二分願いを込めて寝たら、良い夢見れるって」
「そうなんですか。なんかよく聞きそうなあれですけど」
「よく聞きそうなあれやから一回やってみ。無駄だと思ったら、すぐに返してくれたらいいから」
私は無理やりKのポケットにペンダント入れた。祈りのペンダント。Kが気に入ってもらえると思ったが、残念な結果に終わった。
それでもKは必ず実行してくれるだろう。そして次に会った時は全力の笑顔で話しかけてくれるに違いない。




