電気19 名もない花
「どうだった?」私はKが実行しているのを確認して聞いた。
「もう凄かったです。エアコン付け
させられたり、家族の論争に巻き込まれたり、最後は人殺しそうになるし……」
「そうか……まぁまた進歩したからいいやん」私はKの肩をポンと叩いた。
「まぁある意味そうですけど。うーーん」
Kは納得のいかない表情で悩んでいた。おそらくKは不可解な夢を解く事が出来ないだろう。むしろ今日の明日忘れているかもしれない。
「人生良くても悪くても、人を蹴落とす事したらあかんな」
Kはそうですねという顔をしながら、また夢の解読にいそしんでいた。
Kの一つの事しか考える事が出来ない性格が好きだ。私はいつも周りの事を気にしながら、生きて損をしている。Kの一途な、言いかえれば単純な性格を妬む事がたまにある。
「おーい、コマ使い」上司にそう言われ、Kは小走りで上司の方へ向かって行った。
「純粋な心を悪用する者。それを認め、誉める者。人間社会はパラドックスだ」
Kは上司に怒られ、頭をペコペコと下げていた。それを遠目で見る私。
「名もない花」が会社にいるからこそ、他の花が輝いてみえる。
「名もない花」こそが本当に素晴らしいものだと、神様が教えてくれているんだぞとKの耳元で言ってやりたかった。




