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名もない花  作者: 林 秀明
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電気1 出会い

夕暮れの太陽の日差しがKを温かく包んでくれた。冬の寒空に天使の贈り物が降り注ぐ。

しかしその温かさはKにとっては過酷だった。人が優しくするからこそ涙がこぼれ落ち、心が痛くなる。

無表情の会社机にKの温かい涙はこぼれ落ち続けた。


私は某電気工事会社に勤めて約5年が経つ。大阪支店に3年、神奈川支店に2年転勤し、去年の6月にまた大阪へと帰ってきた。久しぶりの大阪の空気に声のトーンも高くなる。人も水も故郷の方があうと身体に実感した。大阪支店では新しい社員が増え、知っている顔よりも知らない顔の方が多かった。なんせ2年間転勤していたのだから……


「パヤツキー、元気にしてた? 白髪増えたなー」

第一声から髪をくしゃくしゃにされ、肩と肩がぶつかる。


「元気にしてましたよ。少し顔がボロボロになりましたが……無事帰ってきた良かったです。なんせバイクで500キロかかりましたから」


他愛のない近況の報告に「おぉ!!」「そうか!!」と言葉の節々で驚きが飛び交う。

普通の会話でも面白さを求める大阪人。リアクションを大きくした方が会話が楽しくなるのだろう。


そんな会話をしている最中、眼鏡をかけた真面目そうな男の子が立っていた。眉毛まで伸びる前髪に黒縁の眼鏡。少し細い目に福岡訛りのイントネーションが入った喋り方が特徴のK。それがKとの出会いだった。

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