着信1件
その世界の生き物は、生まれた時から1つの電話を持っていました。
電話は受話器と、発信用のボタンが一つあるだけのシンプルな電話でした。
それは一生に一回、1分間だけ、過去の自分と話せる電話でした。
ある男はこう使いました。
「...おい、いいか?○年×月、△社の株が急騰する。その前は常に底値だから、目いっぱい買っておけ。
そうすればお前は大金持ちだ。後悔したくなかったら、今すぐ買え。じゃあな...」
ある女はこう使いました。
「...通じてる?よかった。あのね、今あなたの親友の□□っていう女、近々あなたが今狙ってる✧✧君を寝取るわよ。はぁ?信じられない?未来の私が言うんだから絶対起こるに決まってんでしょ。そうとわかったら今すぐ逆にあんたが寝取ってきなさい。あ、あとねそのあとだけど...」
ある猫はこう使いました。
「...にゃーにゃーにゃ、にゃにゃにゃーにゃー、にゃぁ、にーににゃああ、ぐるるる、ぐるる、うにゃあ~...」
訳:おまえ、今生きてて楽しいか?人間の顔色ばっか窺ってよ。俺たち野良猫はもっと自由な存在、ぐふふ、いや待て待て、ぐふふ、のどをなでるな、ぐふふふふふふ
あるプラナリアはこう使いました。
「........................」
訳:あ、またちぎれた。
ある男の子はこう使いました。
「...えっと、きこえてるかな。ああ、良かった。あのな、意外と車にひかれてもさ、みんなかわいそうとか思ってくんないみたいだわ。うん、今周りのヤツみんな写真撮ってやがる。あと、すっごい痛いし、お前が思うより死ぬまで時間あるみたい。ほんとに、早く死なせてって思うくらい。
だからさ、自殺とかやっぱやめた方がいいわ。確かにつらいよな。親にもクラスメイトにも見向きされない生活は。でもね、たぶん死ぬよかましみたいだ。今まさに死のうとしてる俺がいうから間違いないよ。
うん、やめる?そりゃいいや。まずは明日の宿題でもやりな。じゃあごめん、もうすぐ死ぬから、バイバイ...」
自殺を止められるのは自分だけです。 ―とある福祉系の冊子より