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アスター

 隠れ家に戻って6日目に、リンドがやってきた。盗賊達の尋問も終わり、エドリンの方では、盗賊の残党・協力者の捕獲が終わったそうだ。アスターでは他の犯罪組織との絡みがあって、少し対応が遅れているが、後2-3日あれば終了するらしい。我々も、もう灰の森にとどまる必要はなく、町に移動しても問題ないそうだ。ただし、まだ連絡したいことがあるので、行き先がわかるようにして欲しいと言われた。盗品の所有権の確認は、所有者や遺族に連絡が付かない場合など、未確定の物がかなりあり、もう少し時間がかかるらしい。

 今回リンドがやってきたのは、エドリンの冒険者ギルドの代表としてゴブリンの村へ謝罪とお礼に行くためであり、同行して族長に紹介してもらえないかと依頼された。全員で一度ゴブリンの村に寄ってから、我々はアスターに向かうことになった。我々と、残っていたゴブリンの戦士、残りの食料を運ぶ馬車、エドリンからの使節と護衛、総勢40名近くでぞろぞろと移動した。


 ゴブリンの村に着くと、少し意外だったことに、人間の町からの来訪者を敵視する者は全く居なかった。

 「300年前、魔王と6族の戦いの際にも、魔人達は様々な奸計によって、人間とゴブリン、あるいはその他の種族間に争いを起こし、我々の力を削ごうとしました。魔人とはそのような存在なのです。今また魔人が暗躍する時代となったのならば、我々は過去の不幸な出来事を水に流し、やってくるかも知れない苦難の時代を、手を携えて乗り越えていけるように備えるべきでしょう。」ゴブリンの族長は、そう言って、来訪者を歓迎した。前にもちょっと思ったけど、この族長すごい人格者なのではないだろうか。


 ゴブリンの村の食料備蓄状況を確認すると、過去の記憶にないほどの備蓄量に達しており、楽に冬が越せるどころか、1-2ヶ月遊んで暮らしても問題ないほどの量だそうだ。

 しかし、ゴブリン達の表情は必ずしも明るくなかった。魔人の出現はゴブリン達の表情にも影を落としている。村長の話によると、灰の森の北の荒れ地には、昔は豊かな森が広がっていて、5万人を超えるゴブリン住んでいたらしい。魔王と6族の戦いの最後の頃に魔王が放った呪いにより、森は荒れ地になり、ほとんどのゴブリンが死んだそうだ。


 村に一晩泊まり、翌日アスターに向けて出発した。ガンダリと3人のゴブリンが灰の森の出口まで案内してくれた。

 「また来い、いつでも歓迎する」森の出口でガンダリが言った。

 「ああ、しばらくしたらまた来るよ。盗品の処理が終わったら、ゴブリンの使いやすそうな槍でも土産に持ってこよう。」と答える。

 「それから、これを持って行け」ペンダントのような物を渡してきた。黒檀のような光沢のある3センチ角くらいの木の板に複雑な文様が刻まれている。

 「これは?」と問うと、

 「ゴブリン族の友の印」とガンダリが答えた。

 「ありがとう。大切にするよ。」ペンダントを首にかけた。



 アスターに着いたのはゴブリンの村を出て3日目の昼過ぎ頃だった。エドリンの町より大きい。南北方向に少し細長くなっている。アスターからは、東のエドリンに行く街道の他に、西に2本、南に1本の街道があり、人や物の出入りが多いそうだ。

 「特に北西の方にあるドワーフの国からは、上質の金属加工品や宝石が輸入されてきます。その取引のために、アスターには商人も多くいます。」アベリアが教えてくれた。

 町の手前に少し大きめの川が流れており、橋が架かっていた。川下側に船着き場があり、船が停泊している。川を利用した水運が行われているらしい。町の南側には畑地や果樹園が広がっているが、北側はあまり開けておらず、小さな森や、丘陵が近い。遺跡やダンジョンはそちら側にあるようだ。


 「最初に冒険者ギルドに寄って。ギルドの資料室を見たいけど、いいかな?」女達に確認する。

 「はい」とローズ。

 「はい、もちろんです。」とアベリア。

 「はい。行くなら最初に薬草を売ってしまいたいですー。」レスリーが言う。

 「ああ、常時依頼の薬草を採っていたんだっけ。じゃあ最初に窓口だね。」

 レスリーの案内で、冒険者ギルドに着き。レスリーとローズを伴って冒険者ギルドに入った。アベリアはあまり興味がなさそうなので、子供達と一緒に馬車で留守番をしてもらう。はじめに、入り口近くにあるギルドの窓口に行った。

 「常時依頼のハルノカ草を採集してきました。3人パーティーです。」レスリーが言う。

 「では、こちらにハルノカ草を。冒険者登録証をお願いします。」ギルド職員がトレーを取り出しながら言う。採集したのはほとんどレスリーなんだが、と思いながらも登録証を提出する。レスリーが魔法のバッグから薬草を取り出す。多い。そんなに集めてたのか。

 「多いですね。」と言いながら、職員が薬草を運び、魔道具で調べる。それから登録証を魔道具に載せて操作している。トレーに登録証と銀貨を乗せて戻ってきて差し出した。

 「ハルノカ草48キログラム。こちらが報酬の銀貨96枚になります。それと、おめでとうございます。3名様ともランクが7級に昇級しました。」何にもしてないのに昇級しちゃったよ。

 レスリーがもらった銀貨をすべて渡してくる。

 「これはレスリーが集めた薬草の報酬だから、レスリーが・・」と、断ろうとしたのだが、

 「だめですー。私たちは今はレディク様の保護下にあるんですから。使用人みたいな者です。収入はご主人様が管理してくださいー。」と言う。今度はご主人様か。仕方ないのでいったん受け取っておく。今後どうするか後で考えよう。

 レスリーの案内で冒険者ギルドの2階に上がり、資料室に入った。奥行き10メートル、幅30メートルくらいか。横長の部屋の右端に閲覧用のテーブル席が、左よりには大きな書架が並んでいる。奥にはカウンターがある。

 「地図とか置いてあるかな?」

 「広域地図ならあそこの壁にありますー。あの下は地図専用の棚で。需要の多い地図はカウンターでも売っていますー。」レスリーが答えた。見ると確かに、壁に大きな地図が貼ってある。大陸全体の地図らしい。カウンター横には、アスター地図:銀貨8枚、アスター周辺図:銀貨8枚、エルロン王国地図:銀貨9枚、などと掲示してあった。

 「そこそこの値段だが、地図は必要になりそうだから買っておくか。」

 「エルロンの地図なら私持ってる。」ローズが言ったので、カウンターでアスターとアスター周辺の地図を買う。

 地図の棚には他にも興味を引かれるものがあったが、また後で見に来ることにしよう。

 大型の書架の方に移動する。大雑把にジャンル別に分けられている。管理用の番号を書いた紙も貼り付けられていた。見あたらないが、どこかに書籍カードか管理簿のような物もあるのだろう。ざっとジャンル分けと表題を眺めていく。冒険者入門、戦闘技術、採集技術、魔法、魔道具、装備品、怪我と病気の治療、食材と料理、動植物、魔物、鉱物、魔石、ダンジョン、遺跡、歴史と伝承、旅行ガイド、冒険者に関係する各国の政策。本の数はそれほど多くはないが、興味をひかれるものが多い、ざっと内容を拾い読みしていくだけでも、相当時間がかかりそうだ。

 試しに魔法の概説ものの本を開いて拾い読みしていく。



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○魔法

 魔法とは魔力を消費して様々な現象を発生させ、攻撃、防御、治療、情報収集、アイテム作成等々に利用する技術である。・・・・・・・・・・・



○魔力

 人間を含むすべての生物は魔力を持っていると考えられている。これまでのところ例外は見つかっていない。しかし、魔力を保有する量は個体によって大きく異なっている。人間の場合、魔法を発動させることが出来るだけの魔力を保有する個体の割合は12%内外である。

 魔力の保有量は魔道具を使用して調べることが出来る。魔道具では魔法を発動することが出来る最低限の魔力を保有するものをCランク、実用的な強度の魔法を使えるだけの魔力をを保有するものをBランク、強力な魔法を発動できるものをAランクと表示する。冒険者ギルドでは、新人冒険者の魔力量と魔法適性を調べているが、その記録を元に集計してみたところでは、Cランクが8人に1人、Bランクが100人に1人、Aランクとなると1400人に1人であった。

 Aランクよりさらに多量の魔力を保有し、強力な魔法を発動できる、Sランクの魔法使いがごくまれに生まれることが知られている。数万人に1人と考えられているが明確にはなっていない。

 Sランクの上にSSランクの魔法使いも存在するという噂もあるが、筆者は未確認であり、疑わしいと考えている。

 若い頃から多量の魔力を使用し続けると、魔力の保有量が増加することがある。いくつもの実例があるため、疑いない事実なのだが、魔力を使い続けても増加しなかったという実例も多く、魔力の増加にはまだ明らかになっていない魔力使用以外の要因も影響していると考えられている。・・・・・・・・・・・・・



○系統と適性

 魔法にはいくつかの系統があり。系統によって発動できる魔法が異なる。魔法の系統が全部でいくつあるかについては、まだ定説がない。

 確実に存在する系統は以下の6つである。

 ・火

  発動の難易度が高めであり、魔力消費も大きいが、もっとも攻撃力が高い系統と  されている。

  主な魔法:トーチ、ファイア、ファイアボール、ファイアストーム


 ・風

  もっとも発動が容易であるが、威力が低く応用性も低めである。

  主な魔法:ウィンド、ウィンドハンマー、エアカッター


 ・水

  発動は容易であり、飲料水の確保などに重宝される。若干魔力消費が大きく、そ  の分威力もやや高いが、戦闘に適した魔法とは見なされていない。

  主な魔法:ウォーター、ウォーターショット、ウォーターフラッシュ


 ・土

  発動の難易度は若干高く、応用魔法の習熟難易度はさらに高い。魔力消費も大き  めである。攻撃力が高めで、防御にも使用でき、習熟すれば応用範囲が広い。

  主な魔法:ストーン、ストーンショット、ストーンシールド


 ・光

  発動の難易度は低いが、応用魔法の習熟難易度は非常に高い。魔力消費は低いが、  明かりを灯す初級魔法以外を習得できる魔法使いは少ない。

  主な魔法:ライト、ビーム


 ・雷

  発動の難易度、応用魔法の習熟難易度ともに最高に高い。魔道具の補助なしで使  いこなせる現存の魔法使いは皆無である。

  主な魔法:スタン


 魔法の系統に対する適性は個々人によって異なる。適性のある魔法は発動・習熟ともに容易になり、魔力消費も少なくなることがある。適性のない魔法であっても発動は可能であるが、難易度はかなり高くなる。

 たいていの人は1-2種の魔法に対する適性を持っているが、まれに3種以上の魔法に適性を持つ者や、全く適性のない者もいる。・・・・・・・・・・・・・・



○魔法の習得

 魔法はスクロールによって習得できる。・・・・・・・・・・・・・・



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 スクロールか・・。

 「スクロールって、どこかに売ってるのか?」近くで魔道具に関する本を読んでいたローズにたずねる。

 「魔道具店に売ってます。」

 「そうか、買いに行こう・・・。ここの本は借りて帰ることは出来ないのか?」

 「本は持ち出し禁止。持って帰れるのは購入した物だけ。」

 「仕方がない。また来て読むか。・・・とりあえず一度馬車に戻ろう。資料室の様子もわかったし。今後の予定について相談したい。」

 レスリーにも声をかけて、馬車に戻った。


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