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謁見

国王と謁見して報賞金を貰ったり

町を見物したりします

 既に謁見室の扉は閉じられ、部屋の中にいるのは我々と国王と3人の側近だけだ。確認した後で、私はマスクを外した。

 「お初にお目に掛かります。レディクまたは才蔵と名乗る者です。記憶を失っていて、本当の名前は思い出せません。2回魔人と戦い、2人の魔人を倒しましたが、私は勇者ではないと思います。とはいえ、私には果たすべき使命があると、神々はお考えのようで、偉大なる予言にも、私のことが記されているようです。私に何が出来るのかは、分かりませんが。」

 「ふはは。何が出来るかだと?1人で2人の魔人を倒すという偉業を、既に成し遂げて居るではないか。レディク殿にとっては、その程度は偉業の内に入らないということか。ボードワン。おまえはレディク殿の力の程をどう見る?」

 国王が話しかけたのは、焦げ茶色のローブを着て顎髭を生やした、眼光鋭い壮年の男だった。魔法使いらしい。今現在も、何らかの魔法を使っているのだろう。全身をうっすらと魔力で覆っている。見事な魔力制御だ。私の魔力の浸透に抵抗していたのは、間違いなくこの男だ。私は、内面の緊張を顔に出さないように気を付けながら、男の答えを待った。

 「恐るべき力の持ち主です。実は、レディク殿がこの部屋に姿を現す10分以上前から、周囲80メートルを超える範囲を覆い尽くす魔力を感じていました。私をはるかに超える、魔力操作能力の持ち主が接近中であることが分かりました。さらに、その魔力が私に探りを入れていることに気がつき、探査防御を試みたのですが、自らの魔法の技量の未熟さを、思い知らされることになりました。おそらく、レディク殿は、単に周辺の状況を探っていたのだと思いますが、もし私が、レディク殿の来訪予定を知らずに、あの魔力を感知したならば、一目散に逃げ出していたでしょう。それほどの力量差を感じました。」ボードワンと呼ばれた男が答えた。

 どうやら、深刻な敵対行動とは、認識されなかったようだ。ひとまず安心した。ローズも少し緊張を解いたようだ。当然、私の懸念に気がついて、心配していたのだろう。心配を掛けて悪いことをした。

 「驚かせてしまったようで、申し訳ありません。朝起きてから、夜寝るまでの間、常に限界距離まで魔力を展開して、周囲を探査することが、習慣になっていますものですから。初めの頃は、練習のためだったのですが、魔人を含む未知の敵を早期に発見するために有効なので、やめられなくなってしまいました。」

 「失礼ながら、ご教授願えませんでしょうか。広域探査が有効であることは分かりますが、長時間の広域探査を続けられて、魔力枯渇や精神疲労の問題は起こらないのですか?私も部下の魔法使いに、魔法による探査を行わせることがありますが、広範囲の探査となると、1時間以上継続することも難しいと思います。何かコツがあるのでしょうか?」近衛兵と似た鎧を着た男が話しかけてきた。

 「それは探査魔法のことですね?私が使っているのは、いわゆる探査魔法ではありません。魔力で生み出した水蒸気を、周囲の広い範囲に展開し、その水蒸気を通して、周囲を知覚するという方法です。一度水蒸気を展開してしまえば、後はそれを維持・制御するだけですので、長時間続けても、さほど魔力消費は増えません。」

 指先に小さな霧の固まりを作り、それをフワッと周囲に拡散させて見せた。

 「簡単におっしゃるが、私にはとても真似出来ませんな。私もそれなりに、魔力操作の修練を積んでいると、自負しているのですが。もし私が、私自身の魔力操作の限界距離、80メートルの範囲に、魔力で生成した物を満たした場合、その状態をどれだけ維持できるかというと、2時間持つかどうかも心許ないです。まして、レディク殿の魔力操作範囲は、300メートルを超えているのではありませんか?その範囲に水蒸気を満たし、その状態を一日維持し、水蒸気を通して、周囲を知覚し続けるとは、人間業とは思えません。」

 ボードワンは、見たところ、かなりの実力の持ち主に見えるが、80メートルが限界なのか。ちょっと意外だった。

 「私の魔力操作範囲は、今の装備で、600メートルくらいです。ここからだと、庭園の2-3割が探査範囲に入ります。この建物の中に26人、建物の外の200メートル以内に7-80人、その外側600メートル以内に30人程の人間が居ることを感じます。人間以外では馬が90頭程、猫が1匹、キツネが1匹、鳥がかなりたくさん居ますね。この探査方法は、私が探査魔法というものを知る以前に、練習して身につけたものです。慣れるまでに多少時間は掛かりましたが、周辺の人間、動物、魔獣、魔人の分布と動きを、とりたてて注意していなくても、常に把握出来るという利点があります。特に、魔人が居るとすぐに分かります。欠点もありますけどね。私が魔人を感知すると、ほぼ同時に魔人の方でも、私を感知してしまうという。今は、遠い距離から魔人を発見するための、魔道具も作って、テストしているところです。」

 「魔人を検知する魔道具の話は聞いている。非常に有用なものだ。」国王が言った。

 「その魔術構築式を教えていただけないだろうか。私の部下にも研究させたい。申し遅れましたが、私は魔道研究所長のボードワン・アンドリッセンと申す者です。」

 魔道研究所という場所が、あるらしい。

 「ボードワンはエルロン王国の筆頭魔道師でもあるぞ。他の者も紹介しておこうか。宰相のギュスターヴ・ペンドゥルトン伯爵と、近衛隊長のライオネル・デリウスだ。」

 国王自ら側近の紹介をしてくれたので、私も同行したメンバーを、紹介することにした。

 「左端がクロエです。慈悲の神の託宣を受けた者です。隣がヒュー。愛の神の加護を受けた者です。その隣のレルミスは、森の神の託宣を受けた者です。そしてローズは、魔人の手の者に殺された魔道具研究家、エクセル博士孫で、博士の遺志を継ぎ、遺跡の謎に挑む者です。」

 レルミスを紹介すると、もちろんレルミスは、エフェクト付きのお辞儀を見せた。今回はワンドをくるっと回して、光の粒子を飛び散らせるおまけ付きだ。

 驚いたのは、ローズもエフェクトを用意していたことだ。幻影魔法と光魔法の練習をしていたことは知っているが、全身をわずかに光らせた後で、ソフトフォーカスのようなエフェクトを発生させ、さらに知恵の神の紋章を浮き上がらせて光らせるとは芸が細かい。お辞儀のポーズも含め、相当練習したに違いない。

 近衛隊長はちょっと驚いた顔をしていたが、国王と所長と宰相はニコニコしている。おおむね好評のようだ。


 紹介の後で、宰相から魔人討伐の報賞の一部として、白金貨200枚と特別勅許証というものをもらった。特別勅許証とは何かというと、エルロン王国内のすべての都市の門を無料で通行することと、図書館等の公的サービスを無料で利用する許可証だそうだ。白金貨はありがたいが、特別勅許証は特認冒険者証と用途が被るし、名前が才蔵になっているので、あまり使いそうもない。しかし、『才蔵マスク』を被っている時に、使う可能性が皆無ではないので、一応貰って置いた。

 その他の報賞として、後日になるが、王宮の宝物庫にある武器や防具の中から、3つ貰えるらしい。

 王都にいる間は、国が所有する居住施設を借りられるという、おまけもあった。ローランの屋敷に泊れるので、必要ないかなと思ったが、その居住施設のすぐ隣が近衛隊の訓練場で、何時でも訓練場が使えるように手配出来ると聞き、興味が湧いた。


 報賞を貰ったところで、侍従長が昼食の準備が出来たことを伝え、隣の部屋に案内した。

 昼食中に国王が、魔人との戦いの話を聞きたがったので、「私の戦いを直に見ていたローズが、なかなか話しをするのがうまいです」と、ローズに振ってみると、思った通り嬉々として『偉大なるレディク様と魔人の戦い』の講釈を始めた。前回よりもさらに語り口が洗練され、面白くなっている。もはや金を取れるレベルだ。ローズは吟遊詩人になっても、十分生きて行けそう、いや、むしろ大人気の吟遊詩人に成れるかも知れない。

 魔道研究所の研究内容について、所長に質問すると、研究所に招待して貰えることになった。ついでに、精神魔法について、何か知らないかと質問すると、言葉を濁された。研究所に行った時に、あらためて話したいらしい。ここでは話せない理由があるのだろうか。

 昼食が終わった後、帰り際に、国王が、「レディク殿とはまた近々、顔を合わせることもあろう」とか言うので、「機会があれば、お会いすることもあるかも知れませんね」と、曖昧に答えて置いたが、謁見の手配とか大変そうなので、当分会うことは無さそうな気がする。


 帰りも侍従長の案内で、来た時と同じ家で着替えた。別の門からシリンの防壁の中に入り、門に近い運河の船着き場で馬車を降り、侍従長と別れた。そこからはしばらく小船で移動した。シリンには、あちこちに運河がある。運河は、荷物の運搬に利用されている他に、馬車より低価格で人を運ぶ交通手段として、利用されているそうだ。移動速度は馬車におよばないものの、普段とは少し異なる眺めが楽しめるし、乗り心地も悪くない。

 ローランの提案で、船に乗ったまま少し遠回りをし、町を見物することにした。中心市街の西側を南下し、畑地や住宅地、巨大な食料品市場を通り抜け、街道沿いに大きな商家が続く一画も通り過ぎた。そのあたりから、町の南西方面によりに進んで行くと、様々な小売商店や飲食店が軒を連ねる、シリン最大の繁華街に行き着いた。

 この付近の商店には、船着き場があるばかりでなく、船から直接買い物が出来る店も多い。道路に面した商店街とは景色の異なる、運河に面した商店街が出来ていた。そんな商店の店先の商品を覗きながら、たくさんの橋の下をくぐり抜けた。

 気がつくと、町を見物中のアベリアや猫耳戦士達が、近くにいるようだ。ローランと相談して船を下り、大きな魔道具店の前にいたアベリア達に合流した。ちなみにここは、アベリア達が今日見つけた、4軒目の大きな魔道具店で、小さい店を含めると10軒目だそうだ。アベリアが地図を用意していたので、地図に魔道具屋の位置を書き込み、一応品揃えも確認して置いた。

 商店が多すぎて、見て回るのも大変という状態は想定していなかった。店を見て回る前に、研究所長にお勧めの店を教えて貰った方が良いかも知れない。研究所では、それ以外にも色々調べられそうな気がする。まずは、研究所での情報収集を、最優先にしよう。


 レスリーが図書館に居るので、図書館に寄ってから、ローランの屋敷に戻ることにした。戻る途中で、たくさんの立派な神殿があることに気がついた。シリンには12神の神殿ではなく、個別の神の神殿があるようだ。まだ、夕方までには多少時間があるから、少しだけ覗いていこうかと相談し、ヒューが寄っていきたいというので、愛の神の神殿に行くことにした。

 やはり、12神の神殿とはだいぶ構造が違うようだ、入ってすぐに神像があるが、その奥にもいろいろな部屋があるようだ。愛の教導室とか書いてある部屋は、一体何だろう?首をひねっていると、奥の方から数人の神官が、真っ直ぐにこちらにやって来る。彼らが見つめているのはヒューか?

 「お待ちしておりました。私は愛の神の神官長、エルモリアと申します。愛の神の加護を受けた方ですね?」かなりの歳らしく、白髪交じりではあるが、未だに美人な女性神官長が、ヒューに声をかけた。

 「えっ?!・・あー、はい。・・その通りですが?」

 「私は託宣により、愛の神からあなたを教え導くように命じられました。神の加護の真の力を解き放つためです。」

 「真の力?!」ヒューが驚きの声を上げた。

 「奥の部屋にどうぞ。ご説明させていただきます。あなたもご一緒に。」クロエにも声をかけた。

 「エルモリア神官長。我々もお話を聞かせていただいても良いですか?」なんだか、面白そうな話しなので、ダメ元で聞いてみよう。

 「あなたは?」

 「レディクと申します。ヒューとクロエと同じパーティーの、リーダーを務めている者です。」

 「そうですか。」神官長は何故か私の顔をじっと見つめ、次にアベリアの顔を見つめている。

 「では皆さんもおいでください。」そう言って、奥の部屋に我々を案内した。



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