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山羊とナマズ

まだゴブリンしか出てきません

 翌朝も夜明け前に目ざめた。顔を洗って外に出ると、ちょうどガンダリがこちらに向かって歩いてくるところだった。

 「おはよう」と声をかけると。

 「これ、やる、使ってくれ」とリュックを差し出してきた。荷物を持ち歩く方法がなくて不便だ、という話をしたのをおぼえていてくれたようだ。

 「ありがとう。すごく助かる。」声をかけると、ガンダリがそっぽを向いている。照れているようだ。何となく表情がわかるようになってきた。

 一緒に朝食に行く。今朝のメニューは鴨肉ローストと香草の炒め物にオオカミスープ。ちょっと豪華だ。昨日の護衛の戦士のうち二人が、今日も同行してくれるようで、一緒に食事をしながら軽く打ち合わせをしている。

 今朝は朝食中から水蒸気の展開を始めた。操作可能範囲が半径80メートルもあると展開に時間がかかるかと思ったが、そんなことはなく、むしろ経験を積んで能力が上がったためか、昨日よりスムーズに展開できた。

 今日は村を出た後西に進み、橋を渡った。このあたりは川の西側5キロくらいまで森が続いており。森の中を進んだ方が危険が少ないと言うことだった。


 森を抜けるとすぐに丘陵地帯だった。凹凸の多い地形が続き、西の遠くの方には山脈が見える。低木林や草地が多く全体的には緑が濃いが、所々に灰色の岩肌の小山が散在している。山羊は小山の上や周囲に住んでいると言うことなので、近くの小山に向かって進んだ。

 最初の小山に動物の気配はなかったが、ブルーベリーが生えていたので採集した。少し食べてみると甘酸っぱくておいしい。そこから北西よりの方角に、かなり大きな岩山が見えたので、次はそちらに進んでみることにする。近づくと岩山の上に動くものが見えた。山羊だ。山羊は我々が近づいていることに気がついているようで、我々が近づく距離に応じて岩山の上に上って逃げていく。岩山の下に到着した時には頂上の向こう側に姿を隠してしまった。山羊のいる場所は水魔法の操作可能範囲の外側で、居場所が感知できない。こちら側の斜面は崖になっていてまっすぐ上るのが難しそうだったので、北に向かって崖を回り込みながら登っていく。3分の1ほど登ったところで、操作可能範囲の内側に動物の気配を感知した。2頭いる。ほとんど動いていないようなので、立ち止まってしばらく待つ。操作可能な水が十分増えたところで、頭部の水を凍らせる。2頭が倒れるのを感じた。

 「2頭しとめた。行こう。」同行のゴブリンに説明して進む。

 岩山の反対側を調べると2頭の山羊が倒れており。少し遠くを十数頭の山羊が逃げていくのが見えた。山羊は体長1.2メートルほどで結構大きく、4人で2頭以上運ぶのは難しそうなので、いったん村に帰ることにする。縄で足をくくった山羊を長い棒でにぶら下げて、二人で一頭ずつかついでいく。

 森に向かってしばらく進んだところで、前方に動物の気配があることに気がついた。

 「止まれ。前に何か居る。」ゴブリンたちに声をかけ、立ち止まって気配を探る。前方右側斜面の少し高い場所、低木の茂みの中に隠れているようだ。かなり大きい。

 「大きな獣だ。2メートル以上ありそうだ。キラーパンサーが待ち伏せしているのかもしれない。」説明するとゴブリンたちの顔が緊張する。しかし話している間にも体内の操作可能な水が増えているので、それほど危険は感じなかった。しばらく待った後で一人で先行する。10メートルまで接近すると、思った通りキラーパンサーが茂みから飛びかかろうとしたが、直前に頭部を凍らせたため斜面を転げ落ちただけだった。

 仕留めたキラーパンサーを運ぼうとしたが、かなり重く、山羊2頭と一緒に運ぶのはとても無理だった。ゴブリン二人に山羊1頭を持たせ、応援を呼びに行ってもらうことにした。残りの山羊とキラーパンサーは森の入り口近くまで運んでおき、応援を待つ間にブルーベリーを採集したり、ウズラのような鳥を捕獲したりして過ごした。

 応援がついた時刻が昼近くだったので、ウズラを焼いて一緒に昼食をとった。応援は12人いたので、6人には山羊とキラーパンサーその他の獲物を持ち帰ってもらい、残った8人で山羊狩りを続けた。その後10頭の山羊を仕留め、午後の遅めの時間に村に帰った。

 村に帰るとなんだか騒がしかったので、何があったのか聞いてみると、キラーパンサーを仕留めたと言うことでお祭り騒ぎになっていたようだ。村ではこれまで、キラーパンサーと戦って生き残れたものはほとんどおらず、キラーパンサーを仕留めたなどという話は、ゴブリンの勇者の伝説にある程度だという。動きが速く力が強いだけでなく、皮が丈夫で普通に戦ってもほとんどダメージが与えられないらしい。そこまで強い感じはしなかったが、魔法には弱いとかで相性が良かったのだろうか。


 夕食前に魔法の練習をする。山羊のように近づくことも難しい獲物を狩るにはもっと水魔法の操作可能範囲を広げる必要があると感じたので、範囲拡張に重点を置いて取り組む。


 共用かまどに行って夕食を食べる。今日のメニューは山羊のステーキ、野草とフルーツのサラダなど。族長もやってきて、一緒に食事をする。族長は、族長補佐、木工の頭、漁師の頭その他数人を引き連れていて、夕食を食べながら皆で話をした。

 まず、カモの燻製を作るための燻製小屋を増設していて、明後日には150羽程度まで処理できるようになること。他の用途にも使えるように作ってあり、肉をとりすぎて困る問題はなくなることを説明された。

 また、森の北には良い漁場があることは以前からわかっていたので、安全に漁をするための建物などを造りたい、と考えていること。カモの血抜きその他の作業を手伝う人員も含めて、明日は大勢を森の北に派遣する予定であることも説明された。

 「なるほど。どんどん獲物を捕れと言うことですな。」笑って言うと。

 「レディク様のお力に頼ってばかりで、誠に申し訳ありませんが、ご協力お願いいたします。」と族長が頭を下げる。

 ベッドが快適で食べ物もおいしいし、しばらくここで食料調達するくらい何の問題もないな、と考える。そういえば、いつのまにか敬称が[殿]から[様]に変わったな。ずいぶん評価が上がったようだ。


 翌朝目ざめるとなんだか外がにぎやかだ。朝食に共用かまどに行くと、普段の倍以上の数のゴブリンが居る。朝っぱらから材木を運んだりしているゴブリンも居る。

 「いつもより人数が多いが、もしかして全員一緒に出かけるのか。」と、ガンダリにたずねると。

 「全員でない、最初30人一緒、後で20人」と答える。

 外で働けるゴブリンの大部分が森の北に行くらしい。


 30人でぞろぞろ出発する。槍などで武装したゴブリンの他に、鎌や斧やスコップを持ったゴブリン。大きな荷車に材木を乗せて、押したり引いたりしているゴブリンも居る。森を出て少ししたところで二つのグループに分かれた。20人は道の整備等の工事やオオカミ罠の設置などを行うそうだ。残り10人は狩猟班でそのまま狩り場に同行した。


 「回収役の人数が多いから、カモがたくさん集まっているところに案内してくれないか。」とガンダリに頼むと。

 「あっち、たくさんいる」とガンダリが先導する。

 着いた場所は川がかなり広くなっている場所で、細長い中州があり、その周囲に100羽ほどのカモが集まっていた。確かにたくさんいるが、水深は結構あるし川幅も広い。

 「回収が大変そうだな」というと、

 「泳ぐ、得意」という返事が返ってきた。

 得意でも全部回収するのは大変だろう。仕方ないのでカモを殺すと同時に、中州の周囲をぐるりと囲む氷の枠作った。これでカモが水に流されることはない。次いで、岸から中州まで氷の橋を造る。すべりやすくちょっと大変だったが、氷の上を渡ってカモを回収した。カモは97羽いた。

 工事班の作業場近くまでカモを運び、5人残して血抜き作業を任せる。残りの5人を釣れてナマズを捕りに行った。ナマズが居るという沼は上流側に少し歩いた先の、林に囲まれた場所にあった。幅は50メートルくらいだが長さは400メートルくらいある。一部は川につながっていたが、水は全く動いておらず、濁っていて中の様子は見えない。しかし何かいそうな感じはする。水魔法で内部を探ってみると、小さいのから大きいのまで、かなり多くの魚介類が住んでいるようだ。水深は深いところで3.5メートルくらいだ。沼の底の方を探っていると、居た。大物だ。3メートル以上ありそうだ。マスと同様に氷に入れて浮き上がらせてみる。水面を割って姿を現したナマズをみて少し腰が引けてしまった。でかい、特に口が。これなら小柄なゴブリンくらい飲み込みそうだ。

 水面に浮かんだナマズ入りの氷を、はじめは手で岸に引き上げようとしたが、ものすごい重さで手に負えなかったため、魔法で持ち上げて林の外まで運ぶことにした。かなり多くの魔力を消費するが、沼の水を使っていくらでも回復できるため問題ない。林の外からは、材木を運ぶのに使っていた荷車を持ってきてもらい、荷車に乗せて運ぶことにする。

 荷車の到着を待つ間に、もう少し沼の中や周囲を探り、50センチほどのナマズを2匹、30センチ前後のマスを7匹つかまえた。荷車が到着した後、ナマズを持ち上げて荷車に乗せようとしたが、荷車に乗せるだけでも大変であることが判明したため、魔法で持ち上げて荷車に乗せた。

 荷車で工事班の作業場に到着すると、朝見た時とはずいぶん様子が変わっていた。森からの道と周囲の下草や低木がきれいに切り払われ、でこぼこの多い場所は整地したり木の板を敷いたり、荷車を通しやすくしてある。道の東側には2.5メートルくらいの丈の木の柵が立てられていた。まだ完成はしていなかったが、川には木製のしっかりした橋が架けられつつある。後発組のゴブリンも到着したらしく、朝より人数が増えていた。一部のゴブリンは川の対岸に渡って道を造る作業をしているようだった。

 資材の輸送のために村に戻るゴブリンが居たので、ナマズや血抜きの終わったカモを村に運んでもらうことになった。昼までにはまだ少しあったので、狩猟班を引き連れてもう一度カモ猟に行く。70羽ほどのカモを捕り、作業場に戻ってカモの血抜きをした後、カモの一部とマスを焼いて昼食にした。


 昼食中にオオカミが接近して来ていることを感じたが、今日は人数が多いために警戒しているらしく、ある程度以上は近づいてこない。柵の向こう側60メートルくらいの距離の藪に3匹隠れて様子をうかがっている。食事が終わったところでオオカミを魔法で殺し、念のためオオカミ罠担当のゴブリンにも声をかけ、狩猟班を引き連れてオオカミの回収に行った。藪に向かって歩きながら、他にオオカミがいないか気配を探る。ぎりぎり感知できる距離に2匹のオオカミが居ることを感じたが、すぐに感知範囲外に遠ざかっていった。逃げたようだ。


 午後もカモ狩りを続けた。120羽ほど狩ったところで狩りを終了し、工事の進捗を見に行く。工事班の様子を聞くと、大きな邪魔な岩が多い場所で作業が遅れていると言うことだったので、邪魔な岩をすべて氷に乗せて移動し、ついでに材木の輸送も少し手伝った。

 午後の半ば頃、今日の作業を終えることにして村に帰った。


 今日も夕食前に井戸のそばで魔法の練習をする。どうやら私が毎日井戸のそばで魔法の練習をしている(あるいはよくわからない怪しいことをしていると見られているかもしれないが)ことが知られてきたようで、ゴブリンの子供たちが遠くから興味津々の様子で見ている。サービスで小さな水の玉をたくさん出して、くるくる回してみせると喜んでいた。

 夕食はナマズのソテーと鴨肉のシチューだった。たぶん初めて食べた気がするが、ナマズ肉もなかなかおいしい。


 翌日も大人数で森の北に行った。昨日の作業場に着くと、オオカミ罠に2匹のオオカミがかかっていた。工事班の方では、昨日のうちにだいたい道路整備を終わらせていたので、今日は漁などの作業小屋を作るようだ。

 狩猟班の方では今日もカモを捕る予定だが、昨日少し多くとりすぎたため、今日は少なめにするつもりだ。かわりにもう少し魚を捕りたいと考え、漁師の頭に同行してもらい、網を借りてきている。普通は固定して使う幅3メートルほどの網だが、今回は網の四隅に氷球を付けて魔法で操る予定だ。

 漁師の頭によれば、今の季節ならばやはりマスがたくさん取れておいしいらしいので、マスを重点的に狙うことにする。マスがいそうな場所を魔法で探っていき、網ですくい取る。網だとマス以外の魚も取れるので、漁師の頭に選別してもらい、捕れた魚を持ってきた桶に入れて運んだ。午前中2時間ほど魚を捕り続けた結果マス62匹の他、コイ、ウナギ、ナマズなども捕れた。

 昼前からはカモ猟を始め、その日は170羽を捕った。


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