別荘?
休憩所を改築しました
大きい声を出しても大丈夫です
あまりにも簡単に、リビングアーマーが倒せてしまったので、我がことながら驚いた。もしかすると、すでにかなり人外の力を、手に入れてしまっているのかも知れない。強化魔法が掛かっている状態では、腕力でリビングアーマーを上回っていそうな気がする。まあ、今更気にすることもないか。
そういえば、今日は見学者が居たな。思いだして振り返り、様子を見る。ローズは嬉しそうだな。『光の勇者』は驚愕の表情で固まっている。ダリルや猫耳戦士あたりのメンバーは、だいぶ慣れてきたようで、少し驚いた表情ではあるが、なにやら楽しそうにおしゃべりに興じている。
倒したリビングアーマーを氷で運んで行った。
「レディク様に、リビングアーマーは雑魚。魔法を使うまでもないですね。」強化魔法は使ってたけどね。ローズの強化魔法の効果も調べないとな。
「ヤリチン大魔神は、めちゃくちゃだにゃ。リビングアーマーを素手でひねり殺してたにゃ。」
「ありえねー。なんだよ、今の動きは。ほとんど見えないほど速い攻撃を、姿が見えなくなるほどの早さで避けまくるとか。おめー、ぜってー人間じゃねーだろ。」ザザイは『光の勇者』の4人の中では、最も動きが素早かったはずだ。そのザザイが見えないと言うほどなら、本当に速かったのだろう。あまり実感はないが。
「ザザイ。レディク様に失礼ですよ。でも、どうして、あんなに速く動けるのですか?やはり、魔力の強さが違うのでしょうか?」
「それもあるが、水魔法と重力操作魔法の他に、強化魔法も使っている。もちろん、素早く正確な魔力制御は必須だな。レルミスも、もっと魔力制御の練習をした方が良いぞ。」
「レディク殿は魔法使いと考えておりましたが、徒手格闘術をも使いこなすのですな。しかも、あの動き。攻撃魔法を使わない条件で、レディク殿と戦っても、全く勝てる気がせんですのう。」
「徒手格闘術など習ったことはないぞ、素早い動きを練習しただけだ。」
「我流でしたか。天賦の才でしょうな。」本当に適当に殴っていただけなのだが、ターボの評価が妙に高いのは何故だろう。やはり、速くてよく見えなかったのだろうか。
リビングアーマーの心核と魔石を外した後、リビングアーマーの腕の収集依頼をどうするか、少し相談した。力ずくで腕を外すと、腕が少し歪んでしまうのだ。ウォータージェットなら、肩の関節部をきれいに切断することも可能だが、後でどうやって切断したのか聞かれそうな気がする。結局両腕が付いた状態の胴体ごと渡してしまえば間違いないだろう、という結論になった。
泉のそばの休憩所に移動した。『光の勇者』メンバーはやはり驚いている。しかし、人数が増えたので、手狭な感じだ。日暮れまでには十分時間があるので、少し拡張することにした。
女性が多いし、トイレはあった方が良いかと、前から思っていたので、トイレも作ろう。貯水タンクもそのうち作りたいと思っていた。水道管に水を流し、蛇口から水を使えるようにしたい。
ざっと、方針を決めた後、レイアウト図を描いて見る。少し拡張のつもりだったのだが、3倍近い面積になりそうだ。やめた方が良いだろうかと、一瞬考えたが、かなり住み心地が良さそうなので、自重しないことにした。
立体模型も作り、採光や強度についても検討した後、ウォータージェットで崖を掘り始めた。前回よりも深く、天井は高く、床面は低く掘る。外側の地面を整地し基礎用の穴を開けておく。天井裏に貯水タンクを入れるため、今回は崖の穴の中にもしっかりした鉄骨のフレームを入れるつもりだ。
浴室は作り直すので、いったん取り壊す。厨房以外はほとんど作り直す予定だ。以前から寝室用に使っていた、崖の穴の中も、奥の壁と天井と床を、掘り広げて拡張した。鉄や木の廃材が出たので回収しておく。鉄は売れるだろうし、木は薪に使えるだろう。
前回に比べて、かなり大きな鉄のフレームを、3回に分けて作った。途中、泉の水から魔力を補充する。寝室にする予定の、崖の穴の内部では、床下に断熱材を敷き詰め、その上に薄い大きな水タンクを入れておく。冬に寒くなったら、中にお湯を入れて暖房するつもりだ。天井裏に貯水タンクを固定し、浴室、トイレ、厨房、洗面所・洗い場に水道管をつないだ。今回は浴室を二つ作った。排水管もつなげていく。
トイレは水洗にしたいが、排水管を急勾配にしないと詰まりそうだ。しかし、急勾配にした先をどうしよう。浄化槽の作り方は分からないし。しばし考えた後、単純に大きな穴を掘っておくことにした。200メートルほど離れた場所に行き、50メートルほどの垂直の穴を掘る。太めのウォータージェットで土をえぐり、水と一緒に土を巻き上げ、水だけ回収すれば、土を掘るのは簡単だ。そこから、高さ10メートル、幅5メートルほどのトンネルを、休憩所の方向に掘り進める。トンネルの天井と両側面は、石で固めて崩れないようにした。使用頻度は高くないし、これだけ大きい空間を作っておけば、大丈夫だろう。トイレからの排水管をトンネルにつなげた。
奥の右端の崖の穴の中に私の寝室を作った。壁を厚めにして、内部に断熱・防音材を入れる。寝室の手前に前室を作り、ドアも厚めのしっかりしたものを作った。寝室の防音効果を追求した構造だ。隣に、ヒューとクロエの寝室も用意した。その隣は、中央の共有スペースの周りに、8つの小さな個室を作った。個室の各部屋には、木製の寝台が置いてある。寝台の上にはマットレス代わりに、分厚い木綿の布を重ねて置いた。試しに寝てみたら、すごく寝心地が良かった。
厨房の手前に玄関ホールを造り、厨房の右に廊下を通して、厨房を通らずに奥に行けるようにした。玄関ホールの右側に食堂を作り、その隣に中庭を作った。食堂と廊下の、中庭に面した場所には、採光のための大きな窓を作った。プラスチックが作れるようになったため、前回に比べて大きな採光窓を作ることが出来る。全体に家の中が明るくなった。
たまにしか人が来ない家なので、雑草だらけにならないように、中庭も玄関前も石で覆ってしまう。何もないと殺風景な気がしたので、中庭に池を作っておいた。
浴室は奥の方に移動した。浴室にも採光窓を設け、壁に囲まれた小さな庭が窓から見られるようにした。
新たに、建物の周囲を取り囲む、4メートルほどの高さの石壁を作った。壁の外側は、自然の崖に見えるように偽装する。これで、あまり人目を引かなくなるだろう。
できあがった休憩所を、皆に見せた。『光の勇者』のメンバーは、さっきよりさらに驚いているようだ。そう言えば、自分で作ったという話しは、していなかったか。
水道やトイレ、用意した寝台は、予想通り好評だった。洗面所・洗い場や、若干の改造を加えた厨房も、予想以上に好評だ。ヒューとクロエの寝室を案内すると、ヒューが微妙な顔をしていた。
休憩所という名称については、異議を唱えるものが多かった。もはや休憩所というレベルではないということらしい。いつの間にか、『別荘』と呼ばれるようになってしまった。
夕食後に、寝室の防音性能を確認するために、ローズと猫耳戦士に部屋の中で大きめの声を出して貰い、廊下で聞こえるかどうか、調べてみた。廊下に立って、しばらく耳を澄ませてみたが、何も聞こえないようだ。
部屋に戻ると、二人がクスクス笑っている。私の悪口でも言っていたのだろうか。楽しそうだし、別にかまわないのだが、少し気になる。さっきよりもう少し大きい声を出してみるように頼んで、もう一度廊下に出た。やはり何も聞こえない。ドアに耳を付けてみた。お、かすかに聞こえる。
「あー、ヤリチン大魔神。そんなとこいじっちゃダメにゃー。」
「あん。レディク様。もっとー。」
なるほど。実践的な発声練習をしていたのか。
部屋に戻り、十分な防音性能が確認出来たと二人に告げる。そのあと、二人にたっぷりと、本番の発声をさせた。
翌日も朝から遺跡に出かけた。今回も、朝と昼過ぎの2回、ガーゴイル狩りをする予定だ。
遺跡に着いてみると、昨日片足を砕いたゴーレムが、今日も片足の状態で残っている。数は半分くらいしか居ないようだ。ダリルによると、ゴーレムの部分的損傷は、2日くらい残ることがあるらしい。つまり、2日くらいでゴーレムの故障を修理する仕組みも、どこかにあると言うことか。正常なゴーレムは見あたらなかった。
今日は始めに、レルミスの重力操作を使った狩りを試して貰った。レルミスがガーゴイルを重くすると、ガーゴイルはうまく飛べなくなり、地上をピョコピョコ跳ねるような動きをするようになった。ターボが用意していたメイスで攻撃する。片翼を砕いた状態に比べると、動きが速く、若干手間取ったが、翼を砕き、心核を回収することに成功した。もっと重くすることも出来るが、魔力消費が大きくなり、連戦が厳しくなるらしい。
悪くはないが、もっと効果的に重力操作を使えそうな気がする。私も重力操作を試してみた。
水魔法で誘導したガーゴイルの片翼だけを、重力操作で重くしてみる。バランスを失ったガーゴイルは墜落し、墜落時の衝撃で片翼が砕けた。
うまく行き過ぎな感じだったので、もう一体別のガーゴイルでも試してみる。片翼だけ重くすると、やはり墜落した。今回は翼が砕けなかったが、重くした片翼を引きずってしまい、うまく動けないようだ。ダリルが簡単に翼を砕いた。
レルミスにもやらせてみた。飛んでいるガーゴイルの、片翼だけ重くするのは、難しいというので、全身を重くして地上に降ろした後、片翼だけ重くするようにさせるとうまく行った。
クロエが弓でガーゴイルを誘導し、レルミスが飛べないようにし、ターボかダリルが翼を砕き、他のメンバーが心核を抜く、という役割分担で3体狩る。ペースも悪くないし、問題無さそうだ。
ガーゴイル狩りは任せて、私は奥に行き、リビングアーマーを狩ることにした。少しだけ、5体のリビングアーマーを相手に、回避の練習もした。素手で簡単に倒せると分かってしまったので、あまり恐くなくなった。しばらく練習した後、頭を外して心核を抜いた。この方法使うと、一番きれいな状態で本体を回収出来る。
十数体のリビングアーマーを狩った後、入り口に戻る。その頃には、大通りのガーゴイルはほぼ狩り終わっていた。脇道のガーゴイルも入り口に誘導する。入り口近くで翼を砕き、残りのガーゴイルは素早く片付けた。




