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魔王の罠

遺跡が利用出来なくなった原因を調べ

魔王が残したらしいゴーレムもどきを取り除きます

 念入りに周囲の状況を感知しながら奥に進んだ。今のところ、特に異常は感じられない。ゴーレムとガーゴイルは、我々の10メートル以内に近づかないようだ。普通ならば向かってくるゴーレムが、近づくと向きを変え、遠ざかって行く。変な感じだ。

 ドワーフ族の遺跡への道筋を示す黄色い線は、300メートルほど進んだところで、左に折れていた。黄色い線が折れ曲がっている地点まで進み、左奥の様子を見る。黄色い線は左に折れた後、さらに100メートルほど伸び、右側の建物に入っているようだ。

 特に異常はないようだ。入り口の方に引き返す。ガンダリも引き返し始めた。20歩ほど歩いたところで立ち止まる。何かおかしい。

 ガンダリに声をかけて、その場で待って貰う。何がおかしいのだろう、曲がり角から見えた状況を思い出す。黄色い線が奥に延び、ゴーレムが2体、ガーゴイルが2体ほど居た。特におかしいところはない。

 念のため魔法で感知してみる。やはり、ゴーレムとガーゴイルが居るだけだ。ガーゴイルは2体。ゴーレムは6体?

 もう一度、左折地点まで進んで見た。やはりゴーレムは2体だった。特におかしいところはない。単なる見間違いのようだな。入り口に向かって引き返す

 20歩ほど進んで立ち止まった。そういえばさっきもおかしかった。一見何も異常が見えないからと言って、すぐに引き返してしまう行動が、我ながらおかしい。何故、魔法を使って、詳細な探査を行わなかった?魔法による探査を行おうとすると、おおよそは分かるが、なんだか頭に靄が掛かったようで、詳細が把握しづらい。普通ならば近づいた方が、探査の精度を上げやすいが、近づくとますます分からなくなる。探査を続けながら、入り口に向かって後ずさる。1歩下がるごとに、頭が働くようになる。6-7歩下がると、霧が晴れたように頭の中がクリアになり、同時に未経験の魔力の動きを感じとった。

 『闇の傀儡師の手』から発せられていた魔力の動きに少し似ている。『闇の傀儡師の手』ほどの禍々しさは感じられないが、同様に精神に影響を与える魔法なのだろう。魔法の影響範囲が60メートル内外に限定されているが、すぐそばまで近づいてしまうと、正常な思考力が失われ、何が起こっても気にならない状態にされてしまうらしい。そんな状態では、調査など出来るわけがない。

 精神魔法の他に、幻影魔法も使用して、姿を消している。方法は分からないが、魔力の隠蔽も行われているようだ。よほど集中して調べないと、魔法の発動を把握しにくい状態だ。

 4体とも外形はゴーレムと似た感じだが、よく調べればだいぶ違う。金属製のゴーレムのような物らしい。やや大きめの一体が精神魔法と幻影魔法を発生させている。近づくと、能なし状態にされてしまう、とんでもなくやっかいな相手だ。離れた状態から、出来れば一撃で破壊するか、魔法を使えない状態にしたい。しかし、運動能力、防御能力、感知能力、すべてが不明の相手だ。やってみないとうまく行くかどうか分からない。

 とりあえず、100トンくらいの氷の固まりを、重力も上げた状態で思いっきり叩きつけて見て、ダメそうだったら上空に逃げるか。


 いったん入り口まで引き返し、全員に状況を説明後、氷の船に乗った状態で待機して貰った。念のため、船を少し浮かせた状態にし、氷の屋根と壁も付けて密閉状態にする。

 慎重に魔法の発動を準備する。全魔力の50パーセントくらいを一気に注ぎ込んだ。轟音が響くと同時に、密閉した氷の船が衝撃波で震えた。

 目標は破壊されたようだ。砕けて変形し、魔法も発動していない。なぜか残りの3体と、近くにいたガーゴイルとゴーレムまで倒れて動かなくなっている。氷の船から出て見ると、巨大な噴煙が立ち上っているのが見えた。いや、あれは煙ではなく、凝結した蒸気か?大量の氷が、高圧で一気に気化し、水蒸気爆発が起こったのかも知れない。


 再びガンダリを伴って、遺跡の奥に進んだ。左折地点から奥を調べると、ゴーレムとは似ても似つかない物が転がっている。黒と紫と青の混ざった色で、昆虫に似た何かだ。ゴーレムと言うより、魔法生物に近いものかと一瞬思ったが、体内に水がないことを思い出す。表面のデザインが変わっているだけなのだろうか?

 ゴーレムとガーゴイルも含め、転がっている物をすべて、氷に乗せて遺跡の外に運び出した。

 まず直接氷をぶつけて破壊した、大型の個体を調べた。頭部はつぶれていたが、かなり大きい。両側に巨大な複眼がある。体表は3ミリくらいの厚さの鉄板で出来ていて、表面を別の素材でコーティングしてある。非常に硬いが、やや脆い素材のようだ。長期間の耐久性を重視した作りのような気がする。


 調べている間にレルミスが飛んで来た。馬車組もすぐ近くまで来ている。


 「さっきの地震と爆発は、レディク様がやったというのは本当でしょうか?」合流したところで、ロジルが聞いてきた。

 「よく分かったな。」

 「ジニさんがおっしゃっていました。」

 「この辺であんなことするのは、ヤリチン大魔神くらいにゃ。」猫耳戦士がニヤニヤしながら言う。否定したいところだが、確かに私が関わったもの以外見たことがない。

 「ところで、そこに転がっているものは何だ?」ダリルに質問された。

 「2000年ほど前の魔王が作った、ゴーレムのようなものじゃないかと思う。今調べていたところだ。こういう物は見たことあるか?」

 「ないな。変わった作りだ。だが、話しに聞いた、戦闘用魔道人形というものに、部分的には似た構造のようだ。」

 「『戦闘用魔道人形』なんてものがあるのか。」

 「ダースにいる魔道具制作者が作ろうとしていたようだが、今のところ金が掛かる割に、あまり役に立たないらしい。こいつは、戦闘用にしては装甲が薄いな、もしかすると魔法特化型か?」

 「そうかも知れない。接近すると正常な判断力を奪われる、やっかいな魔法を発動させていた。他にも危険な能力を、持っているかも知れないと思ったから、離れた場所から強めの攻撃を撃ち込んだ。」

 「それで、さっきの爆発か。」


 全員に、族長に聞いた話や、これまでの経緯を話した。

 その後は、引き続き、魔王のゴーレムのようなものを調べた。ダリルとローズにも手伝って貰う。

 内部には、多層化された非常に複雑な魔術構築式が書き込まれており、複数の心核があった。すべての機能を解明することは無理だったが、分かった範囲から類推して、やや大型の1体が精神魔法と幻影魔法を使うほかに、索敵・状況判断・指揮などを行っていたようだ。他の3体は、やや装甲が厚く、戦闘向きに出来ていた他、内部に麻痺毒と溶解薬を蓄えていた。3体とも、内部の心核が割れるかひび割れていた、衝撃波で壊れたらしい。周辺のゴーレムとガーゴイルも、同じ状態だった。

 鉄を使っているのに、長期間稼働出来た理由は、状態保存と修復の魔術構築式が2重に用意されていたためらしい。ローズによると、古代の魔道具でも状態の良い物は、たいてい、これらの魔術構築式が組み込まれているそうだ。


 回収したゴーレムもどきを一通り調べ終わった後で、遺跡の内部に同じものが居ないかどうか、あらためて調べた。回収して調べたお陰で、ゴーレムとの形態の違いが明確にイメージ出来、調べやすくなった。感知可能な範囲を詳細に調べた結果、他にも2グループ、8体が居ることを見つけた。1グループ、4体は、ウォータージェットで一番大きい心核を同時に破壊して回収した。

 ローズが、「研究用に1番大きい心核を残したものもあると良いかも」と言うので、もう一つのグループでは、2番目の心核を壊してみた。しかし、2番目の心核を壊しても、戦闘用の3体は倒れないようだ。仕方がないので、魔石を壊そうかと考えているところで、周囲のゴーレムの動きが変わったことに気づく。戦闘しているのか?

 空を飛んで様子を見に行こうとして、幻影魔法で遠くを見ることも、出来ることを思い出す。すっかり忘れていた。上空から見た映像を大きく表示してみる。音も聞こえるようにした。ゴーレムもどき3体と、ゴーレム4体が戦っている。ガーゴイルも接近中だ。


 「ゴーレム対虫ゴーレムの戦いにゃ。」なるほど、虫ゴーレムか。変なネーミングだが、わかりやすいかも知れない。

 「姿が見えるようになったから、攻撃し始めたのでしょうか?」クロエが言う。

 「ゴーレムには目がないようだが、見えておるのか?」ターボも質問する。

 「そう言われてみれば、どうやって侵入者を感知しているのか、考えたことがないな。」

 「探査系の魔法でしょうか?」レルミスも首をかしげる。可能性はあると思うが。

 「探査魔法なら、幻影に騙されたりしないはず。」ローズの言うとおり、普通の探査魔法なら、幻影に誤魔化されるはずがないのだ。

 「今壊した心核が、侵入者感知を避ける仕組みに、使われていたんじゃないか?」

 「なるほど。ダリルの言うとおりかも知れない。」

 「虫ゴーレムは速いけど、弱いにゃ。」

 猫耳戦士の言う『虫ゴーレム』は、素早い動きでゴーレムの攻撃を8割方回避しているが、力は弱いようだ。『虫ゴーレム』からの反撃が、何度もゴーレムに当たっているが、ゴーレムに大きなダメージはない。それに対して、ゴーレムの攻撃がたまに命中すると、装甲がへこんだり、腕が曲がったりする。

 おっと、あまりボロボロにならないうちに、もう1体回収しておこう。3体の『虫ゴーレム』のうち、一番状態の良い物を、氷で捕獲しつつ、魔石を破壊して回収した。残り2体の『虫ゴーレム』は、次第に集まってくるゴーレムとガーゴイルに袋叩きにされ、3分と経たないうちに、原形を止めないスクラップにされてしまった。ゴーレムの袋叩きは容赦ないな。


 あらためて遺跡内部を探り、今度こそ『虫ゴーレム』の類が居ないことを確認する。再度、遺跡の奥の調査に行くことにした。

 族長が、今度は、族長の印、眷属の印、友の印の3つを、同時にくぼみにはめ込む。すると、青い線と黄色い線の両方が表示された。この状態ならば、全員で守護の部屋の近くまで、進めるそうだ。まっすぐ進むだけならば、あまり危険がないことを確認しているので、途中まで全員で行く事にした。

 まず、まっすぐ300メートルほど進み、黄色い線が折れ曲がる15メートルほど手前でいったん止まる。その先には、ゆっくりと1人で進む。精神魔法は受けていないし、その他の魔法の発動も感じられない。黄色い線が折れ曲がる地点で立ち止まり、奥の様子を確認する。ガーゴイルが1体居るだけだ。魔法でも、ガーゴイル1体だけが感知される。問題無さそうだ。念のため、さらに感知範囲全域を詳しく探って見る。やはり、異常は見つからなかった。

 全員で、青い線に沿って、さらに6-70メートル奥まで進んだ。青い線が折れ曲がる地点まで進んで立ち止まり、ここでも目視と魔法で異常がないことを確認した。


 この先の調査をどうするか、少し話し合った。ゴブリン族メンバーは、全員奥に進みたがったが、眷属の印を持つ者が残らないと、ここに残したメンバーが、ゴーレムに攻撃されてしまう。もちろん、全員で進むのは論外だ。最初は少人数で調査したい。結局、私と族長とガンダリの3人で進むことになった。

 守護の部屋の入り口まで、50メートルほどだ。私が先頭に立ち、慎重に進む。しかし、特に異常が見つからないまま、扉の前に付いてしまった。左右30メートル、高さ10メートルほどの、白い石のような素材で出来た建物だ。目の前にある扉と、扉の周囲にだけ青く光る文様が描かれている。遺跡の魔道具から発せられるわずかな気配以外、魔力の動きも感じられない。


 「異常は感じられません。」族長に告げる。

 「では、扉を開けてみましょう。」族長はそう言って、扉の脇にあるくぼみに族長の印をはめ込んだ。扉が一瞬明るく光ると、ゆっくりと開き始めた。


 扉が開くと縦横20メートルほどの部屋があった。入り口以外にはドアも窓もない。床と天井と4方の壁に、魔方陣のようなものが描かれている。

 入り口に近づこうとすると、族長に止められた。

 「水の神の眷属以外の者が、中に入ることは出来ません。」

 入り口から覗き込むようにして、内部を探ったが、異常は見つからなかった。

 「俺、入る。」ガンダリが踏み込んでいく。部屋の中央まで進み、それから壁沿いに、1周回ってみている。やはり異常は無さそうだ。

 「あとは、扉を閉じてみるしかないでしょう。」

 「一度閉めて、すぐに開くことは出来ますか?」

 「出来ません。数分後に再び開くまで、待たねばなりません。」

 見たところ異常はないが、本当に閉じて大丈夫なのだろうか。しかし、考えてみれば、どんなに調べたところで、絶対に安全という確信を得られるわけがないのだ。結局の所、自分が中に入れないのだから、誰かの身を、危険にさらすかも知れないという、不安を避ける術はない。

 ガンダリと目が合うと、ガンダリが頷きかけてきた。

 「閉じてくれ。何かあっても、レディクいる。必ず、遺跡。使えるようになる。」随分信頼されたものだ。

 「わかった。・・閉じてみましょう。」未だためらいは感じるが、結局扉を閉じることに同意した。


 扉が閉じると、建物の中で魔法が発動するのが感じられた。恐ろしく複雑な魔力の動きで、何が起こっているのか全く理解出来ない。

 その時、厚い扉を通して、建物の中からガンダリの叫び声が聞こえた。

 「グオオオオッ」

 「ガンダリ?!大丈夫か?」

 まさか、まだ何か罠のような物があったのか?ガンダリの返事はない。大きな魔力の動きが感じられる以外、中の様子は全く分からなかった。



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