表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/63

ゴブリンの村

ゴブリン成分多めでお送りしております

 カモを焼いて食べ終わった頃。5体の動物が接近してくることに気がついた。これはゴブリンか?立ち上がって茂みの向こうを見るとガンダリが4人のゴブリン引き連れて歩いてくる。

 「ガンダリ。ここだ。」声をかけて、手を振った。

 4人のうち3人はガンダリと同じような服装で、手に槍を持っていたが、もう一人は派手な色のマントのようなものを羽織って、腰に剣を下げていた。彼が族長だろう。白いあごひげを生やしている。年寄りらしい。ゴブリンたちは近づいてくる途中で4匹のオオカミの死体に気がつき、驚いた様子で囁きあっていた。

 「ゴブリンの族長だ」ガンダリがマントのゴブリンを手で指し示す。

 「はじめまして、族長殿。レディクです。」

 「はじめまして、レディク殿。私が灰の森のゴブリンの族長。ガラゴリンです。ガンダリに話を聞きました。レディク殿は非常に強い力を持つ魔法使いであると。正直に申しますと多少の疑いを持っていたのですが、そのオオカミの死体を見るに至り、レディク殿の実力は驚くべきものと理解いたしました。」

 「ああ、これですか。襲ってきたので殺しただけです。もしオオカミの肉も食べられるのであれば、差し上げましょうか。私一人では処置にも困りますし。」

 「ありがとうございます。実は今私たちゴブリンの村では食糧不足が悩みの種になっていまして。以前ならば食料が豊富に調達できた地域で、アスターの町の人間や森の東にすむオークに襲われるようになり、十分な量の食料を手に入れることが出来なくなってしまったのです。本来ならば我々も、旅の方に道を教えるかわりに報酬を求めるようなことはしたくないのですが。今申し上げましたような窮状ですので、食料をご提供いただけるというお話は願ってもないこと。厚かましいお願いではありますが、なるべく多くの食料調達をご協力いただけると助かりますが、いかがでしょうか。」

 「なるほど。そういうお話ならば、私としてもご協力したいと思います。見知らぬ相手とはいえ、同族である人間があなた方に害なす行為を働いているのであれば、なおのこと見捨てることは出来ないと思いますし。しかしながら、私が調達できるものは、鳥や獣、後は魚くらいではないかと思います。いずれも日持ちのしない食料ですが、これは問題ありませんか。」

 「肉なども干し肉にして、ある程度は保存することが出来ます。それに、肉などの他に、保存のきく木の実や芋類などの食べ物も採集しており、かなりの量を備蓄しています。しかし、保存のきく食料を今食べてしまうと冬の間の食料の蓄えが足りなくなり、飢え死にするものが出るかもしれません。肉類だけでも提供いただければ助かります。」

 「わかりました。大量の食料が必要ならば、一日狩りをして終わりではなく、数日程度は狩りを続けて、食料を備蓄した方が良いと思いますが、その間そちらの村に滞在することはかまいませんか。」

 「願ってもないことです。是非ご滞在ください。」

 「あとは、獲物を運ぶ作業はお手伝いいただけないかと思います。この周辺はかなり水鳥が豊富ですので、一人や二人では運べない量の獲物が狩れると思いますので。」

 「どのくらいの量の水鳥が捕れますでしょうか」

 「狩り続ければ減るでしょうけれど、初日ならば100羽くらいは確実だと思います。」

 「100羽・・・。それは本当ですか。」ゴブリンたちが驚きの声を上げた。

 「今日このあたりを歩き回ってみて、水鳥がかなり多く、50羽程度ならば1時間もかけずに狩れそうであることを確認しています。一日に200羽以上でも狩れるかもしれません。しかし、一日に多く取りすぎても、取った肉の処理とか難しくありませんか。」

 「確かにその通りです。カモは燻製にしたいですが。一日に処理できる量は5-60羽が限度だと思います。」

 「村の住人は何人くらいですか?燻製にせずにその日のうちに食べる量はどのくらい見ておけばよいでしょう。」

 「住人は160人いますが、あまり食べない子供や老人もいますから一日に食べる量は120羽で十分でしょう。」

 「では一日180羽を目標に狩ることにしましょう。」

 「獲物の運搬のために10人向かわせましょう。」

 「もう一つ。私はこのあたりの地理に詳しくありませんので、どんな獲物が捕れるか詳しい人を案内に付けていただけると助かります。」

 「ガンダリを付けましょう。」

 「おれ、案内する」ガンダリが言った。

 「よろしくお願いします。」

 話がまとまったのでゴブリンの村まで案内してもらう。歩きながらも、族長の話を聞いた。50年ほど前までは人間とゴブリンの間で交易などの交流もあったこと、それ以降も疎遠ではあったが敵対するような関係ではなかったこと、関係が悪化したのは最近数年であること、オークが灰の森に住み着いたのも10年ほど前からで、はじめは森の東端に住んでいただけだが、最近は森の半分以上の範囲をうろつくようになったこと、など。

 灰の森に入ると下生えが生い茂り、見通しがきかなかったが、ゴブリンの造った道の周りは、きれいに下生えが切り払われていた。森の中で獣に襲われることはないのか訪ねると、ゴブリンの村の周りには獣取りの罠がたくさん仕掛けてある上に、頻繁に戦士が巡回しているため、近づく獣はほとんど居ない、という話だった。

 森の中を1時間ほど歩くと、ゴブリンの村に到着した。ゴブリンの村は頑丈そうな丸太の壁で囲まれており、内部には木製のしっかりした作りの家が並んでいた。住民は敵意や不安のこもった目を向けるものが多かったが、意外にも敬意のこもった目を向けてくるものもあった。族長から住民への説明があったことのほか、オオカミ4匹の効果も大きかったようだ。

 族長の家での夕食にに招待された。オオカミ肉のスープを食べてみると、すごくおいしくて驚いた。考えてみれば荒れ地で目ざめてからまともな料理といえるものを食べたのは初めてだったが、それを抜きにしてもおいしい。族長によるとオオカミ肉は高級食材らしい。

 族長の家の近くの空き家を借りられることになった。こぢんまりした家だが清潔で、ちゃんとしたベッドもある。すばらしい。

 寝る前に思いついて、大きめの水球を出し、40度くらいに暖めて体を洗った。入浴魔法の完成だ。それにしても石鹸が欲しい。


 翌朝は夜明け近い時刻に目を覚ました。快適な目覚めだ。やはりちゃんとした建物で眠るとよく眠れる。

 顔を洗っていると、ガンダリがやってきた。朝飯の時間らしい。後についていくと村の中央近くに共用の大きなかまどがあり、そこでスープと果物を配っていた。スープは昨日に引き続きオオカミスープだ。果物は梨のようなもので汁気がたっぷりあっておいしかった。早朝に採集や狩りに出かけるゴブリンのために、朝はここで食事を用意してくれるらしい。ゴブリンたちは周辺の丸太ベンチなどで思い思いに食事をしている。一人だけ人間が混じっているので周囲から好奇心に満ちた視線が注がれるが、敵意を感じる視線は少なかった。かすかに聞こえる囁き声から判断したところでは、凄腕の狩人が大量の獲物を狩ってくると言う噂が広がっているようだ。

 ガンダリとともに村を出て灰の森を進む。今日も水蒸気の固まりを出して周囲に展開していく。あたりには薄い霧が立ちこめていて湿度が高く、操作できる水蒸気の量がすぐに増えていくのを感じた。操作可能距離を伸ばす練習、周囲の地形や動植物を感知する練習を続ける。


 1時間と少しで森を抜け、狩り場に到着した。

 「5羽ずつ狩るか?」とガンダリが聞いてきたので、

 「今日は昨日とは違う狩り方をするので、たくさんまとまっている方が良い。距離は40メートルくらい離れていてもかまわない。」と答えた。

 ガンダリの案内について行くと30羽くらいのカモがいる場所に着いた。距離は30メートルくらいだ。

 「今回使う魔法は準備に少し時間がかかる。」と、説明した後、カモの体内で操作可能な水が増えていくのを待つ。2分ほど待つと操作可能な水が十分増えたのでカモの頭部を一気に凍らせた。

 カモのいた場所は流れの緩やかな川だったので、ゆっくりと流れていくカモを川下側で回収した。

 「今の魔法、何したか、わからない」ガンダリが驚いた顔で声をかける。

 「頭を凍らせたのさ。ほら、冷たいだろう。」カモの頭を触ってみるようにガンダリに示す。

 「冷たい、昨日のオオカミ、傷なかった、冷たかった、同じ魔法か」

 「そのとおり。ご明察だよ。」

 その後もう一カ所でカモを狩り、70羽ほど集まったところで血抜きしておくことにする。河原に数本の木の棒を立て、その間に物干し竿のように木の棒を渡して、そこから首を切ったカモをぶら下げた。

 血を抜いていると血なまぐさい臭いに惹かれたのか、またオオカミがやってきたようだ。今日のオオカミは歩くペースが速い。接近する前に、体内の操作可能な水が十分増えないかもしれない。でも体温を下げることくらいは出来そうだから問題ないか。

 「ガンダリ。今日もオオカミが狩れそうだぞ。」いちおう、ガンダリに教えておく。

 「オオカミ?」ガンダリが周囲を見回しているところに、草むらからオオカミが現れた。しかし、現れた直後にオオカミの体温を下げたので、オオカミはろくに動くことが出来なくなった。さらに氷の矢尻を頭に撃ち込む。オオカミはドサリと倒れて息絶えた。

 午前の半ば頃、10人のゴブリンがやってきた。若者6人と護衛もかねて経験を積んだ戦士が4人だそうだ。カモ70羽とオオカミを先に7人で運んでもらい、三人は獲物の回収、血抜き、獲物の番などを手伝ってもらうことになった。その後3カ所でカモを狩り、90羽ほどのカモが集まった。これで今日の目標は達成だ。

 3カ所目のカモを運んでいくと、ガンダリともう一人のゴブリン戦士がオオカミと戦っていた。今度は2匹だ。加勢して1匹を氷の矢尻で仕留める。もう一匹はガンダリが仕留めた。カモ160羽の他にオオカミ3匹が今日の獲物に追加された。

 カモの血抜きを待つ間、川をのぞき込む。魚がいそうだ。肉ばかり食べているので、気分を変えて魚も食べたい。川の流れのよどんでいるところに操作可能な水を広げていき、魚の気配を探ってみる。種類はわからないが、かなり大きな魚が居るようだ。しかしどうやって捕まえるか。殺すのは簡単だが、深い場所から魚をどうやって引き揚げよう。しばし考えた後、魚を氷に閉じ込めて浮き上がらせてみた。うまく魚が浮き上がり、マスに似たおいしそうな魚が手に入った。昼食用にあと3匹調達し、たき火で焼く。ちょうど焼き上がった頃に運搬役の7人が戻ってきたので、いっしょに昼食を食べた。前に魚を食べたのがいつだかおぼえていないが、魚の味は新鮮でおいしかった。魚の他にゴブリンが持ってきたブドウを分けてもらって食べた。


 昼食後に獲物を持って村に帰ることにする。帰りながら明日以後の狩りをどうするか、周辺に他にどんな獲物がいるか、その他いろいろなことについて話し合った。カモは狩るだけなら簡単だが、回収と血抜きけっこう手間がかかり、人手が必要なこと。獲物の番も必要であり、オオカミが襲ってくるために、護衛の人数を増やさないと危険であること。魚も捕れるが、大量に取るにはそれなりに手間がかかりそうであること。ガンダリの話によれば、今日のように大量の獲物が捕れる場所は他には皆無であるため、人手を増やしてもらうことについては問題ないこと。上流に沼のようになっている場所があり、大きなナマズが住んでいること。ナマズはおいしいのだが、ゴブリンを丸呑みにするような巨大なナマズも居るため、危なくてうかつに沼に近づくことが出来ないこと。ゴブリン族はあまり狩猟が得意ではなく、採集や釣りを行って生活することが多いこと。灰の森の北の川は、危険さえ少なければ良い漁場であること川の対岸を上っていき、丘陵地帯の方に行くと山羊が住んでいること。山羊は素早く岩場を上って逃げてしまうため、なかなか狩れないこと。丘陵地帯の方ではキラーパンサーという大型のヒョウに出会いやすく危険であること。キラーパンサーさえいなければ、丘陵地帯にはブルーベリーなどが自生しており食料採取に良い場所であること。灰の森周辺に住んでいるヒョウはキラーパンサーだけであること。丘陵地帯の南部には古代の遺跡があり、足を踏み入れて生きて帰ったものは居ないこと。などなど。

 村に帰ると大量の獲物が運び込まれた話が広まっており、ゴブリンたちの表情も明るくなっているようだった。族長にあって、明日以降の予定について話し合った。山羊狩りに関心を持っていることを伝えると、はじめは危険だからと反対されたが、キラーパンサーとはすでに一度戦って撃退したことがあることを話すと、十分に気をつけて欲しいと念を押された上で、ガンダリの他に2名の護衛を付けてくれるという話になった。

 午後早めの時間に引き上げてきたので、その後は村の井戸のそばでみっちり魔法の練習を行う。夕方までには水魔法の操作可能範囲が80メートルを突破し、感知精度も一段と高くなった。夕ご飯はガンダリと、今日一緒に仕事をしたメンバーとともに共用かまどのそばで食べた。メニューは鴨肉のシチューだ。皆陽気でちょっとした宴会のようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ