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ダンジョン2

ダンジョンに潜り続けます

まだもう少し続きます

 12層の残りの部分と、13層は足早に通り抜け、14層に入った。5級くらいの冒険者は、このあたりで狩りをすることが多いらしい。

 たまに見かける冒険者も、皆しっかりと装備を固め、ダンジョンに慣れた雰囲気だった。私は慣れていないけどね。


 14層は、小さな池や水たまりが増え、足下に岩がごろごろ転がっていたり、苔が生えていたり、足下の悪い場所が多かった。これからしばらく、こういう地形が続くらしい。

 足下に注意しながら進んでいくと、岩陰から大きなトカゲが現れた。1メートル半くらいある。

 「ダンジョンリザードだな。」

 「獲物だにゃ。」

 モンスターがついに、雑魚から獲物にレベルアップしたようだ。


 猫耳戦士が素早くトカゲを倒す。ダリル、ヒュー、クロエの3人がトカゲの皮をはぎ始めた。そう言えば、受注した依頼の中に、ダンジョンリザードの皮の収集というのもあった。

 「皮はぎ慣れているのか?なかなかの手際に見えるが。」

 「まだ、それほどでもないが、何回かやってる。研修も受けたしな。」ダリルが答えた。

 「研修なんてあるのか。」

 「ダンジョンリザードの皮は需要が多いので、収集依頼も頻繁に出されています。こういうメジャーな依頼を、こなすための研修は、ギルドで受けられますよ。」ヒューが教えてくれた。


 14層では、そのあともう1体ダンジョンリザードを狩った。

 15層に降りると、オークが居た。

 「灰の森で見たオークより小さいな。ダンジョンサイズって、外より小さくなることが多いのか?」

 「普通の大きさだと思うが。灰の森のオークが大きかったんじゃないのか?」


 オークが向かって来たので、鼻先に「ペシッ」と水球を当てると、オークは「ンガッ」と声を出し、驚愕の表情を浮かべて1歩下がった。しかし、逃げ出すことはなく、数秒後に我に返って、再び向かってこようとする。もう一度、「ペシッ」と水球を当てると、オークは今度も「ンガッ」と声を出し、驚愕の表情を浮かた。

 「驚いた顔が面白いな。」つい本音が漏れてしまった。

 「プッ」ローズが小さく吹き出した。

 「ククックッ」レスリーにも受けてるようだ。面白いからもう少し続けよう。

 何発か続けて水球を当ててみた。

 「ペシッ」「ンガッ」「ペシッ」「ンガッ」「ペシッ」「ンガッ」「ペシッ」「ンガッ」「ペシッ」「ンガッ」「ペシッ」「ンガッ」

 今度は10秒ほどの間固まっていたが、ブルルッと身震いした後、こちらを凝視する。また向かってくるのかな?と思ったが。オークはくるっと背を向けた。

 「ンギャワワーン」オークは変な声を上げて走っていった。

 今度は皆で笑ってしまった。


 面白かったが、毎回そんなこともしていられないので、次回以降オークに出会った時は、少し強めに1発だけ当てることにする。オークはひっくり返った後、起き上がって逃げていった。時々武器を落としたので、もらっておいた。


 16層、17層と階層を下るうちに、ダンジョンリザードの皮はだいぶ集まり、依頼の枚数を集め終わった。

 18層に入ると、ダンジョンが少し明るくなった気がした。18層より下になると面倒なモンスターが居るため、入る冒険者が少なく、魔石も多いらしい。


 しばらく進むと赤いスライムが居た。緑のスライムより大きい。

 「レッドスライムだ。毒をまき散らすから気をつけろよ。」ダリルの声が、初めて少し緊張していた。

 スライムに熱湯を掛けて殺した。

 レッドスライムの毒は、すぐに死ぬような強い毒ではないが、レッドスライムには物理攻撃が効きにくい。そのため、レッドスライムは、魔法が使えない冒険者には、やっかいな敵なのだそうだ。


 19層に進み、20層に降りる階段の、近くまで到着したところで、野営することにした。そろそろ日没ぐらいの時刻だ。

 ダンジョン内では太陽が見えないので、時刻がわかりにくいが、一定時間ごとに休憩を取り、食事をして、体調を管理することは重要である。そのため、1日で行って帰れないような、ダンジョンの奥まで入る冒険者は、たいてい時方儀という魔道具を使って時刻を調べ、スケジュールに沿って行動している。ちなみに、時方儀は結構高いが、我が家には3つもあって、普段から使っている。盗賊の隠れ家で手に入れた物だ。

 階段近くにあった、小さな行き止まりの部屋で野営の準備をし、夕食を食べた。レスリーが夕食に、ゴブリン風オオカミスープを作ってくれた。ゴブリンの村にいた時に、作り方を教わったらしい。

 交代で見張りをして寝た。


 翌朝。夜明け前くらいに目が覚めた。

 目覚めると、魔石とマジックライトの光に照らされた洞窟の中、というのは、変な気分だった。


 朝食を食べ、荷物をまとめて出発した。

 少し長めの20層への階段を降りると、ここからまた、ダンジョンの様子が大きく変わっていた。起伏が大きくなり、構造が立体的になった。場所によっては、上下の通路が交差している。小部屋と通路が連なる単純な構造も、ほとんど無くなった。天井は全体に高く、明るくなったが、壁面はうねうねと波打ち折れ曲がり、床にも壁にも植物だか岩だか分からない構造物が生えて、見通しは悪くなった。


 この層には、大きな蛇が居た。6-8メートルくらいある。

 「ダンジョンスネークだな。」

 戦ってみると、それほど強くもなかったが、やはり大きいと迫力がある。この先の階層ではさらに、大型のモンスターが増えるらしかった。


 ところどころに、青い珊瑚のような、植物のようなものが、群がって生えている。見つけるたびに、中を調べた。時たま青い花が咲いているので、見つけたら採取する。ストーンブルーという花で、これも採集依頼の対象だ。高級な染料の材料になるらしい。


 21層に降りると、巨人が現れた。

 「トロルだな。力は強いが、固くないから、ゴーレムよりは楽だ。」

 身長は3メートル近くあり、ゴーレムより大きい。さらに棍棒を持っているので、リーチはかなり長い。しかし、動きは遅かった。

 最初の戦いはダリルと猫耳戦士に任せて、見学させてもらったが、猫耳戦士が素早く手足の腱を切り、よろめいたトロルの首を、ダリルが一撃で切り落としていた。確かに、大きくて力が強いだけでは、さしたる脅威ではないようだ。


 23層で現れたバンパイアの方が、脅威度としては高かった。バンパイアは、大きさは人間と同じ、力は人間より少し強い程度だったが、スピードが速く、空も飛べた。最初の戦いではやはり、しばらく見学していたが、ダリルと猫耳戦士の手に余るようだった。

 ダリルはバンパイアの攻撃をなんとか避けていたが、ダリルの攻撃も全くバンパイアに当たらない。猫耳戦士は、スピードでも技量でもバンパイアを上回り、何度も傷を負わせるが、一撃で殺せるほどでもない。バンパイアは危なくなると、上空に逃げてしまい、怪我が治るまで待ってまた襲ってくる。

 「うにゃー。鬱陶しいやつにゃ。ヤリチン魔王。なんとかして欲しいにゃ。」猫耳戦士は悔しげにバンパイアをにらんだ後、お願いしてきた。

 バンパイアの反応を見るため、大型の氷の矢尻3つを、スピード変えて飛ばしてみた。バンパイアは遅めの矢尻2つを回避したが、最速の矢尻は回避出来なかった。矢尻がバンパイアの右腕を切り飛ばす。ガーゴイルを少し上回る程度の、回避能力があるようだ。

 右腕を失ったバンパイアは逃げようとしたので、氷の槍でとどめを刺した。一応確認したが、心臓に杭を刺さなくても、頭部や胴体部に致命傷を与えれば殺せるらしかった。しぶといのは確かなので、首を切り落とすのが確実らしい。


 バンパイアは気配を殺して待ち伏せしたり、こっそり忍び寄って不意打ちするのも得意で、後衛に被害が出やすいという。危ないので、近くで感知したら、さっさと首を切り落とすことにする。100メートルほど先の、天井の窪みに、1匹隠れていたので早速切り落とした。


 25層ではゴーレムが現れた。遺跡のゴーレムに比べて、少し小さかったが、硬さも動きも変わらないようだった。

 「一応ストーンゴーレムっていう名前が付いているぜ。遺跡のゴーレムと変わらんが。」

 飛行練習に行った時に、ウォータージェットの精度も上がったので、近づく前にどんどん心核を切り取ってしまうことにした。


 26層も通り過ぎ、27層に降りる階段の前で、休憩して昼食を取った。


 長い階段を下りると、広い空間が開けていた。27層は全体が、一つの大きな部屋だった。天井までの高さは、50メートルくらいありそうだ。天井面ではたくさんの魔石が、明るく光っている。

 目の前は崖だ。7-8メートル下に湖がある。湖はずっと向こう、この空間の反対側の壁近くまで続いていた。向こう岸まで2キロ近くあるかも知れない。中央付近に島がある。

 今立っている場所から左右には、壁沿いに5メートルほどの幅の通路が続いている。通路は、左右に蛇行し、また上り下りしながら、空間の左右の端にある、やや幅広の陸地部分に続いていた。


 上空のあちこちに、空を飛ぶモンスターが見えていた。近くにいた1頭が、我々に気がついて、接近中だ。

 「あれがワイバーンだ。ここは見通しがいいから、遠くからでも襲ってくるかも知れんな。危なくなったら、後ろの通路に逃げ込むか。」


 メインの依頼の一つは、ワイバーンの皮と翼の収集だ。ワイバーンは体長2メートル、翼開長5メートルほどの飛行モンスターで、硬さではガーゴイルに劣るものの、スピードガーゴイルを上回るらしい。皮を傷つけずに狩る必要があるので、ガーゴイル狩りより難易度は高い。

 皮を傷つけずに狩るには、体温を下げてしまうのが手っ取り早いが、まだ体内の水を操作出来る状態になっていない。さてどうしよう?

 考えているうちに接近してしまったので、とりあえず50センチほどの水球を、ワイバーンの目の前に出して牽制する。ワイバーンは水球を回避しようとしている。

 水を飲ませればいいかな?と、思いついて、水球でワイバーンの頭部を覆ってみた。

 体温を下げる前に、ワイバーンは溺れて落下した。


 「ヤリチン魔王の攻撃は、えげつないにゃ。」

 「こいつらも、まさか、空を飛んでいる最中に、溺れるとは思わなかっただろうな。」

 猫耳戦士とダリルが、笑いながらワイバーンを魔法のバッグにしまった。依頼はワイバーンの皮と翼の収集だが、爪や牙や肉も良い値で売れるので、丸ごと持って帰るのだ。


 その後も、その場で待っているだけで、4頭のワイバーンがやってきたので、体温を下げて殺した。



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